第60話 訳柄①
今回は、〝客間だと手狭〟との理由で、[広間]に集まっている。
“フリント=ロデール”という名前になっていた先生と、かつて生徒だった僕らは、これまでの事を簡略的に伝えあった。
なお、先生は、“ハイドワーフ”らしい。
以前、[歴史学]のマリーに教わったことがある。
ハイドワーフは、体毛に瞳がライトブラウンで、500年は永らえるのだと。
ちなみに、“通常のドワーフ”はというと、体毛や瞳はブラウンであり、250年ぐらいの寿命らしい。
“ハーフドワーフ”は、体毛と瞳がダークブラウンで、平均的に125年あたり生きるそうだ。
さて。
“元・竹村良鉄先生”は、[ヴェルン]という国の王族に転生していた。
その王国は、“竜人のヴァイア”と同じ[サウスト大陸]に在るとの事だ。
僕達が語らい終えたところで、
「まさか、ラダーム殿の血縁者や、竜王陛下の孫君だったとは…。」
先生の“祖父君”が、ふと呟いた。
「ご存知なのですか??」
瞼を〝パチクリ〟させる“ルシム大公”に、
「あ、いや、とっくに亡くなっておる儂の爺さんが、な。」
「……、およそ五百年前に、何名かのドワーフ族と、冒険者かつ職人として、いろいろな国を巡った流れで、ここの都で暫く生活していたらしい。」
「そうして、この館であったり、ジンジャとかいうものを、建てたのだとか。」
「その際に、ラダーム殿や、現竜王陛下と、酒を酌み交わしたことがあるそうだ。」
“先生の祖父君”が伝える。
これに、
「なんと?!!」
「そのような繋がりがあったとは!」
おもいっきり驚く大公だった。
一方で、〝ほう ほう〟と興味ありげに、眼鏡を〝キラァーン☆〟と光らせたのは、マリーだ。
それはおいといて。
「ん??」
「ご先祖もまた“ヴェルンの王族”でいらっしゃったのですよね?」
「なのに、何故、そのような日々を過ごしておられたのでしょうか??」
“魔術師のレオディン”が素朴な疑問を投げかけたら、
「あー、うちの爺さんは、先王の弟なのだが…。」
「ある時、〝城での暮らしは性に合わん〟と、出て行ったらしい。」
「そうして、爺さんを敬っておった者らと共に各地を旅して、タケハヤ島に辿り着いたのだとか。」
「やがてラダーム殿が崩御し、帰国した爺さんたちは、勝手に集落を造ったそうだ。」
「そこから次第に住民が増え、気が付けば町になっていたらしい。」
「ま、数百人ほどの小規模ではあるがな。」
「うちの親父が数年前に他界してからは、儂が長を務めておる。」
「あと、爺さんの頃より税金は納め続けておるので、本家から文句を言われた事はない。」
このように答える“先生の祖父君”だった……。
ちょっと余談になるもしれないけど、祖父君は、“セミロングの髪”をオールバックにしており、お腹あたりまで“髭”を伸ばしている。
70歳くらいに見えるけれども、実年齢は不明だ。
当然“ハイドワーフ”なので。
そうした祖父君の名は、“トラヴォグ”というらしい。
話しを戻そう。
「ところで。」
「先生達は、どのようにして“チキュウビストロ・ルワーテ”を知ったんですか?」
僕が尋ねてみたら、
「あぁ。」
「まず、こちらは僕の伯母さんなのですが…、こことは他の島から建築関係の依頼を受けて、暫く赴いていました。」
「で。」
「地元へ帰る途中に、立ち寄ったそうなのです。」
このように先生が喋った。
そこからは、伯母にあたる方が、
「まぁ、スブキィで船を乗り換えないといけなかったからね。」
「出港まで時間があったし、お腹が空いていたもんで、飲食店を探してみた結果、発見したというわけさ。」
こう説明して、〝ニカッ〟と口元を緩める。
そのヒトは、“ショートのくせ毛”だ。
とにもかくにも。
「伯母さんから、チキュウビストロや、料理の詳細を聞いたのですよ。」
「そうした経緯で、お店に連れて来てもらったところ、“日之永君”に“嶋川さん”の名前が刻まれた名刺をいただいたんです。」
「まさか、城宮君にも会えるとは思っていませんでしたが。」
笑顔で述べる先生だった―。




