第79話 来訪④
“武神カティーア様”が帰られてから四日が過ぎている。
アシャーリーが“ソフトフランス”とかいうパンを完成させた。
サイズは15㎝くらいだろうか?
いや、もう少しありそうだ。
この“細長パン”に縦へと入れられた切り込みに、食材が挟まれている。
ひとつはスクランブルエッグのみの“卵サンド”で、もう一方はトマト/キュウリ/レタスの“野菜サンド”だった。
昼食に振る舞われた“サンドイッチ”に、誰もが〝んっふぅー♪〟と満悦する。
また、パンの柔らかさにも瞳を輝かせており、全体的に好評だ。
僕は懐かしさと共に喜びを噛み締めていた。
サンドイッチ以外には、唐揚げ/フライドポテト/オニオンスープが出されている。
……、あれ??
サンドウィッチが正解なんだっけ?
…………。
今度、先生が来たときにでも訊いてみようかな。
もし分からなければ、本を取り寄せてもらえば解決できるだろう。
きっと…。
▽
翌朝になっている。
本館の[一階エントランス]に“癒しの女神パナーア様”が【瞬間移動】してきたらしい。
そのため、主だった者が[広間]に集まる運びとなった……。
▽
珈琲の味変に、
「へぇ~、面白いですねぇ。」
パナーア様が感心している。
どうやら“ミルクコーヒー”が一番いいみたいだ。
「ところで、パナーア様。」
「お越しになられたのは、“特殊スキル”に関して、でしょうか??」
僕が質問したところ、
「ええ、そうです。」
頷かれた“癒しの女神様”が、経緯を語りだす。
これによれば、カティーア様が睨んでおられたとおり、複数の神々が関与していた。
ただし、“時空神様”は別らしい。
その神様が見たのは、僕らの魂をカティーア様が自室に連れてきたところだそうで、ここから先は知らなかったようだ。
なので、時空神様は〝お咎めなし〟になっているのだとか。
ともあれ。
荷担したのは、パナーア様と仲の良い方々らしく、各自が知識や武力などを司っていらっしゃるそうだ。
なお、全員が“中級の女神”とのことだった。
そのなかには、カティーア様の娘にあたる神も含まれているらしい。
こうした面々は、野外で〝50Mほどを匍匐前進しては、仰向けでスタート地点に戻ってくる〟という罰を、丸一日やらされたのだそうだ。
カティーア様の監視付きで。
今回も【治癒】を施すのが禁止されたらしく、誰もが数日に亘って寝込んだらしい。
また、パナーア様の父君によって、関与した神々には無期限の謹慎が申し付けられ、各親御さんが賛同したそうだ。
そのような状況で、どうにか動けるようになったパナーア様が、本日ご訪問なされたとの話しだった。
父君に〝代表して取り急ぎ事情を説明しに赴け〟と促されて…。
「つまり、私には、この銀河の“料理の神様”が特殊スキルを授けてくださったのですね。」
こう納得するアシャーリーに、
「いえ、そのような神はいませんよ。」
「存在しているのは全宇宙でも日本だけです。」
パナーア様が述べられる。
皆が〝え?〟と不思議がったところ、
「“竃を司る一族”は、どの銀河にもおりますが……。」
「それらの神々を、調理に携わるヒトや、鍛冶師が、崇めていますね。」
「ここ“ガーア”においても。」
「そうした神の能力と、アシャーリーさんの魂の記憶が相まって、あのスキルになったのです。」
そのように伝えられるパナーア様だった。
僕がもう少し詳しく尋ねようとしたタイミングで、
「では。」
〝スッ〟と立ち上がったパナーア様が、
「あまり遅くなると、伯母上様に新たな刑罰を追加されかねませんから、お暇させていただきます。」
「あと…、まだ体中が痛むので、横になりたいです。」
ふと遠い目をなされる。
こうして、
「いつかまた、お伺いしますね。」
穏やかに微笑み、【テレポート】するパナーア様だった。
余談になるかもしれないけれど、リィバだけ[広間]にいない。
[別館]で解体を行なっているため―。




