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第5話 課程・急

翌日の朝――。


お庭で【剣術】と【打撃術】の稽古を付けてくれるのは、“ベルーグ・ゾアノ”だ。


30代半ばの彼は、金色の髪をかなり短く刈っていて、無精髭(ぶしょうひげ)を生やしている。


瞳は青いのだが…、右目だけは閉じられたままになっていた。


右の額から頬にかけて縦傷があり、(まぶた)が開かなくなっているからだ。


昨日、ハーフエルフの“リィバ”が、[光魔法]と[ポーション]について講義してくれたのを、ふと思い出す。


おさらいとして、魔法の場合は“低級/中級/高級/(ごく)級”に分かれている。


一般的に“ポーション”と呼ばれているのは[治癒ポーション]が正式名称であり、“下級/中級/上級/特級”となっているらしい。


他にも、[毒]や[麻痺]に[混乱]などの“異常状態”を解消するといったポーションもあるのだそうだ。


ただ、[魔法]も[ポーション]もランクが低いと、たいした効果は期待できない。


要するに〝止血は出来ても傷は残る〟のだそうだ。


例えば〝腕などを斬り落とされたり爆破されてしまった場合、二度と元には戻らない〟との話しだった。


しかし、【神法(しんぽう)】の治癒系のなかでも“極級”であれば、それを成し遂げたとの記録があるらしい。


あとは、ポーションの最上級で“神薬(しんやく)”とされる[エリクサー]も可能だったようだ。


けれど、[神法]を扱う者が一人もいなくなったのと、[エリクサー]を造る技術が失われたので、どちらも今や“(まぼろし)”となっている。


ちなみに、僕の【神法】は攻撃系なので、無理だ。


リィバは、エリクサーの再現も研究しているそうなのだが、なかなか難しいとのことだった。


さて。


ベルーグに関してだけど……。


彼は、もともと[ダイワ王国]の“師団長”だったそうだ。


二年ほど前に、国内でモンスターの“スタンピード”なるものが起きた。


この時、ベルーグは、右目を怪我しながらも奮闘したらしい。


それもあってか国内の被害は最小限で済んでいる。


最も活躍したベルーグには、既に王となっていた父上から[騎士の(くらい)]が授与された。


なお、爵位は、偉い順に“大公・公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵・準男爵・騎士”となっている。


とにもかくにも。


片目が見えなくなった彼は、転職しようと考えていたものの、僕などの父に引き止められ、城兵になったのだそうだ。


こうした経歴のベルーグは、【剣術】が“肆”で、【打撃術】が“参”との事だった。


僕は、手始めに【剣術】を学んでいく…。



【打撃術】に含まれている“バトルアックス(戦斧)”の使い方も教わり、日陰で座っている。


補足として、[剣]も[斧]も“木製”だった。


どちらの扱いも下手で落ち込んでいる僕に、


「まぁ、ラルーシファ殿下は、そういったスキルを持ち合わせておられないので、まずはこんなもんでしょう。」

「自分も最初は、剣術が“壱”で、打撃術は備わっていませんでした。」


そのようにベルーグが述べる。


「そうなの??」


僕が窺ったところ、


「ええ。」

「ですので、殿下も鍛錬次第では習得できますよ。」

「ま、スキルなどが一番早く進化できるのは、死と隣り合わせの実戦ですが……、さすがに、現時点の殿下を魔物討伐などに連れてはゆけないので、地道に修行しましょう。」


ベルーグが微笑んだ。


なんだか安心した僕は、


「うん。」


穏やかに応じたのだった…。



ベルーグと交代で訪れたのは、30代前半の女性だ。


金色の髪を“お団子”にしており、細長いメガネをかけている。


彼女は、悪戯(いたずら)した姉上を追い掛けていた人の娘だ。


名前を“マリー・ラキリアス”という。


母の方は“メイラ・ラキリアス”とのことだった。


メイラは、リィバの紹介で、リーシア姉上を担当する1人になったらしい。


更に、父上が僕の教育係を選ぼうとしていたとき、メイラが実家からマリーを呼び寄せて推薦したと聞いている。


こういった経緯(いきさつ)のマリーは、攻撃系の【中級魔法】に、【打撃術:参】と【槍術:弐】を、得ているのだそうだ。


【打撃術】には、斧以外にも、棍棒/メイス/モーニングスター/杖/(ムチ)などがあるらしい。


マリーは、なかでも“鞭”を使うのに長けているみたいだ。


ただし、僕が習うのは【槍術】だった……。



休憩を挟んでからの[勉強部屋]で、マリーから世界史などを教わっていく。


今回は“モンスター発生の原因”についての講義だ。


世界には、目視できない[魔素(まそ)]というものが絶えず漂っているらしい。


例外もあるが、洞窟や遺跡などの“ダンジョン”に溜まりやすく、〝濃度が高くなると、魔物が自然と出現する〟との話しだった。


そのモンスター達は、種族ごとに分かれて“縄張り”や“捕食”といった争いを起こすのだそうだ。


これらに敗れたり、新天地を求めたりして、外に出てくる魔物も少なくないのだと。


そうして、森林/山/河/海などに定住するらしい。


かつてベルーグが負傷した“スタンピード”は、〝あるダンジョンに魔素が集まり過ぎた結果〟との事だった…。



小休止後に、【武術】を稽古するため、お庭へと改めて赴く。


指導してくれるのは“お世話係りの筆頭”だ。


彼女は、ボブショートの髪/瞳/猫の耳&尻尾が黒い。


名を“ユーン・バンネル”という。


彼女を除いた“熊・狐・狸・兎”の獣人は、側で待機している。


5名とも20代の容姿だが、実際のところは不明だ。


〝レディに年齢を尋ねるのは失礼にあたる〟らしいので、僕は訊きだすのを控えていた。


全員が何かしらのスキルを持っており、臨時の際には僕を護衛してくれるそうだ。


【武術】に関しては、“肆”であるユーンが特に優れているため、適任とのことだった……。



この日も午前中で修業を終えている。


今後は、休日を取り入れながら、励んでいく予定だ。


とは言え、攻撃系のスキルが皆無な僕にとっては、それなりに厳しい先行きとなるだろう。


でも、まぁ、ベルーグ/マリー/ユーンが、あの二人(・・・・)と違って“まとも”だったのには助かった―。


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