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第56話 交錯するもの⑩

我は、ラドン=カナム。


“サウスト大陸”の最北西に位置する[ドゥユール国]の王だ。


ちなみに、“竜王”とも呼ばれておる!


ま、この座に我が就いたのは、今から数年前のことだが…。


さておき。


孫の一人である“ヴァイア”が、【神法(しんぽう)】を得ておる事が判明した。


それによって、つい、「まるでラダーム達のようではないかぁーッ!!」と、はしゃいでしまったのが思い出される……。


更に年月が過ぎ、ヴァイアの兄にあたる“ガオン”が、諸国巡りから一時的に戻ってきた。


なんでも、[タケハヤ(しま)]で〝とても珍しいうえに物凄く美味しい料理〟を食べたのだそうだ。


この詳細を聞くなり、ヴァイアが驚いた。


そこから、意を決したかのように、転生者である旨などを語りだしたのである…。


本人によれば、それらの調理や、チキュウビストロという名は、前世に関わりがあるそうだ。


このため、島に渡るのを願い出てきた。


とっくに鍛錬期間を終えているとはゆえ、まだ10歳である。


家族で相談した結果、ヴァイアの三人の兄が付き添う運びとなった……。


王城に帰ってきた四人から、いろいろと報告を受ける。


なかでも()が興味を刺激したのは、ラダームの子孫と、この血縁者だ。


両者ともに、【神法】を扱えるとの事であった。


それだけでなく、“ラダームの末裔”は、あの[ムラクモ]を鞘から抜いたのだそうだ。


また、ヴァイアらの長兄(ちょうけい)たる“ラゴーン”によれば、既に“武神カティーア様”が接触なされていたらしい。


これらによって、脳内に約五百年前の日々が鮮やかに甦った我は、すぐにでも[大公の館]に発ちたくなった。


が。


公務が多忙で、暫く身動きが取れなかった次第である…。


数日が経ち、食材などを持参した我々は、ヴァイアによって[館]へと赴き、“ラルーシファ”と“アシャーリー”に出会えた。


そこから、我が息子と一緒に、ラダームについて教えていき、大いに盛り上がったのである。


……、まぁ、我ら親子だけだったかもしれんが。


いや、誰もが楽しそうにしておった故、問題なかろう。


きっと…。


なお、我とラダームの友好関係は、あくまで個人的なものであった。


先王……、つまり、我が父は、ラダームとの繋がりがない。


故に、国家として同盟を結んでおった訳ではないので、我々の交流は非公式となっている。


要は、記録を残しておらんのだ…。


懐かしい話しは、ひとまず、これぐらいにしておこう。


なんだかんだで、作ってもらった料理を、城で(しょく)してみた。


“カラアゲ”や“アサリのバター焼き”に“フライドポテト”というものだ。


これらに、我を含めた多くの者が、目を丸くして騒ぎだす。


あまりの美味(うま)さに衝撃を受けたからであぁーるッ!


そうした我々の様子に、ヴァイアたち四人が微笑みながら〝うん うん〟と頷いておった―。



私は、ドォーゴ=カナム。


[ドゥユール]の第一王子です。


末子(ばっし)のヴァイアが【神法】を使えるというのを知った際には、驚きを隠せませんでした。


あれ(・・)は、武神様の影響で、“ラダームと近衛衆(このえしゅう)”にのみ備わっていたはずです。


ヴァイア本人に尋ねてみたものの、詳しくは分からないようでした……。


こうして、年月が過ぎた或る日のこと、状況が一変しだします。


私の三番目の息子である“ガオン”がもたらした情報によって。


それを受け、ヴァイアが、10歳となった夜に夢を見た件や、自身の前世についての内容だった旨を、私達に告げたのです。


しかしながら、カティーア様によって、この世界に転生したのかは、不明でした。


とかく。


[タケハヤ島]から戻ってきたヴァイアたちによれば、ラダームの子孫と、血縁者が、暮らしているそうです。


居ても立っても居られず公務を捨て置き向かおうとする父上を、私などが抑えます。


なかでも、冷静で利発な“ドゥーラ”の説得が功を奏しました。


補足すると、私の“二番目の息子”です。


そんなこんなで、仕事が一段落してから、ヴァイアの【瞬間移動】で[大公の館]へと渡ったのでした…。


ついつい、ラダームの話しで、父上と盛り上がってしまい、皆さんを置いてけぼりにした感じは否めません。


ま、誰もが喜んでいたようなので、大丈夫でしょう。


おそらく……。


あぁ、そう言えば。


ラルーシファ君と、アシャーリーちゃんに、転生に関して訊いてみたところ、〝武神様の姪の方によるもの〟とのことでした。


私達は、(くだん)の“癒しの女神パナーア様”との面識がありません。


できれば、いつか、お会いしてみたいものです。


ヴァイアの父親として、御挨拶させていただきたいので。


さて…。


チキュウの調理法による品々は、どれもが最高でした!!


まるで、(ほお)が落ちそうです!


結果、私どもは、また味わえるのを心より望みました。


ま、これからもヴァイアが不定期ではあるものの[館]に遊びに行くみたいなので、お金を持たせるなどすれば、叶う事でしょう。


そんなヴァイアには、いつか、伝えておかないといけません。


何かしらの不幸さえなければ二千年ほど生きる竜人と、他の種族とでは、〝寿命に差がありすぎる〟というのを。


今後、ヴァイアが、かつての友人知人の全員と再会を果たせとしても、別れは必ず訪れるものです。


となると、自分より早く年を取り、先に旅立つ者を次々と見送らねばなりません。


それが、どれほど、哀しく淋しいことか。


実際、ラダームが崩御(ほうぎょ)したあと、父上は暫く塞ぎ込んでおられました。


ラルーシファ君などと前世からの関係があるヴァイアともなれば、尚更せつなくなるに違いないでしょう。


このため、覚悟しておくよう、聞かせる必要があります。


それもまた、親の務めというものです。


正直、嫌な役回りでしかありませんが―。

[ヴァイアの兄たち]


長兄(ちょうけい)=ラゴーン


次兄(じけい)=ドゥーラ


三兄(さんけい)=ガオン


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