第53話 竜人族①
“三兄さん”を、
「いえ、ヴァイアの御縁があるとは言え、無料で飲食させていただくのは、さすがに礼儀を失していますよ。」
そのように“次兄さん”が窘めた。
これによって、
「あー、……、ん。」
「兄貴が正しいな。」
「すまなかった。」
三兄さんが僕らに謝罪した。
「いや、まぁ…、うぅ~む。」
どう返すべきか“ルシム大公”が困っていたところ、
「とりあえず、祖父と父に今回の事を伝えよう。」
「で、だ。」
「金銭を支払えば料理してもらえるかい?」
「うちらの家族たちも食べてみたいだろうし、祖父は新たに交流をもちたがるだろうからな。」
“長兄さん”が窺ってくる。
「私は構いませんけど。」
そうアシャーリーが承諾したら、
「ありがとう。」
長兄さんを筆頭に、城宮くん……、ヴァイア達が微笑んだ。
和やかな雰囲気に包まれていくなか、
「ところで…。」
「竜になってもらえたりしませんか??!」
「おおよそ40年前、冒険者としてドゥユール王国に赴いた際、ダンジョンブレイクが起きて、沢山の魔物が野外に溢れ出てきました。」
「その時、一匹の竜が颯爽と飛来して、対処していたのを、遠くから見たことがあるのですが……。」
「あれかというもの〝もっと間近で観察してみたい〟と思い続けてきたのです!!」
「そして、今…、この機会が訪れました!」
「どうかボクの願いを叶えてくださ―いッ!!」
おもいっきり頭を下げる“ハーフエルのリィバ”だった。
「んー、……、やめておいたほうがよろしいのではないでしょうか?」
「私たちのうち3人は数十メートルから百メートル以上になるので、かなり目立ちますよ。」
「何かと噂になるのを避けたいのでは??」
このように次兄さんが喋りながら、僕のほうに視線を送る。
[ムラクモ]を抜剣した事で二度も暗殺されかけ、[大公の館]に匿ってもらっている件を教えていたので、危惧してくれたのだろう。
それを察した誰もが〝あぁ〟と理解を示す。
リィバなどが落胆するなか、
「でもよ、ヴァイアだったら問題ないんじゃねぇか?」
「まだ子供だから、竜になってもそこまでの大きさはねぇし。」
「ま、これから成長していくにつれて、徐々にデッカくなるけど。」
「オレらがそうだったように。」
こう三兄さんが述べた。
それによって、リィバを筆頭に、大公や“教育係”と“お世話係”が、瞳を〝キラーン☆〟と輝かせる…。
▽
僕達は、[館の一階エントランス]に足を運んでいた。
ある程度は“吹き抜け”になっているので、大公が〝安心だろう〟と判断してのことだ。
ドラゴンに変身してくれた城宮くんは“背丈5M”あたりになっている。
尻尾は2Mぐらいの長さだ。
こうした彼に、皆が〝おお~〟と感動していた。
僕は、元クラスメイトに申し訳なくなっている。
どうやら嶋川さんも同じらしい。
それにしても……、城宮くんが着ていた服は、どこに消えたのだろう??
▽
数十秒後。
好奇心による注目を集めていた城宮くんが、
「もう、いいか?」
耐えきれずにギブアップした…。
ちなみに、次兄さんの説明によれば、〝竜人の状態は鬼人と同等くらいの身体能力〟との事だ。
それは、“人間 → ハーフドワーフ → ドワーフ/ハーフエルフ → ハイドワーフ/エルフ → ハイエルフ/魔人/天空人 → 獣人 → 鬼人/竜人”の順で高くなるらしい。
〝ただし竜そのものは別格〟〝次元が違うので〟という話しでもあった―。




