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第47話 派生①

俺は、ヴォル・リュウス。


“狼の獣人”だ。


ボサボサのロングヘア/耳/瞳/尾が“ダークブラウン(こげ茶色)”といった特徴がある。


70年以上は生きているが……、人間であれば30代後半あたりの容姿だ。


そんな俺は、かつて、幾つかの国を冒険者として巡っていた。


とは言え、のんびりしたもので、そこまで本腰を入れてはいない。


このため、ランクは[スティール()級]で止まっていた。


ちなみに、“冒険者のクラス”は、高い順から[オリハルコン/ミスリル/ゴールド/シルバー/ブロンズ/スティール/アイアン/ストーン/ウッド/ペーパー]と万国共通で定められている。


さて。


話しを本題に戻そう。


もともとは家業を継ぐのが嫌で飛び出したのだが、歳月が過ぎるうちに両親のことが気がかりになってきたのだ。


いつの頃からか行動を共にするようになっていた仲間、というか、舎弟、みたいな…、ま、パーティーメンバーに帰省を告げたら、全員が付いて来る運びになった。


最初は断った俺ではあったが、慕われていたのが分かったので、正直、嬉しい。


それによって、つい尻尾をパタつかせてしまったのは、内緒だ。


照れくさいので……。


こうして、俺は、久しぶりの故郷に到着したのだった。


そこからは、再会を喜んでくれた親に調理を教わり、店を継いだ。


暫くは好調だったものの、同じ区域に“大公家の元料理長”とやらが現れてから、営業が悪化しだす。


どれだけ凄いのか客として味を確かめに赴いてみたが…、いたって普通だった。


(これで繁盛するのか??)と首を傾げてしまうぐらいに。


おそらく、“(うた)い文句”の効果だろう。


だとしても、俺たちが途方に暮れるようになった事実は変わらない。


悩んだ末に、(店をたたもうか)と思い始めたとき、救いの手が差し伸べられた。


この地の領主様と、大公殿下一族から!


ただでさえ驚いた俺達の目を一層に丸くさせたのは、ラルーシファ王子殿下の存在だった。


なんでも、“王子殿下”と“アシャーリーお嬢様”の計画を成功させるためには、俺らの店が適していたのだそうだ。


王子殿下が[タケハヤ(しま)]にお越しになれている件も含めて極秘のため、詳細を漏らす訳にはいかない。


死刑になってしまう危険性があるため……。


まぁ、少しだけ喋るならば、銀板による“小さめのカード()”を20枚くらい預かっている。


“ニホン語”とかいうものが刻まれているのだが、俺とかにはサッパリ分からない。


〝いつか訪れるであろう人々に、ある条件のもとで渡すこと〟になっていた。


なにはともあれ。


俺達は、アシャーリー様と母君(ははぎみ)の御指導で、改めて調理に関する修行を積んでいく。


お嬢様が考案なさったというものは、何もかもが衝撃的な美味(うま)さだった…。


およそ一ヶ月が経ち、[チキュウビストロ・ルワーテ]として新規開店の日を迎える。


[ルワーテ]の名を残していただけた事には、両親ともども感謝した。


そして、最後の仕上げに[大公家御用達]と書かれた看板が設置される。


下地は紺色で、文字と“大公家の紋章”は銀色だ。


字を読めない民衆もいるため、紋も施したらしい。


また、この御紋は、大公家そのものと、当主様が許可した所しか、使えないので、かなり目を引ける。


実際、こうした看板が設けられる最中から、道行く者たちが興味津々で集まりだした。


店内で待機なされていた大公殿下が、


「ゆくぞ。」


ご長男様と領主様を伴い、外に出る。


俺達5人は、それ続いた……。


扉の前で、


「我は“ルシム=イズモ”である!!」


そう告げられるなり、誰もが〝え?〟〝本物??〟といった感じでザワつきだす。


しかし、


「あの左胸の紋章からして間違いないだろ!」


大公殿下の紳士服に施されている刺繍に気づいて跪いた一人の中年男性に、全員が急ぎ(なら)う。


「皆の者。」

「ここの料理は、どれもが珍しいうえに絶品の味わいである。」

「ぜひ、堪能してくれ。」


このように大公殿下が伝えられたことで、あっという間に列ができた…。


あれから五日、常に満席となっている。


まさに“大盛況”だ。


そうしたなか、ちょっとした問題が起きた―。

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