第78話 派生⑥
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引き続きの“ロレフ・ルヴェッキ”です。
まずは、軽めに、おさらいさせてください。
私は[ルゴカータ王国]で商会を営んでおります。
二代目ではありますけど。
こうした私は、[カッフェアの果実]を求めて、中型船で西へと向かったのです……。
約半月後に、[パニギア島]に上陸しました。
そこから、父が遺した記録をもとに、徒歩で北西に向かいます。
四日が経ち、木々が茂っている場所に辿り着いたのです。
果実を集めていたら、魔獣の“ラタトスク”が10匹ほど現れました。
これらを、5名の護衛者が殲滅してくれたのです。
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【瞬間移動】で港に戻り、[タケハヤ島]を目指して出航します。
“追い風”によって、十日で[スブキィ]に着きました。
無風だと倍の日数は掛かるので、順調です。
いえ、途中で15体ぐらいの“半魚人”が海中から甲板に跳び込んできましたが。
ただ、どれもが背丈120㎝あたりだったので、護衛者らによって撃退できました。
進化系の“グレートサハギン”は、身長2Mくらいとなり、身体能力も高くなるため、倒すのが困難になるそうです。
ま、それはおいといて…。
夕刻のため、お腹が空いていたので、ひとまず全員で[チキュウビストロ・ルワーテ]に足を運びました。
が。
休業していたではありませんか!
“張り紙”で事情を知るのと共に落胆した我々は、別の飲食店に入りました。
正直、質は[ルワーテ]の下位互換です。
普段、口にしている料理に比べれば美味しかったので、それなりに満たされはしましたが……。
敢えて言いましょう。
何よりもこの島の冒険者達が憎いです!!
それは、他の貿易商人らや、町で暮らしている方々も、同感みたいでした。
とにもかくにも。
時間からして失礼になりそうなので、御長男であられる“ルーザー様”の所へは、翌朝お伺いさせていただきましましょう。
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お屋敷の[執務室]で、麻袋ごとルーザー様にお渡しすると、宿屋で待つように促されたのです…。
午後となり、[ユニコーン車]でのお迎えがありました。
“お使いの人”によれば、招かれたのは私だけです。
私の従者たちは警戒しましたが、商談の匂いがしたので、お受けします……。
再びルーザー様に面会したところ、
「父上から謁見の許可が下りた。」
「よって、これより、あちらの館に瞬間移動する。」
「もし、そなたも扱えるのであれば、妙な真似はしないように。」
「今後、認められてもいないのに“大公の館”へと勝手に瞬間移動すれば、首を刎ねられると思え。」
このように告げられたのです。
それを、
「勿論でございます。」
お辞儀して固く誓う私でした。
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[大公殿下のお館]にて。
何故だか[食堂]に通されます。
上座には、威厳のある初老の男性が見受けられました。
大公殿下に間違いなさそうだったので、
「“ロレフ・ルヴェッキ”にございます。」
礼儀正しく挨拶する私です。
「“ルシム=イズモ”である。」
こう名乗られた御仁に、
「先日は、私の愚息が、誠に申し訳ございませんでした!」
より一層に深々と頭を下げたら、
「まぁ、よい。」
「アヤツラが二度とこの島に来なければ、な。」
そのように仰せになられました。
「必ずや徹底させます!!」
こう宣言した私を、
「うむ。」
「とりあえず、そこの椅子に腰かけよ。」
大公殿下がお促しになられます。
それによって、下座に着席したのです。
ルーザー様は、大公殿下の側に座られました。
こうした流れで、
「例のものを。」
大公殿下が控えていた“女性給仕さん”に指示なされたのです……。
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「我々はコーヒーと呼ぶことになったのだが…。」
「豆を擂り潰して、お湯を注いである。」
そのように教えてくださった大公殿下が、飲み方を説明してくだいました。
…………。
確かに、“ブラック”という状態では、苦いです。
お砂糖を二杯…。
ふむ。
当然ながら甘めになりました。
お次はミルクを少々……。
ほぉう☆
味が変わりましたね。
私は割と好みです♪
表情が明るくなったのを自分で察したところで、
「チキュウビストロ関連店が営業を再開したら、販売する予定だ。」
「数に限りはあるだろうが、できるだけ大量に果実を仕入れるのは可能か?」
大公殿下に問われます。
やはり、新たな事業に繋がりました!
興奮を抑えつつ、
「ご意向に沿えられるよう善処いたしますので、ぜひとも私の商会にご一任ください。」
こう願い出たのです―。




