第67話 派生④
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私は“ロレフ・ルヴェッキ”です。
[ルゴカータ]という王国で、商会を営んでおります。
まぁ、開業したのは亡き父であって、私は二代目ですけど。
補足として、ルゴカータは、[北東の竜人]に[南西のドワーフ]といった国々に、挟まれております。
さて。
私には息子が2人いるのですが…。
長男は、少なからず厳しめに接しっていた事もあってか、優秀に育っています。
問題は次男です。
いささか、いえ、割と甘やかした所為で、愚鈍になりました。
これに関しては妻と一緒に猛省するばかりです。
私は、そうした次男の成長を促すべく、まずは小規模で構わないので貿易の旅にでるよう勧めます。
すると、露骨に嫌そうな顔をしました。
しかし、すぐに考えを改めたらしく、前向きに承諾したのです。
これを私は喜びました。
が。
数ヶ月後には、激昂することになったのです……。
[タケハヤ島]の“港町”での件を、同行していた従業員などに報告させます。
それによって、次男が[スブキィ]で暴挙に出たうえ、私に嘘を吐いていたのが判明したのです。
まさか、ここまで馬鹿だったとは。
私は気が付けば怒鳴り散らしていました。
未だかつてないぐらいに。
次男には、あとで厳罰を与えるとして、とりあえず書類整理をやらせておきます。
商会の代表である私が早急に着手すべきは、[ルワーテ]と“ルシム大公殿下”への謝罪です。
今回の話しが各地に広まったら、私どもの信頼は地に落ちかねません。
そうなれば、やがては、お客さんが悉く離れてしまい、廃業に追い込まれるでしょう。
危機を感じた私は、職務を長男に任せ、あちらに赴く事にしたのです。
ちなみに、私は[低級の闇属性魔法]が使えます。
また、何度か[スブキィ]に訪れた経験がありました。
つまり、【瞬間移動】で渡ることが可能なのです。
余談になるかもしれませんが、現在うちは“20人の用心棒”を雇っています。
これらは生活の安定を求めた元冒険者の男女であり、なかには[スティールクラス]もチラホラいますが、殆どは[アイアンクラス]です。
昼夜問わず、“自宅”と“店舗”を交代で警備させています。
なお、それぞれ、七日に一度は休みです。
私は、こうした者たちのなかで、2人だけを連れ立つ事にしました。
念の為の護衛として。
あまり大勢になりすぎると、目立ちすぎてしまい、お金持ちだと睨んだ破落戸に襲われかねないのです。
ま、[タケハヤ島]は、昔から治安が良いので、ほぼ起きませんが。
なにはともあれ。
[スブキィ]の“北門”あたりに移りました。
通行料を支払い、町へと入り、[馬車]を手配します…。
[チキュウビストロ・ルワーテ]の正面で降りたときには、お昼の営業が済み、“リスの獣人さん”が扉を閉めようとしていました。
経緯を説明した私に、そのヒトが〝あぁ〟と理解を示します。
皆さんにお詫びしたい旨を述べたら、「ちょっと待っていてください」と、店内に入っていきました。
ほどなくして、“狼の獣人さん”を軸に、全員が、外に足を運んできたのです。
深く頭を下げた私は「迷惑料を納めさせていただきたいです」と伝えるも、店長さんに「必要ない」と断られました。
更に、「あんたの誠意は分かったから、もういい」と許してくださったのです。
一応に安堵した私ではありますが、大公殿下にも謝らなければなりません。
けれども、私には面識がないので、かなり難しいでしょう。
[ルワーテ]が“御用達”なのであれば、繋げてもらえるかもと思い、お願いしてみました。
店長さんによれば「可能だが、あまり期待しないでくれよ」とのことです。
ひとまず望みを託して、暫く町に滞在しようと決める私でした……。
毎日二回、ご飯時には、必ず、宿屋から[ルワーテ]に通っています。
私たちは、どの料理にもすっかり魅了されてしまったのです!!
愚息が無茶をしたのも納得できます。
私は同じ轍を踏みませんけどね!
こうして四日が過ぎたところで、店長さんから「この町で暮らしておられる大公殿下の御長男様が、お会いしてくださるそうだ」「明日の朝、10時に、お伺いしてくれ」と告げられたのです。
それを、私は、心より感謝しました…。
私だけ[執務室]に通されています。
伴っている護衛2人は、廊下で待機です。
このような状況で、
「父である“ダイワの大公”は、この島におけるルヴェッキ商会の貿易を、今までどおり認めてくだされた。」
「しかしながら、そなたの息子などに下した処罰は解かれん。」
「また、〝関係者の顔も見たくない〟そうだ。」
「何せ、“御用達”を謳っている店で、あのような振る舞いをやられてしまったのだからな。」
「“面目丸つぶれ”というものだ。」
御長男であられる“ルーザー様”が仰せになられました。
「ごもっともです。」
恐縮する私に、
「だが、ある事を成し遂げれば、謁見を叶えてくださるそうだ。」
そう教えてくださったのです。
「どのようなものでしょうか?」
すかさずお尋ねしてみたら、
「……。」
「さる御仁が“コーヒー”というものを探しておられるのだが、誰も知らないため、当惑しているのだよ。」
「島全域の商人にあたらせたものの、さっぱりでな。」
軽く眉間にシワを寄せられました。
「特徴をお聞かせいただいても??」
こう質問した私に、ルーザー様が語られます…。
「特徴からして、カッフェアに酷似しているかと。」
そのように推測したところ、
「おおッ?!!」
「分かるのか!??」
驚かれるのと共に表情を明るくなされたのです。
〝はぁ〟と頷いた私に、
「ならば、まず、麻袋一つぶんの果実を、この屋敷に届けてくれ。」
「御本人に確認していただき、違いなければ、父上がそなたに面会してくださる。」
「もしかしたら、そのまま商談となるかもしれん。」
ルーザー様が伝えられました。
……、これは、好機です!!
私の次男が招きかけた災いが、福に転じようとしているのですから―。
ロレフ・ルヴェッキ
中背/華奢/セミロング天然パーマヘア&鼻髭は金色/白肌/瞳は青い/47歳




