表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/205

第66話 派生③

オレは、ロトーゾ・ルヴェッキ。


父は[ルヴェッキ商会]の二代目を務めている。


オレ自身は、その次男だ。


なお、商会は[ルゴカータ王国]の港町に拠点を構えてきた。


ルゴカータは、この世界の南東に位置する[サウスト大陸]に存在している。


さて…。


祖父の時代から、貿易を中心として、国内の王族貴族とも商売を行ない、かなり稼いでいてきたので、店は大きい。


その店舗の側に建てられている自宅は、豪邸だ。


こうした環境で、オレは何不自由なく育ってきた。


そんなオレが二十歳を過ぎた或る日のこと、父親に「社会勉強のために国外の各地を巡って(あきな)いをやってみろ」「まずは近場でいいから」と促されたのである。


……、正直メンド―だ。


冒険とか、危ない印象しかないし。


オレは、なるべく、地元で〝ぬくぬく〟していたい!!


だが、ふと思った。


ここで実績を上げて、認めてもらえれば、大きな仕事を幾つも任せてもらえるようになるのでは?


そうして結果を出し続ければ、兄ではなく、オレが跡を継げるかも??


と…。


このため、オレは、旅立つことにしたのだ。


従業員と召使を、二名ずつ連れて。


家から出発したオレ達は、護衛を雇うべく、一旦、[冒険者ギルド]に足を運ぶ。


[窓口]にて。


料金を惜しみ、できるだけ安い連中を頼んだ。


すると、“受付嬢”に「それでしたらペーパー級かウッド級になります」と言われた。


クラス的に最も低い“ペーパー”は不安でしかない。


よって、“ウッド”にしたのである。


白人と黒人が半数ずつの計4名で、全員が男性だ。


そうして、オレたちは、商会が何艘(なんそう)も所有している[貿易船]のなかでも小型なものに乗り込んだのである。


ちなみに、船長と操縦士は1人ずつで、船員は2人だ。


余談になるかもしれないが、オレは、【魔法】はもとより【スキル】を全くもって扱えない。


父は[闇属性の魔法]を、兄は[剣術・壱]を、生まれ持っている。


あと、どちらにも【亜空間収納(アイテムボックス)】が備わっていた。


……、なんか不公平じゃないか?


まぁ、いいけど…。


べ、別に拗ねてなんかないんだからな!


【アイテムボックス】とか以外であれば、“鍛錬”や“実戦”によって得られるみたいだけど、商家だから経験がないだけだし??


商いに関して学ぶのを重要視されているわけであって、他は優先事項じゃないから、仕方ないだろ?


オレだって、励みさえすれば、何かしらの【魔法】に【スキル】が開花するかもしれないもんッ!!


…………。


すまない。


取り乱してしまった。


話しを戻そう。


今回の顔ぶれのかなでは、従業員の1人だけが【亜空間収納】の“小規模”を使える。


冒険者達は、各自、【戦闘スキル】を二つ扱えるそうだ。


こういった状況で、数ヶ月かけて西方面の島を三つほど回った。


その流れで、[タケハヤ(しま)]の南側に在る“港町”に寄ってみたのだ……。


久しぶりに1人になりたかったオレは、[スブキィ]の宿屋に成員を残し、町を散策してみた。


そうしたところ、[チキュウビストロ・ルワーテ]とやらに行列が見受けられたのである。


飲食店で、このような現象は、あまりにも珍しい。


個人的には初めてだ。


興味を惹かれたオレは、すぐに並んでみた…。


注文した“カラアゲセット”なるものを食べてみる。


……、なんだこれは??!


美味すぎるぅ――ッ!!


衝撃と感動に震えたオレは、どの品についても調理法を教えてもらうことにした。


それらを実家に伝えれば、高く評価してもらえるに違いないからだ!


うちで事業展開したら、莫大な利益に繋がるだろう。


となれば、貢献したオレこそが、ゆくゆくは当主になれるに違いない!!


こう考えたオレは、店長に懇願した。


しかし、(かたく)なに首を縦に振ろうとはしなかったのである。


だが、オレは知っていた。


数分前に、家族であろう“ハイドワーフ4人組”が、[別室]に案内されていたのを。


あの時、店員に質問していたのは、少年だった。


つまり、〝子供であれば問題ない〟ということではないか?


そう判断したオレは、後日、街中で暇そうにしている“男子2人”に声をかけ、[ルワーテ]に赴かせた。


計二枚の銀貨を持たせて。


これだけでなく、「成功した暁には1人につき金貨一枚を与えてやる」と約束したのである…。


暫くして、店から少し離れた位置で待機していたオレのもとへ、少年らが姿を現した。


いささか怯えた様子で「報酬は要らない」と告げるなり、何処へともなく走り去っていく。


お釣りを返さないままに。


のッ、ガキどもめ!


追い掛けようとしたオレではあったが、土地勘がないので、やめておいた……。


翌日、例の冒険者たちと、[ルワーテ]に怒鳴り込んだ。


所詮は料理人の集まり、脅せば泣きつくだろう。


そう推測したのだが…、逆効果だった。


激昂(げっこう)した店長によって、(おもて)に出される。


ここから、オレが雇っていた連中が、あっという間に倒された。


それこそ、秒で。


呆然とするオレに、更なる不運が訪れる。


事態を目撃していた“ルシム大公”に処罰されてしまったのだ。


本当は、この後、北東の[ノイスト大陸]に向かう予定だったのだが、意気消沈したオレは、家に帰ったのである……。


父親を、どうにか誤魔化(ごまか)した。


けれども、同行していた者らに、洗いざらい喋られてしまったのである。


迂闊(うかつ)だった。


幾らか(カネ)を渡して、口裏を合わせるよう指示しておけば良かったものを。


オレの、馬鹿!!


いや、冒険者達であれば通用しただろうが、[ルヴェッキ商会]で働いている面子は無理か。


あとで発覚したら、父によって解雇されかねないので…。


何はともあれ。


(いま)だかつてないぐらい父に叱られるオレだった―。


ロトーゾ・ルヴェッキ

中背/標準体型/金色マッシュルームヘア/白肌/瞳は青い/21歳


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ