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第82話 派生⑦

俺は、ヴォル・リュウス。


“狼の獣人”だ。


[チキュウビストロ・ルワーテ]の店長でもある。


商売は順風満帆だった。


しかし、ある日のこと、一時的に営業を中止せざるを得なくなってしまったのだ。


うちを含めた関連店に冒険者たちが通い詰めるようになり、依頼を受けなくなってしまったので。


困り果てた各ギルドマスターが、ルシム大公殿下に現状を伝えたらしい。


これによって、大公殿下が運営の中断を指示なされた。


ま、今回は、店を閉めた日数に合わせて、売り上げの平均値を自腹で支払ってくださるそうなので、文句はないが…。


正直、暇になってしまった。


そのため、俺達5名は「久々にギルドへ足を運ぼうか?」と相談する。


一応はまだ冒険者として登録したままになっているので。


要は、(何かしら受注しよう)と思ったのだ。


しかし、ここまで激務が続いていたので「ゆっくりしたい」との話しでまとまった。


〝七日に一度は休み〟とはいえ、疲れが抜け切れていなかったから丁度いい。


それに、アシャーリーお嬢様が新しい調理を試そうとなさっているらしいので、いつお越しになられても対応できるよう留守にするわけにはいかなかった……。


数日後。


“ソフトフランスパン”と、これを用いた“サンドイッチ”とかいうものを、食べさせてもらう。


まぁ、パン作りは、[リヌボ]が請け負うので、余計な口出しはすまい。


それら以外に驚かされたのは“カルボナーラ”だ。


“麺”というものや“ハム”なるものは、初めての経験だった。


にしても…、卵黄や牛乳に胡椒などと相まって、濃厚な味わいだ!


なんでも“パスタ料理”と言うらしく、〝いろいろな種類がある〟との事だった。


これに関しては、追々、完成させていかれるそうだ……。


そこから暫く経ち、大公殿下が営業の再開を許可なされた。


サンドイッチとカルボナーラもまた、飛ぶように売れている。


更に、アシャーリーお嬢様が、“レモンティー”や“ミルクティー”に“コーヒー各種”も教えてくださった。


当然、これらも好評だ。


そのため、俺たちは、以前よりも忙しくなった…。


いや、喜ばしい限りなので、まったくもって構わない―。



私は、レイッジー・ティミドパーソ。


かつては“大公家”に勤めていた男だ。


今は、弟が代表の[チキュウビストロ・リヌボ]で、調理に携わっている。


とかく。


冒険者達の所為で、営業を無期限で休止する羽目になってしまった。


連中が憎らしくもあるが、疲労困憊だったので、ま、いいだろう……。


いくらかの日々が過ぎたところで、大公殿下がたが御訪問なされた。


ここから、アシャーリー様が、“ソフトパン”に“サンドイッチ”というものを伝授してくださる。


我々は目を丸くするばかりだった。


“柔らかいパン”は、そのまま食べても充分なうえに、バターを塗るとより美味しい。


そうしたパンに、“スクランブルエッグ”や“野菜”に“ハム”を挟むと、格別になった。


「これらは売れまくるに違いありませんね!!」

「店頭だけでなく店内で販売してもよろしいのですか??」


高揚する“弟のロガン”に、「ええ」と頷かれたアシャーリー様が、幾つか提案なされる。


まずは、ソフトパンやサンドイッチの“単品”もしくは“三個まとめ買い”だ。


次に、<セットメニュー>とやらである。


一つは、“卵サンドとハムサンド”に“(とり)のカラアゲ”という<Aセット>だった。


もう一つが、“野菜サンドにカラアゲサンド”と“焼いたハム二枚に目玉焼き一つ”といった<Bセット>だ。


A()B()の意味は分からんが、どちらにも“フライドポテト”や“季節のスープ”が付いてくる。


この双方は〝店内でのみ注文できる〟となされた。


後日、そうした<セットメニュー>に〝紅茶か珈琲を選べる〟といった仕組みが加わる。


結果。


何もかもが珍しく絶品なため、これまでより繁盛しだした!


もしかして、アシャーリー様は商才もおありなのだろうか?


…………。


きっとそうに違いない―。



私は、“リラル・エニスモ”です。


[北の港町ジィーモ]で暮らしてきました。


また、[チキュウビストロ・リジュフィース]の責任者としても日々を送っています。


お店は、これまで順調だったのですが、〝冒険者さんたちが仕事をサボっている〟とかで、営業を()めることになりました。


しかも、大公様がたが[西の鉱石ダンジョン]に御自(おみずか)ら赴かれたそうで、面目を失った冒険者の皆さんは相当に焦っていたようです。


私達の店舗を警備してくださっている“4人組さん”も、「やる事がなくなったから久しぶりにギルドに行ってみるよ」と仰りました。


ちなみに、全員が“女性の獣人さん”で、ランクは[アイアン()級]だそうです。


この方々は、“メリン・ハースト領主様”に雇われる形で、お店や私たちを護ってくださっています。


なんでも、南の[ルワーテ]が無礼な利用客と乱闘騒ぎになったらしく、あちらの店長さんが〝リジュフィースで同じようなことが起きたら対処しきれないだろう〟と心配なさり、大公様に進言してくださったそうです。


誰かしらとの戦闘など不可能に等しい私達は、そのお心遣いに感謝しております。


さて…。


アシャーリー御嬢様によって、新しい調理を収得しました。


柔らかなパン、サンドイッチ、カルボナーラ、コーヒー。


どれもこれもが美味(びみ)です♬


なかでも、私が虜になったのは、“卵サンド”でした☆ミ


珈琲は、“味変”というものを試してみましたが、どうも苦手です。


一方で、“ミルクティー”は、お気に入りになりました♪


帰って来られた警備のヒトたちも好みが分かれるみたいですが、すっかりコーヒーに魅了された方もいらっしゃいます。


これは、お客さんがたも似たようなものです。


そんなこんなで、店舗に活気が戻り、改めて幸せに包まれる私達でした―。


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