第81話 二重の意味で進む御飯.4
およそ半月が過ぎている。
サンドイッチには“ハム”が加わっていた。
調べてみたところ、もともとは“サンドイッチ”で、英語の発音では“|サンドウィッチ”のほうが近いそうだ。
要は〝どちらでもOK〟らしい。
こうした“サンドイッチ類”に“カルボナーラ”は、竜人族やドワーフ族も〝大はしゃぎした〟との事だった。
それらは、休業中の[チキュウビストロ関連店]に、アシャーリーが指導している……。
▽
同じ頃。
かつて島中で出されていた依頼が完遂されたらしく、“各ギルド長”からの手紙が次々と大公に届く。
なかには冒険者達に対する〝いつもこれだけ早ければいいのに〟みたいな愚痴もあったらしい…。
まぁ、これによって、チキュウビストロの全店舗が営業を再開した。
新たなメニューの効果もあり、[南北の港町]では、いろんなヒトが熱狂しているそうだ。
そろそろ冬のため厳しくなってきている寒さとは逆に。
あと、貿易商人さんが[コーヒーの実]を、ルシム大公の長男にあたる“ルーザーさん”の屋敷に運んだらしい。
ここから、沢山の麻袋が[大公の館]に送られてくる。
そのため、珈琲も[三店舗]で扱われるようだ。
勿論、“ミルクティー”も。
ただ、アシャーリーの考えによって、中央都市の職人たちに[銀製のミルクジャグ]が、発注されており、〝暫く時間が掛かる〟とのことだった。
[ミルクジャグ]は、牛乳を入れる容器、というか、“水差し”だ。
地球の喫茶店などで見られる。
なお、依頼したのは“小さめのサイズ”らしい。
一方で、アシャーリーは、[コーヒーチェリーティー]を試していた。
これは、地球において[カスカラティー]とも呼ばれているそうだ。
〝珈琲の皮と実を捨てるのが勿体ない〟との理由で作ってみたらしい。
どことなくスパイシーな香りがしつつ、フルーティーでまろやかな甘酸っぱさだった。
それもまた店舗で販売するつもりみたいだ。
こうしたところで、先生が“トラヴォグ公爵”と共に訪れる。
[コーヒーミル]が完成したらしい……。
▽
[厨房]にて。
全10個の[コーヒーミル]が台に置かれていく。
三店舗に2個ずつ、“大公/ルーザーさん/南北の領主さん達”に1個ずつ、配られるそうだ。
「ん??」
「ハンドルは、車輪式で、横に付いているんですね。」
素朴な疑問を投げかけた僕に、
「ええ。」
「上部に付属させる“平たいバー”だと、腕力がある種族は壊しかねませんので。」
「実際、何名かのハイドワーフがそうなりました。」
「特に“ルワーテ”の方々は獣人のため、〝同じ状況になるかもしれない〟と懸念しまして。」
そう説明する先生だった。
ちなみに、この場には、アシャーリーや大公に、僕の“お世話係”であるユーンも、居る。
「となると、“家庭用のハンドジューサー”も破損しやすいのかな?」
首を傾げたアシャーリーが、
【アイテムボックス】を出現させた。
そうして、一冊の書籍を取り出し、ページを捲る…。
「あった。」
「先生、こういうのを、お願いしたいんですけど。」
ある写真をアシャーリーが指差す。
僕が覗いてみたら、“業務用”といった感じの[手動ジューサー]だった。
余談になるかもしれないけれど、こうした品々の代金は、大公が支払っている。
いずれにしろ。
「分かりました。」
「こちらの本、暫くお預かりさせてもらいますね。」
優しく微笑む先生だった……。
▽
二週間ほどが経とうとしている。
数百の[ミルクジャグ]が出来たらしく、アシャーリーが“魔女さん”などと至る所を巡っては、[珈琲豆が入っている幾つもの麻袋]や[コーヒーミル]と一緒に、渡していった。
その際に、アシャーリーが、使い方と飲み方を教えたらしい。
ついでに“ミルクティー”や“レモンティー”も伝授したそうだ。
これらも[三店舗]で好評になっているのだとか…。
▽
ひとつ残らず解体を終えた“ハーフエルフのリィバ”が、[本館]に戻ってきた。
時刻はPM14:30あたりだ。
本人は、ぐったりしている。
疲れが蓄積されたのだろう。
そんなリィバの労をねぎらうべく、アシャーリーが腕を振るってくれる事になった……。
およそ30分後。
主だった顔ぶれが[食堂]に集まっている。
ジャガイモ料理が好きなリィバのため[テーブル]に配膳されたのは、“ポテトチップス”だ。
「え??」
「これって、“お菓子”だよね?」
僕が尋ねたところ、
「いえ。」
「前世で見たテレビ番組によれば、昔のアメリカのホテルで、宿泊客の要望に応え、そこのレストランで誕生したのだとか。」
「つまり、〝もともとは洋食だった〟という話しです…。」
「こちらの世界にスライサーやピーラーが無いため、今回は包丁で切ったので、やや厚めになってしまいましたけど。」
こうアシャーリーが述べた。
その側で、
「ぬッ??! はぁ――ッ!!」
「なんです? これ!」
「とっても美味しいですね!!」
リィバが感動している。
他の面々も〝バリバリ〟と食べながら瞳を輝かせていた。
補足として、〝うすしお〟だ。
皆が幸せそうにするなか、ポテトチップスを口に運んだ僕も嬉しさがこみ上げてくる。
またこうして味わえるとは夢にも思っていなかったので―。




