第49話 会商③
平原での実戦を終えた僕らは、魔女さんの【瞬間移動】で、[大公の館]に戻ってきた。
「次回は、もう少し手強い魔物らがよいな。」
「ラルーシファ殿下とアシャーリーの“神法”や“戦闘スキル”を向上させるためにも。」
ふと口を開いた“ルシム大公”に、
「でしたら、二人の防具を作る必要がありますね。」
「今日に比べて危険性が高まるでしょうから。」
“次男さん”が意見する。
〝ふむ〟と頷いた大公が、
「レオディン殿たちは、備えておられるか?」
僕の“教育係”と“お世話係”を窺う。
「いえ、久しく戦っていなかったので、かつて使っていた品は、とっくに処分しております。」
そのように答えた“魔術師のレオディン”に、
「ボクもです。」
“ハーフエルフのリィバ”が続く。
ここから、それぞれが述べたところ、“片目のベルーグ”を除いたメンバーは、似たようなものだった。
ベルーグは、師団長を辞めたあと、城兵として勤めていたので、甲冑が有るらしい。
「まぁ、この際だから、全員の分を依頼するか。」
そう思案した大公に、
「でしたら、我々のは、こちらで支払いましょう。」
「代金が不足しそうであれば、ライザー王陛下に懇願いたしますので、見積りを渡してください。」
レオディンが申し出る。
「なぁ~に、心配はいらん。」
「“チキュウビストロ”を軸に、あの町の経済が発展するであろうからな。」
「“北の港町”でも店を開けば、かなりのものとなるだろう。」
「さすれば、税金も増えるというものよ。」
なんだか〝良くない政治家〟みたいな顔つきになった大公を、
「職人に発注するにしても、まだ先の話しでしょう??」
「取り敢えず、お昼にしませんか?」
このように促す“次男さん”だった……。
▽
あれから5日ほどが経っている。
その日の午後、[スブキィ]から“長男さん”が訪れた。
お抱えの“男性魔術士”による【テレポート】で。
更には、[ルワーテの店長]こと“ヴォル・リュウス”も見受けられる。
これだけでなく、他に、知らない二人組がいた。
[客間]にて。
「ん??」
「元料理長ではないか?」
軽く首を傾げた大公に、
「ご無沙汰しております!」
お辞儀した“中年男性”が、
「こっちは、私の弟です。」
もう一人のほうを紹介する。
「して??」
「何用だ?」
大公が素朴な疑問を投げかけたところ、説明を始める“長男さん”だった…。
▽
なんでも、[ヴォルの店]が物凄く繫盛していってる事で、“ティミドパーソ兄弟”の所が経営難になったらしい。
それ以外にも、幾つかの飲食店が、同じような窮境に陥りつつあるのだとか。
ただし、[チキュウビストロ・ルワーテ]の近場は、まだ大丈夫とのことだ。
[ルワーテ]の行列に並んだものの、売り切れになって食にありつけなかった人々が、〝その代わりに〟といった感じで入店してくるため。
一方で、[チキュウビストロ]から離れるほどに、お客さんが赴かなくなっているらしい。
〝お腹が空いているので、あまり遠くまでは歩きたくない〟との理由にて。
この兄弟の[リヌボ]という店舗も、そうした状況との話しだった。
“ティミドパーソ兄弟”は、これを打開すべく、恥を忍んで「料理を教えてもらいたい」といった旨をヴォルに相談したのだそうだ。
当初は断ったヴォルではあったものの、半泣きで頼み込む兄弟が、なんだか可哀想になったらしい。
そのため、“大公の長男さん”に伝えた結果、〝現在に至る〟との事だった……。
〝うぅ~む〟と悩む大公に、
「僭越ながら。」
「もともとの計画が成就しなくなるかもしれませんので、こちらで慎重に会議するべきかと思います。」
“細長眼鏡のマリー”が勧める。
「確かに、な。」
納得した大公が、
「数日、待て。」
「悪いようにはせんから、今日のところは帰るがいい。」
こう告げたら、
「何卒よろしくお願い致します!!」
深々と頭を下げる“ティミドパーソ兄弟”だった―。




