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第41話 心組み①

レオディンの魔法によって、僕らや、アシャーリー達は、帰ってきた。


ルシム大公と、アシャーリーの教育係である“魔女”は、一泊するそうだ。


大公は、明日、長男さんを伴い、“狼の獣人であるヴォル”のお店に赴くらしい。


そうして、オープン前の店先で、お客さんたちに挨拶することになっている。


なんでも〝宣伝活動の一環〟なのだそうだ。


これが終わり次第、女性魔術師の【瞬間移動】で、[大公の館]に戻って来る手順となっていた。


ちなみに、ヴォルの所のもともとの店名は[ルワーテ]だ。


それは、こちらの世界で“風土”という意味合いを持つ。


ただ、僕とアシャーリーを中心に相談した結果、[チキュウビストロ・ルワーテ]になっている。


ヴォルや、その御両親は、「お店が存続していけるのであれば変更しても構いません」「創業時からの名を残してくださっていますし」と、了承してくれた。


……、ま、[チキュウ]は、当然、[地球]だ。


[ビストロ]は、アシャーリーの“前世の記憶”によると、日本語で[小さなレストラン]などになるらしい。


なお、[レストラン]は[西洋料理店]と翻訳されるとの事だった。


あと…、[カフェ]は、日本では[喫茶店]とされているけど、実際は[珈琲(コーヒー)店]となるのだそうだ。


ちょっと余談になるけれども、僕は“紅茶”より“珈琲”の方が好きだったりする。


ただ、“コーヒーの木”が存在していないのか、豆すら見たことがない。


今度、僕の“教育係”や“お世話係”に訊いてみるとしよう……。



あれから二日が経った。


午前中に、主だった面子を[第一広間]へと呼び集めた大公が、


「そろそろ、魔物と戦おうと思う!」


どこか嬉々として宣言する。


多くの者が〝おおッ!!?〟と瞳を輝かせて前のめりになるなか、憂鬱そうにするアシャーリーだった。


それに気付かない大公が、


「よろしいですかな??」

「ラルーシファ殿下。」


上座にいる僕を、〝ワクワク〟した様子で窺う。


今さら断る事などできる筈もなく、


「あぁー、うん。」

「了解。」


このように許可したところ、アシャーリーが一層に落胆した…。



小一時間後。


大公や、次男さんなど、“地元民”によって、どこに行くか定まる。


都から東に在る[森林]が選ばれた。


徒歩だと二日ぐらい掛かるらしいけど、魔法を用いれば一瞬だ。


例の魔女さんが、まだ冒険者だった頃に、何度か訪れたことがあるらしく、【テレポート】したのだった。



森の西側に到着している。


といっても、50M以上は離れた位置だ。


優しめの南風が吹くなか、


「では、予定どおりに。」


大公が真面目な表情で告げた。


それによって、僕やアシャーリーの所の“獣人達”が、森林に向かって歩きだす。


今回、アシャーリーの教育係はもとより、父親にあたる“次男さん”も参加している。


父として、娘を心配しての事だろう。


こうした次男さんは、〝多少は戦闘の心得がある〟らしく、左腰に[ツーハンデッドソード(両手剣)]を帯びていた。


なにはともあれ。


作戦は、こうだ。


“黒猫の獣人であるユーン”などが、森に入って、モンスターらに石を投げて挑発する。


魔物たちが怒ったところで、ユーンらが逃げだす。


〝これを追いかけて森林から出てきたモンスターを討つ〟といったものだ。


なかでも“獣人族”は足が速いため、その任に抜擢された。


〝簡単には魔物に捕まらないだろう〟とのことで……。


何故、全員で森に侵入しないのかと言うと、不慣れな僕とアシャーリーには樹木が邪魔になって動き辛いからだそうだ。


要は〝モンスターの餌食になる危険性が高まる〟との事だった。


そのため、「平原であれば広いので、悠々と戦えるし、周りも御両名を補佐しやすいでしょう」といった“片目のベルーグ”の意見が採用されたのだ。


だったら〝別の場所にすれば良かったのでは?〟とも思うけれど、大公などによれば、他の候補地やダンジョンに棲息している魔物は割と手ごわいため、初心者の僕らが生き残るのは、より厳しくなるらしい。


つまり、〝難易度が低めの此処こそが最適〟なのだそうだ。


さて…。


ユーン達の姿が見えなくなったあたりで、


「ラルーシファ殿下も、アシャーリー嬢も、ご覚悟ください。」


ベルーグが口を開く。


「ああ、ん。」

「死んでしまうかもしれないから、ね。」


こう僕が返したところ、


「勿論、それもありますが……。」

「もっと重要なのは〝殺す覚悟〟です。」

「連中もまた“生き物”ですので。」


ベルーグ冷徹に述べる。


それに、僕は、〝ドキッ!〟とさせられた。


側に居るアシャーリーも、同じみたいだ。


緊張が高まっていくのを感じながら、風が強まったような気がする僕だった―。

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