第63話 過ぎゆく季節のなかで②
先生がたとヴァイアたちが、帰国した。
それから二日が経った午後に、先生が【瞬間移動】で再び訪れる。
今回は、祖父君に、“男女のエルフ”が一人ずつ、といった計4名の組み合わせだ。
こうして、僕らは、[広間]で、採寸されていく。
なお、ヴァイアは来ていない。
もともとヴェルン王国産の“武器”と“防具”を所有しているため、新たに作る必要がなかったみたいだ。
それもまた〝体に合わせて伸縮可能〟との事だった…。
▽
各自が紅茶を飲んでいる。
「そういえば、先生の“お取り寄せ”って、どんな能力なんですか?」
ふと尋ねたのは、アシャーリーだ。
「あぁ。」
「お金を支払うことで、地球の本を、こちらに出現させられるんですよ。」
「ただし、漫画や卑猥なものは“不可”となっていますけどね。」
このように説明した先生に、僕などが〝へぇー〟と興味を示す。
「試してみますか??」
先生に訊かれたものの、僕は何も思い浮かばない。
そうしたところで、
「じゃぁ、料理関係のものを、お願いしたいです。」
「代金をお渡し致しますので。」
アシャーリーが申し出た。
「大丈夫ですよ、僕が払いますから。」
こう先生が述べるも、
「いえ、そういうわけにはいきません。」
「金貨一枚で足りるのであれば、お受け取りください。」
アシャーリーが断る。
「そうですか?」
「では、遠慮なく。」
承諾した先生が、
「どういった内容のものにします??」
改めて質問した。
「ん~、そうですねぇ……。」
「ソフトパンに、マヨネーズやソース類とマスタードについて、といった感じですかね。」
「あ。」
「あと、パスタ生地を麺状にするマシンが欲しいのですが…、それを知ったところで私には作れないでしょうし。」
アシャーリーが悩んだら、
「“製麺機”であれば、祖父達に頼めばいいかと。」
そのように先生が勧める。
「ん?」
「セイメンキ??」
「なんだ、それは?」
トラヴォグ公爵が反応を示したところ、
「この世界には未だ無い美味しい料理を作るために必要な機械ですよ。」
孫にあたる先生が伝えた。
これによって、
「ほぉーう。」
「どういう物かは想像が付かんが、楽しみだ!!」
「良かろう! 協力してやる!!」
トラヴォグ公が嬉々とする。
他の皆も〝ワクワク〟しているみたいだ。
ちなみに、先生たちは[チキュウビストロ・ルワーテ]に寄ってから館に赴いたらしい……。
「それでは、いただいた金貨を、テーブルに置いて…。」
「スキルを発動しますね。」
そう告げた先生が、ここから暫く黙り込む。
数十秒が過ぎ、
「マヨネーズなどに関しては、ピンポイントでの雑誌などがありませんね。」
「大きく“調味料”のカテゴリーを当たってみますので、もう少し待っていてください。」
そのように先生が報せると、
「ピンポイント??」
「カテゴリー?」
「それに、マシンって??」
“ハーフエルフのリィバ”が首を傾げた。
これらについて僕が教えていったタイミングで、
「ここら辺を選びましょうかねぇ。」
先生が独り言を口にする。
僕達には何も見えないけど、先生の脳内には“リスト表”が出ているのだろう、きっと……。
数秒後に金貨が〝フッ!〟と消えた。
代わるようにして“三冊の書籍”と“銀貨4枚&銅貨5枚”がテーブルに〝シュンッ!!〟と現われる。
そうした展開に、誰もが〝おぉー〟と目を丸くした。
この流れで、
「それらの通貨は?」
素朴な疑問を呈したアシャーリーに、
「お釣りのようですから、本と一緒にどうぞ。」
先生が〝ニッコリ〟と微笑む。
貨幣を収めたアシャーリーが、一冊の書籍を捲るなか、
「日本円に換算した場合、いくらになるんでしょうか??」
先生に聞いてみる僕だった。
〝んッんー?〟と考え込んだ先生は、
「おそらくですが…。」
「まず、どれもが、1枚に対して、金貨は壱万円、銀貨が千円、銅貨であれば百円、鉄貨は十円、石貨が一円、といったところでしょう。」
「それでいくと、〝五千五百円の買い物をした〟という事になりますかね。」
そのように結論づけた。
僕が納得していたら、
「あった。」
呟いたアシャーリーが、
「先生、これです。」
あるページを見せる。
「これはまた、“精密な絵”ですなぁ。」
感心する“魔術師のレオディン”に、
「いや、それは“写真”だよ。」
僕が教えたところ、転生者以外が〝はて??〟となった。
どうやら、これについても解説しないといけなさそうだ……。
いずれにせよ。
「まぁ、当然ですが、日本語で書かれていますね。」
「こちらの文字を僕が翻訳して、祖父に確認してもらいましょう。」
「この本、お預かりしても?」
先生に窺われ、
「勿論です。」
快諾するアシャーリーだった―。




