第45話 交錯するもの⑧
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ボクの名前は、リィバ・シルブ。
ハーフエ…、ま、いいか。
こういった定型に飽きてきたし。
それよりも!
(ラルーシファ王子の教育係になれて本当に良かった♪)と、心から思う!!
[神剣ムラクモ]の真髄が分かったし、[パナーア神様]や[カティーア神様]への拝顔の栄に浴す事ができた。
更には、鍛錬中のアシャーリー嬢に【光属性の神法】を見せてもらえたしね。
願わくば、ムラクモの【閃光貫】も確認してみたい。
いや、寧ろ……、ボクに向かって発射してもらいたいぐらいだ!!!!
王子には拒絶されたうえに嫌われまくりそうだから、言い出せずにいるけど…。
さておき。
アシャーリー嬢の料理は、どれもこれもが美味しい!
なんでも[地球の洋食]というものだとか。
他には〝和食などがある〟らしいけど、アシャーリー嬢は〝専門外〟とのことだった。
ん―、残念。
食べてみたかったけどね。
ちなみに、現在のボクが最も好いているのは[フライドポテト]だ!!
“じゃが芋”の調理法といえば〝焼く〟か〝蒸す〟かの二択しかなったのに……、まさか〝揚げる〟とは!
あの〝ホクホク感〟に“塩”が相まうと、口の中に幸せが広がるぅ~☆ミ
もしも望みが叶うなら、浴槽いっぱいに満たした“フライドポテト風呂”に入ってみたい!!
…………。
想像したらニヤケてきた。
ダメだ! 皆に〝おかしなヒト〟だと勘違いされかねないから、引き締め直そう!!
話しを戻して…。
ヴォル君の所が、遂に新規開店した。
きっと、どの品にも、お客の誰もが驚き感動するだろう。
なんだか自分の事かのように楽しみだ。
そうこうしているうちに、“実戦の日”となった。
敵は[植物型の群れ]だ。
一人で立ち向かうには困難だけど、戦闘経験のある面子がこれだけいれば割と余裕で勝てるだろう。
油断さえしなければ……。
レオディン殿が、挨拶代わりとばかりに、[極級]たる【|バーン・ヴォルテックス《炎の渦巻き》】を使った。
緊張なされていた王子は、マリー殿の勧めにて、[低級]である【サンダー・ボール】を飛ばしてから、少なからず解れたみたいだ。
アシャーリー嬢は、父君によって、落ち着いていく。
【精霊加護】を用いて矢を射ったボクに、
「え??」
「何、今の?」
王子が質問なされた。
これは、エルフ族のみの[特殊スキル]だ。
“光/闇/風/雷/地/火炎/水氷/植物”のいずれかの精霊と契約できる。
[混血]のボクとかは1つだけで、[純血]は2つだ。
[ハイエルフ]ともなれば、4つも扱えるらしい。
なお、【光】は“浄化”で、【闇】は“猛毒”の、効果となる。
それはおいといて。
ボクたちは、魔物を倒しきった。
「レオディンもリィバも、変…、いや、凄かったね!」
「僕、感心したよ!!」
王子に褒められ、嬉しくなったものの、
(へん??)
すぐに疑問が生じる。
ハッ! まさか?!!
“変態”と言おうとなされた??
いやいやいやいやぁ、さすがに気のせいでしょぉ、うん。
……、ボクは王子を信じる―。
▽
俺は、ベルーグ・ゾアノ。
[ダイワ王国]の元師団…、やめておこう。
これは“過去の地位”であり、もはやどうでもいいことだから……。
ラルーシファ殿下の“教育係”になってからというもの、いろいろ巻き起こっている。
特に、[大公の館]に訪れてからは、目まぐるしい。
充実しているので、決して悪くはないが…。
殿下によって[ムラクモ]の能力が判明したし、神々にも会えた。
リィバ殿によれば、[武神様]は〝物凄く強い〟ようだ。
確かに、ちょっとした所作にも隙がない。
できれば本領を拝見させていただきたいところだ。
それだけでも学べるものがあるだろうから。
まぁ、俺が相手するのは嫌だけど。
仮に命がいくつあっても、足りなさそうなので……。
さて。
殿下やアシャーリー嬢に、初代ラダーム陛下と近衛衆が、“転生者”だというのを知った。
このため、アシャーリー嬢も【神法】を備えておられる。
そんなアシャーリー嬢の料理は、どれもが素晴らしい!
これまでの食事は〝腹を膨らませるだけのもの〟だったが、今は違う。
〝堪能する喜び〟があるのだ。
余談になるかもしれないが、現時点での俺にとっては[鶏のカラアゲ]が一位となっている。
エールに合うため、図に乗って食べまくった結果…、胸やけした。
なかでも[コンバットチキン]の肉が用いられた際は、格別の味となる!!
魔物は日常的に戦っているからか、身に弾力があるのだ!
そうしたカラアゲは、[チキュウビストロ・ルワーテ]でも大人気となることだろう!!
……、いかん、つい興奮してしまった。
とかく。
[植物型]との戦闘を迎えている。
平均よりも長めの[ダガー]を払ったり、何かしらの【神法】を発する殿下の動きが、どんどん良くなっていった。
しかし、[アルラウネ]には、いささか躊躇っておられる。
肌が緑色とはゆえ“人間の女性みたいな上半身”のため、どこか抵抗があるのだろう。
こういうのも含めて、俺とマリー殿で補佐していった。
マリー殿の鞭捌きは、かなりのものだ。
彼女は【中級の攻撃魔法】も扱える。
立ち位置としては、左から“マリー殿/ラルーシファ殿下/俺”となっていた…。
敵を殲滅し終えたところで、
「ベルーグ、マリー、援護してくれて、ありがとう。」
「分かってはいたけど、二人とも、かなりの腕前だね!」
殿下が〝ニッコリ〟なされる。
それによって、御無事に初陣を飾られたことに和らいでいく俺だった―。




