第74話 来訪③
翌朝となっている。
この日は、“ハーフエルフのリィバ”と鍛錬に勉学を行なう予定だ。
モンスターの解体は順調らしいけど、全て終えるまではまだ掛かるらしい。
ご飯を済ませ、小一時間が経とうとしている。
稽古のため外に向かおうとしていたところ、次々と客人が現れた。
まずはヴァイアだけど、彼は定期的なものなので、別に不思議ではない。
ただ、今回は、“双子の兄妹さん”ではなく、“ラドン竜王”が一緒だった。
政務が一段落したらしく、息抜きに来たそうだ。
続いて【テレポーテーション】してきたのは、先生と“トラヴォグ公爵”だった。
アシャーリーが以前お願いしていた[製麵機]が完成したらしい。
トラヴォグ公は、ラドン陛下を紹介されるなり、興奮していた。
竜王は[サウスト大陸]で勇名を馳せているそうだ。
こうしたところへ、お抱えの魔術士さんによって【テレポート】してきたのは、ルシム大公の長男にあたる“ルーザーさん”だった。
なんでも、“コーヒーの実”をゲットしたらしい……。
▽
“アシャーリーの伯父さん”が[亜空間収納]に入れてきた“麻袋”を、厨房で取り出す。
そうして、ルーザーさんが袋を開けたら、
「確かにコーヒーですね。」
先生が述べた。
果実を見るのが初めてだった僕とヴァイアは、〝へぇー〟と興味を示す。
一方で、
「ん?」
「“カッフェア”ではないのか??」
ラドン陛下が首を傾げる。
これに、
「日本では“コーヒー”と言います。」
孫のヴァイアが伝えたところ、
「ほぉう。」
「成程な。」
納得してくれたようだ。
「豆を挽く道具があればラクなんだけど…、とりあえず“すり鉢”でいいかな?」
ふと呟いたアシャーリーに、
「あぁ、“コーヒーミル”ですね。」
「それは、今度、ドワーフの職人達に頼んでみましょう。」
先生が提案する。
ちなみに、[すり鉢]は、“地球の西洋風”といった物だ。
いずれにしろ。
「お願いします。」
会釈したアシャーリーが、
「あとは、紅茶用のティーストレーナーと、“漉し布”で、やってみるしかないか。」
「でも、上手くいくのかしら??」
「せめて、フィルターがあればなぁ。」
〝ん~?〟と悩みだす。
「それなら、リィバが代用品を持っているかも。」
ふと思い出した僕に、
「はい?」
「なんです??」
ハーフエルフが瞼を〝パチクリ〟させる。
「ポーションとかを生産する際に使っている紙だよ。」
「薬草などを濾過する。」
そう説明したら、〝あー〟と理解して、
「それならば、幾らでも有りますよ。」
微笑んだリィバが、
「アイテムボックスよ、小さく開きたまえ。」
このように唱えた。
なお、本人は、[亜空間収納]を“特大”まで出現させる事ができる。
要は〝調整が利く〟のだ。
さて。
そうした流れで、アシャーリー母子に料理人たちが作業するため、僕らは邪魔にならないよう退散してゆく……。
▽
僕は、当然、庭で鍛錬することにした。
これに、ヴァイアが付き添う。
トラヴォグ公が、
「折角だ。」
「お前も御一緒させてもらえ。」
そのように勧めたので、先生も参加する…。
▽
休憩となり、輪になって雑談していたところ、急に、ヴァイアが〝ビクゥッ!!〟と反応し、先生&トラヴォグ公が後ろを振り返った。
リィバは深々と頭を下げる。
更に、竜王が跪き、
「ご無沙汰しております。」
こう挨拶した。
その方角に視線を送った僕が、
「あ。」
「カティーア様。」
「お久しぶりです。」
一礼したら、
「なッ?!」
「まさか、武神様で、あらせられますか??」
トラヴォグ公が目を丸くする。
次の瞬間、地面に膝を着き、
「お初に、お目にかかります。」
「儂、あ、いや、自分は、ハイドワーフの、“トラヴォグ=ロデール”です。」
「“ヴェルン王国”の公爵で、ございます。」
いささか震えつつ自己紹介した。
ヴァイアは〝ブルブル ガクガク〟になっており、先生は硬直している。
これらの光景に、
「全員ラクにしてくれ。」
「私は何も脅しに来たわけではないのだから。」
少なからず困り顔となる“カティーア様”だった―。




