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第44話 交錯するもの⑦

我が名は、ルシム=イズモ。


[ダイワの大公]にして[タケハヤの島長(しまおさ)]である。


数年前から引退を考えるようになり、長男に座を譲るべく、いろいろと学ばせることにした。


隠居してしまうと張り合いをなくし、これまでよりも老け込んでしまうだろうが、ま、仕方あるまい。


年齢からして、しんどくなってきておったし……。


そんな儂の楽しみは、【神法(しんぽう)】を備えていたアシャーリーの成長くらいだ。


いや、あの子が作る料理も、生き甲斐の一つではあるが…。


(次第に衰え、迎えが来るのを待つだけになってしまうだろう)と思うようになった矢先の事だった。


ラルーシファ殿下がたが、お越しになられたのは……。


あれからというもの、ほんっとに飽きない日々となっておる!


[神剣(しんけん)ムラクモ]の力を目の当たりにできたし。


[癒しの女神パナーア様]の提案で、飲食店を開く運びになった。


また、[武神カティーア様]の報せによって、アシャーリーの鍛錬回数が増えたのである。


これらが刺激となったのであろう、心が塞ぎそうになっておった儂は、自然と英気を取り戻していた。


諸々、喜ばしい限りだ!!


そうこうしておるうちに、店舗候補が挙がってきた。


代表の“ヴォル・リュウス”を(はじ)めとして、全員が[男性の獣人]である。


彼らは、悪化の一途を辿る営業利益を回復させるため、懸命になる所存のようだ。


こちらとしては、経済効果が見込めるうえ、殿下とアシャーリーの〝前世の友人知人との再会〟が掛かっておる。


しかも、その“元地球人達”は〝誰もが神法を扱える〟との話しだった。


これには〝わくわく〟が止まらん!


どうやら、殿下やアシャーリーの“教育係”に“お世話係”も同じらしい。


余談になるやもしれんが、我々の惑星の名は[ガーア]である。


さておき…。


“ヴォルの店”のために、アシャーリーが新しい調理を試した。


なかでも、儂は、[チーズフォンデュ]なるものに夢中になったのである。


チーズにかような活用法があるとは、驚きだ!!


長男の子供たちと競うようにして(しょく)した結果……、胃もたれした。


最近は若返ったかのような気がしておったが、勘違いだったのを痛感した次第である。


その件は忘れるとして…。


いよいよ、“実戦”を行なうことになった。


なるべく難易度の低い敵を選び、[東の森林]に赴いたのである。


森の中心周辺は、なかなかに手強(てごわ)い“魔獣”が占拠していたり縄張り争いを繰り広げているのが常だ。


よって、森林の外周に棲息しているものらに狙いを定めたところ、[植物型]が出てきおった。


連中は、決して弱くはない。


だが、儂らであれば負けはせんだろう。


かくして、魔物どもとの戦闘が始まった……。


我々の隙を突いて、二体の“マイコニド”と、一体の“アルラウネ”が、アシャーリー達の方へと走って行く。


危険を察した儂は、すぐに追おうとするも、他の魔物らに攻撃され、阻まれてしまう。


しかし、我が次男が対応し、リィバ殿が援護してくれたので、アシャーリーは無事であった。


〝ホッ〟と安堵した儂は、改めて戦いに専念していったのである―。



儂は、レオディン・セル―ロ。


ダイワの王宮魔術…、今は違うな。


ライザー陛下の勅命にて、とっくに王城を離れておる故。


まぁ、細かいことはいいとしよう。


儂としては、ラルーシファ殿下の御傍(おそば)にいられるだけで充分なのじゃから。


いや、正直なところ、欲を言いだせばキリはないのだが……。


ともあれ。


(殿下の教育係になれて本当に良かった)と、つくづく感謝しておる。


何せ、[ムラクモ]による【閃光斬(せんこうざん)】を目にできたし、神々にもお会いしたのじゃからな。


更には、鍛錬中のアシャーリー嬢に【光属性の神法】を拝見させていだたいだ。


おそらく、神法にも〖闇属性〗が存在しておるじゃろう。


これは“元地球人”の誰かしらが備えておるやもしれん…。


なお、〖闇属性〗は、“毒/混乱/麻痺/瞬間移動”である。


ちなみに、魔物のなかには“魅了(チャーム)”や“狂暴化(バーサーク)”といった【スキル(・・・)】を使えるものがおり、少なからず厄介じゃ。


【チャーム】は、精神的に未熟であるほど掛かりやすい。


【バーサーク】は〝発動者の攻撃力のみ二倍になる〟と伝承されてきた。


ま、それらはおいといて……。


アシャーリー嬢の料理は、どれもこれもが美味である。


現時点における儂の好物は[白身魚の塩カラアゲ]じゃ!


〝カリカリッ〟とした外側に〝ふわふわ感〟がある内側の対照さが、儂を虜にさせておーるッ!!


特に、平均2M大で(たら)みたいな姿の[コッドゥン]という“一角魚(いっかくぎょ)”の身を用いた際には、頬が落ちそうなぐら…、あ、いかん。


はしゃぎすると、殿下に引かれてしまう。


自らを制御せねばならねば!


コホンッ。


なんにせよ、儂もまた、幸せである。


こうした日々のなか、魔物らと一戦を交える事になった……。


森に近い平原にて、儂の魔法が炸裂する!!


自画自賛になっても構わん。


流石、儂、じゃ!


ラルーシファ殿下も、ベルーグ殿とマリー殿に補佐されつつ、善戦しておられる。


最初のうちは緊張なされておったようじゃが、どんどん動きが軽やかになっていった。


素晴らしい限りであらせられる。


即席ではあるものの、(みな)で連係したことにより、数分後には魔物集団を殲滅できた。


そこからは、儂と、アシャーリー嬢の教育係である“女性魔術師”とで、敵の死骸を燃やしてゆく。


【火炎魔法】にて。


…………。


処理を終えたところ、


「レオディンもリィバも、変…、いや、凄かったね!」

「僕、感心したよ!!」


殿下にお褒めいただいた♪


ただ、“へん(・・)”という箇所が、よく分からぬが…。


ハッ! もしや!!


片鱗(へんりん)に過ぎなさそうだ)との事であろうか?!


周りが嫉妬するかもしれないのを配慮して、異なる言い回しになされたのだろう。


やはり聡明であらせられる―。

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