第80話 過ぎゆく季節のなかで④
あれから数日が経っている。
僕は、“魔術師のレオディン”と、【神法】の反復練習を行なっていた。
この[庭]には、アシャーリーと“魔女さん”や、ヴァイアに“竜人の双子さん”も、一緒に居る。
そうしたところへ、
「こんにちは。」
先生が挨拶と共に、“トラヴォグ公爵”と歩いて来ていた。
「館内でお聞きしたら、こちらにいらっしゃるとの事でしたので。」
〝ニコニコ〟しつつ、
「できましたよ。」
「“製麵機”が。」
このように先生が告げる。
それに、
「本当ですか?!」
アシャーリーが嬉しそうな表情となる。
一方で、
「ええ。」
「“コーヒーミル”は、まだですが。」
やや申し訳なさそうにする先生だった……。
▽
トラヴォグ公によって、先生も鍛錬に参加させられている。
注文の品を貰ったアシャーリーは、かなりご機嫌になっていた…。
▽
朝の稽古を終え、ヴァイアや先生の一同と、僕にアシャーリーやレオディンは、[客間]でコーヒーを飲んでいる。
ちなみに、もうじき豆が無くなりそうなので、貿易商人さんが待ち遠しい。
……さておき。
僕は[特殊スキル]やパナーア様がたに関して喋っていった。
誰もが理解を示したところで、アシャーリーが〝ジュースにジャムやベーコンとハムを作りたい〟と、先生に本を頼んだ。
僕には“ベーコン”と“ハム”の違いが分からない。
こうした流れで、僕は、例の“料理の神”について、先生に尋ねる。
とは言え。
先生は、前世で数学を担当していたので、そういう類には詳しくない。
そのため、こちらも【お取り寄せ】してもらうことになった。
なお、僕の代金は、レオディンが支払ってくれる。
いずれにせよ。
“いくつかのジュース”や“さまざまなジャム”に“ベーコンとハム”が写真付きで載っている三冊と、“地球の神々”が記述されている書籍が、現れた。
これによれば、日本の“磐鹿六雁命”が該当している。
あと、ギリシャの“女神ヘスティアー”が竈と炉を司っており、それは割と知られているみたいだった。
こうした面々だけでなく、“鍛冶神”も存在している…。
▽
お昼頃となり、“ハーフエルフのリィバ”が[別館]から一時的に戻ってきたようだ。
そのタイミングで、ヴァイアに先生などが、調理された品々を受け取って、帰ってゆく。
どちらにもアシャーリーが赴いて、いろいろと教えても良さそうだけれど、ラドン竜王にトラヴォグ公が断っている。
僕などの“前世での友人知人”に気づいてもらい、再会を果たすのが目的なので、[タケハヤ島]以外で広まるのは避けたがいいだろうとの考えだ。
ただ、いつかは、お抱えの料理人とかに指導してもらいたいらしい……。
▽
二日後の事だった。
夕飯にアシャーリーの“カルボナーラ”が振る舞われたのは。
他に、“ソフトフランスパン”と“野菜スープ”が配膳されている。
カルボナーラには“ハム”が用いられていた。
補足として、アシャーリーが先生によって入手した本によれば、〝ベーコンは燻製のみの過熱方法〟で、〝ハムは茹でたり蒸したり〟とのことらしい。
まぁ、おいといて…。
アシャーリーが〝パスタをフォークで巻いて食べる〟というのを実演してあげていた。
余談かもしれないけど、こうした調理品は、館のヒトたち全員に行き届いている。
そこら辺はアシャーリーに食べ方をレクチャーしてもらった料理人が、報せているみたいだ。
……、話しを戻そう。
[食堂]にいる顔ぶれが“パスタ&ハム”に興奮していた。
「これはまた初めての食感だ!」「すっごく美味しいです!!」といった具合に―。




