第57話 展望.2
“ヴァイア三世代”が帰ってから、一週間以上が経っている。
この日の朝に、[館の一階エントランス]へ【テレポート】してきた人たちがいるそうだ。
以前、ルシム大公が[ケンタウロス便]で手紙を送った相手らしい……。
▽
僕らは、“大公家族”と一緒に、[客間]に足を運んだ。
すると、“60歳ぐらいの貴婦人”が、ソファに腰かけて、紅茶を嗜んでいた。
その後ろには、40代前半あたりの魔術士と、30代半ばといったところの給仕が、控えている。
ちなみに、どちらも女性だ。
さておき…。
大きめの“お団子ヘア”に、ドレス姿の、貴婦人が、〝スッ〟と立ち上がった。
髪は白金であり、瞳は青く、痩せ型で、凛としている。
こうした特徴の貴婦人が、
「お久しぶりです、ルシム殿下がた。」
大公家族に会釈した。
そこから、
「まぁ、大きくなられましたわねぇ、アシャーリー御令嬢。」
穏やかな表情になった流れで、僕を見つつ、
「そちらは、アシャーリー御令嬢の友人の方ですか??」
軽く首を傾げる。
「いや。」
「ダイワの第二王子、ラルーシファ殿下であらせられる。」
このように大公が紹介したところ、
「はい?」
「ご冗談ではなく??」
貴婦人が怪しんだ。
けれども、大公が真面目な感じで〝うむ〟と頷いた事によって、ほんの少しの間を置き、
「御無礼いたしましたぁあッ!!」
かなりの勢いで、頭を深々と下げる貴婦人だった。
更には、お連れの二人も、慌てた様子で、お辞儀する。
それらに対し、
「あー、うん。」
「ラクにせよ。」
こう告げる僕だった……。
▽
主だった者だけがソファに座り、話しを進めている。
なお、貴婦人は、“メリン・ハースト”という名前なのだそうだ。
大公にとって“曾祖父の妹の子孫”にあたるらしく、[北の領主]を努めているらしい。
そのため、〝港町ジィーモも管轄している〟とのことだった…。
「成程、事情は承知いたしました。」
「私の命に替えましても、王子殿下のことは、他言いたしませんし、させません。」
こう約束したメリン領主が、
「それで?」
「チキュウの料理というのは、どのようなものなのでしょうか??」
「スブキィで大盛況しているとはゆえ、私が治めさせていただいている港町で事業展開するには、具体的なことが分からなければ決断いたしかねます。」
大公に述べる。
「ま、もっともだな。」
理解を示した大公が、
「頼まれてくれるか?」
アシャーリーを窺う。
「ええ、構いませんよ。」
起立して、スカートの両端を抓み、
「それでは、早速、厨房に向かいますので、一旦、失礼します。」
挨拶したアシャーリーが、
「お母様も。」
ふと声をかけた。
それによって、一礼した“アシャーリーの母親”もまた、退室していく……。
▽
お昼となり、[食堂]に移動している。
アシャーリー達が調理した品々を口にして、
「な…んですか??! これはぁ――ッ!!?」
メリン領主が驚くのと共に瞳を輝かせた。
他の二人も〝んッふぅ―☆〟と幸せそうにしている。
これらの反応を受け、
「そうであろう、 そうであろう。」
ニコニコご満悦な大公だった…。
▽
食事が済んだところで、
「確かに、これらの料理であれば、行列ができるくらい成功して至極当然というものでしょう。」
納得したメリン領主が、
「これより、ジィーモで、お店などの候補を探します。」
「数日お待ちいただいても??」
そう尋ねてくる。
これに、
「無論だ。」
「慎重に熟慮してくれ。」
そのように大公が返す。
余談になるかもしれないけど、メリン領主は〝北の港町では生活していない〟とのことだった。
しかし、〝あちらに別宅がある〟そうだ。
このため、いつも暮らしている館に戻って準備を整え次第、[ジィーモ]に渡ってくれるらしい。
そうした経緯で、[北の港町]にも店舗を構える事になる僕らだった―。




