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第83話 過ぎゆく季節のなかで➄

あれから10日ほどが経ち、[大公家の本館]に、先生の姿がある。


今回は、トラヴォグ公爵ではなく、以前に来たことのある“伯母君(おばぎみ)”が一緒だ。


名前は“フィネルン”というらしい。


なお、トラヴォグ公は、仕事が忙しいそうで〝暫くは自由が利かない〟との事だった。


さて…。


先生に渡された[銀製のハンドジューサー]に、アシャーリーが喜んでいる。


早速、“リンゴ”に“オレンジ”を試してみるらしい……。



[食堂]で。


主だったメンバーが〝おぉ~♪〟とジュースに感動した。


これによって、アシャーリーが[ジューサー]を先生に追加発注する。


どうやら、[チキュウビストロ関連店]などに配るつもりみたいだ。


ふと、


「そういえば、今、ビール醸造(じょうぞう)設備を作ってもらっているところでして…。」

「いろいろ上手くいったら、大人の方々に振る舞いますね。」


先生が告げる。


これに、


エール(・・・)ではなく? ですか??」


“片目のベルーグ”が首を傾げた。


「ええ。」

「ビールというのは“地球のお酒”でして、エールよりも美味しいですよ。」


先生が〝ニコニコ〟したところで、


「夏から秋にかけて、葡萄(ぶどう)の収穫期になったら、“ワイン”とかいうのも生産するんだったわよね?」

「どちらも楽しみだわぁ。」


伯母君であるフィネルンさんも笑顔になる。


「ん?」

「先生は、僕らと同じで、飲酒できる年齢じゃありませんよね??」


そうした素朴な疑問に、


「あー。」

「そこら辺については、まだ授業していませんでしたね。」


“細長眼鏡のマリー”が反応を示す。


「多くの国々では15歳が基準となっているのですが、一部の種族は10歳から許可されています。」

「ただし、それは〝自国でのみ〟でした。」

「もともとは。」

「……、およそ1700前、竜人族や鬼人族にドワーフ族のなかで、他国の年齢制限によってお酒を飲ませてもらえなかったヒト達が現地で暴れまくったそうでして、危うく世界大戦に発展しかけたとか。」

「これを回避すべく、その三種族に関しては飲酒が認められたそうです。」

「当時の国際法によって…。」


このようなマリーの説明を受け、


(はた迷惑だったろうな、きっと。)


そう思わずにはいられない僕だった。


ちなみに、[ビール醸造設備]などは、先生が自身の【スキル】で取り寄せた本で確認したらしい。


これによれば、〝地球にもエールは存在している〟のだそうだ。


先生が何かと詳しく解説してくれたけど、あまり興味がない僕の耳には殆ど入ってこなかった。


まぁ、要約すれば、麦に〝ハーブなどを加えたものがエール〟で〝ホップを添加したものがビール〟らしい。


また、〝上面発酵がエールビール〟であり〝下面発酵がラガービール〟との話しだ。


それと、〝この世界のエール醸造は割と原始的〟なのだとか。


何はともあれ。


「先生、お酢が全て失敗したのですが、原因、分かったりはしませんか?」


アシャーリーが話題を変えた。


おそらく、彼女も関心がなかったのだろう。


この流れで詳細を伝えられ、


「お酢……。」


先生が〝んー??〟と頭を悩ませる。


「専門外すぎて、さっぱりですね。」

「お役に立てず、すみません。」


申し訳なさそうな先生に、


「いえ、大丈夫です。」

「今後も挑戦してみますので。」


会釈するアシャーリーだった…。



あれから一ヶ月くらいが過ぎている。


冬にも拘わらず、例の三店舗では“ジュース”も人気になったらしい。


[大公の館]には、それまで通り、七日に一度、“竜人のヴァイア”が訪れていた。


一方、アシャーリーは〝お酢づくり〟が不調のようだ。


けれども、“マーマレードジャム”は完成したらしい。


これを入れておくための[ガラス瓶]は、中央都市の職人に幾つも依頼していた。


“銀製の(フタ)”は、捻って開閉するものではない。


あしからず。


それはおいといて。


アシャーリーは、“食パン”の生産に着手しようと考えているみたいだ―。


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