第72話 打開案①
[大公の館]に戻って来た僕らは、各部屋で、装備を解いて、着替える。
そこから、[広間]へと集まった…。
▽
全員に紅茶が配られている。
こうしたなか、
「それで? 父上。」
「冒険者達を働かせるための考えとは、どのようなものです??」
“次男のルムザさん”が尋ねた。
それによって、
「うむ。」
「島内の各ギルドで発注されている現在の依頼を全て熟すまでは、チキュウビストロ関連店を休業させるつもりだ。」
このように“ルシム大公”が宣言する。
誰もが〝えッ?!!〟と驚いたところ、
「無論、店の者らは生活に困るだろうから、儂が支援金を出す。」
「そのためには何かと入り用だ。」
「税金は島全体のために活かしたいからな。」
「あの三店舗だけ特別扱いするわけにはいかん。」
「そこでだ。」
「魔物や魔獣の素材に、魔鉱石を、ギルドに買い取ってもらえば、金を得られる。」
「それらを分配すれば円満解決となろう。」
そう語る大公だった。
「成程。」
「……、ですが、問題があるかと。」
「ひとつは、冒険者たちが仕事を達成するまで、どれだけの時を要するのか分かりません。」
「日数が掛かっていくに連れ、各店への費用負担が増えていくでしょう。」
「もうひとつは、ギルドに解体を頼んだ場合、それなりの手数料が差し引かれます。」
「こちらで捌けるヒトがいれば、違ってくるでしょうが。」
ルムザさんの意見に、
「冒険者らに関しては大丈夫だろう。」
「あれらの料理を味わえないとなれば、精神的な打撃となろうからな。」
「また、自分らの所為で店が無期限休止となったら、地元民などから非難され、表を歩けまい。」
「ともなれば、すぐにでも行動に移るであろうぞ。」
このように返した大公が、
「ただ。」
「解体の件は、一理あるな。」
〝うぅ~む〟と悩みだす。
そこへ、
「あのぉー。」
軽く右手を挙げた“ハーフエルフのリィバ”が、
「ボクは解体に慣れているので、作業できる場所さえ在れば、やりますけど?」
「その際は無償で構いませんよ。」
こう提案した。
「よろしいのですか??」
ルムザさんに窺われ、
「はい。」
「こちらの館の方々にはお世話になっていますので、ささやかながら恩返しさせてください。」
〝ニッコリ〟とリィバが微笑む。
「ありがとうございます。」
会釈したルムザさんが、
「しかし、ここの解体所は、とうの昔に物置と化して…、あ。」
「別館のほうであれば、使えますね。」
大公に視線を送る。
「他にも館があるの?」
素朴な疑問を投げかけた僕に、
「ええ。」
「この都市の南西区にございます。」
「まぁ、もともとは、あちらが本館だったみたいですが……、〝初代ラダーム陛下が、引退後に、こちらの館を建築させ、お移りになられた〟そうです。」
「ちなみに、別館は、歴代の使用人たちが定期的に掃除しております。」
そのように答える大公だった。
「じゃあ、いろいろと上手くいきそうだね。」
こう述べた僕に、大公が「はい」と頷く。
「ところで、リィバ。」
「ダンジョンマスターについてだけど、あれってどういう意味だったの??」
そう訊いてみたら、
「あぁー。」
「実はですね…。」
「どのダンジョンも“触手目玉”が形成していくのですが、その魔物が亡くなると、当然ながら途中で終了します。」
「ですが、平均で十日もすれば、新たな“触手目玉”が誕生し、ダンジョンを造り直していくのですよ。」
このように教えてくれたのだ。
そうした説明に、僕だけでなく、アシャーリーとヴァイアに先生も、〝へぇー〟と理解を示す。
この流れにて、
「話しは変わりますが……。」
「ラルーシファ殿下がたの“神法”や“戦闘スキル”は、どうなりましたかな?」
“魔術師のレオディン”に質問された。
そのため、僕達は【ステータス】を各自でチェックしてみる。
…………。
残念ながら4人とも現状が維持されていた。
なんだか、ヘコむ。
けれども、
「ま、次の実戦あたりから進化していくと思いますよ。」
100歳は超えているリィバの予想に、気を取り直す。
「ただし…。」
「その可能性があるのは、儂の孫のフリント以外だな。」
更に長く生きているらしい“トラヴォグ公爵”の発言を受け、〝あはは〟と苦笑いする先生だった―。




