第76話 連関⑧
先生の【お取り寄せ】なるものに、
「なんだ?! それは??」
「能力か?」
“武神カティーア様”が訝しがる。
「え??」
「パナーア様が僕らに授けておいてくださった“特殊スキル”の一つですけども?」
僕が首を傾げたところ、
「特殊スキル??」
「そんなものは知らないが?」
眉間にシワを寄せ、
「四人とも、私に詳細を教えてくれ。」
こうお促しになられる武神様だった……。
▽
聞き終えて、〝う~む〟と考え込まれたカティーア様が、
「これは…、パナーア以外の神々も関わっているに違いない。」
そのように推測する。
「恐れながら、どういうことでしょうか??」
お伺いしたのは、“細長眼鏡のマリー”だ。
これを受け、
「まず、私などの父である最高神が、創世を行なったとき、各種族に魔法とスキルに戦闘スキルを付与した。」
「単純なスキルは、亜空間収納などが該当する。」
「で、だ。」
「どの種族も、子孫繫栄していき、代替わりしていく流れで、遺伝子に変化が起きていった。」
「全てを兼ね備えて生まれてくる者もいれば、逆に何ひとつ持ち合わせていない者であったり、一部だけ有している者、みたいな感じだ。」
「ま、それでも、鍛錬や実戦を積む事で開花したりするのだが……。」
武神様が語っていく。
「あー。」
「〝僕が当初は戦闘スキルを全くもって備えていなかった〟みたいなことかぁ。」
独り納得した僕に、カティーア様が〝ふむ〟と頷かれ、
「他には、“ユニークスキル”というものが、いつしか誕生した。」
「父によれば〝これも遺伝子変異であり、そのスキルを持っている者は少ない〟との話しだ。」
「そして、“特殊スキル”というものは、未だかつて存在していないのだよ。」
「この惑星、ガーアの歴史上、な。」
そう喋られた。
「成程、です。」
理解を示した先生が、
「無礼を、承知で、お尋ねしても、よろしい、でしょうか?」
武神様を窺う。
どうやら、まだ緊張が抜けきれていないらしく、言葉がたどたどしい。
ヴァイアに至っては、できるだけカティーア様と視線を合わせないようにしている。
僕には分からないけれど、余程の【神気】なのだろう。
何はともあれ。
「私に答えられそうな内容であれば、遠慮なく。」
武神様が許可なされた。
「ありがとう、ございます。」
会釈した先生は、
「僕らの、特殊スキルに、いろいろな神様が、携わっているかもしれない、というのは、どのような、意味でしょうか??」
こう質問する。
それによって、
「パナーアは“癒し”を司っている。」
「なので、別の神々と協力しない限り、施すのは無理なのだよ。」
「諸君が得ている特殊スキルは、パナーアにとって専門外のものばかりだからな。」
「単独で授けるのが可能なのは、最高神と創造主様くらいだろう。」
このように述べられたカティーア様が、
「時空神は、何故、報告しなかった?」
「もしや、結託しているのか??」
そう呟く。
次の瞬間、
「まぁ、いい。」
「此度の件を再調査し、白日の下に晒したうえで、関与した連中を厳しく罰するとしよう。」
〝フフフフフフフッ〟と不敵な笑みを浮かべた。
これに、大なり小なり【神気】を感じ取れるヒト達が〝ビクッ!!〟と反する。
それらを余所に立ち上がると、
「コーヒー、馳走になった。」
「美味しかったよ。」
優しく目を細められた武神様が、
「では、また、いつか。」
この場から〝パッ!〟と消えた。
それに続いて、何名かが、〝ぶはぁ――〟と深く息を吐き、安堵する。
よほど怖かったのだろう。
こうした[広間]に沈黙が訪れかけたところで、
「あのぉー、父上。」
「例の貿易商人を、スブキィの宿屋に待たせているのですが、如何いたしましょう?」
“長男のルーザーさん”が、ルシム大公に指示を仰いだ。
僕は、(貿易商人??)といった疑問を抱く。
それはさておき。
「午後にでも連れて参れ。」
「儂が直に会おう。」
このように返す大公だった―。




