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第40話 二重の意味で進む御飯③

アシャーリーの“教育係”も、5人だ。


まず、ルシム大公が“バトルアックス”や“モーニングスター”などの【打撃術】を指南するらしい。


それから、“50代半ば/七三分けの髪/鼻髭”といった執事さんは、[槍術]と[武術]を教えているのだそうだ。


“馬の白い耳&尻尾/白銀のロングヘア/ブルースカイの瞳”で30代前半に見える女性獣人が、[剣術]を受け持っているとのことだった。


20代半ばといった印象で小柄な“兎でオレンジ色の耳&尻尾/ゆるふわ黒髪ショート”の女性獣人は、[狙撃術]らしい。


あと、“60歳ぐらい/白髪交じりでソバージュみたいな黒色セミロング”の女性が、魔法を担当しているらしいけど…、ま、アシャーリーの場合も【神法(しんぽう)】だ。


とにもかくにも。


このようなメンバーなどが、“長男さんの館”へと【瞬間移動】したのだった……。



あれから約一ヶ月が経っている。


僕は僕で、休日を挟みながらではあるけれども、鍛錬に勉学を怠っていない。


そうした流れのなか、とある午後に、女性魔術師の【テレポート】によって、大公が帰宅した。


現在、僕らは、[客間]に集まっている…。


「明日の昼に開店します。」


報せてくれた大公に、


「こちらも、カード(・・・)の用意が整っております。」


次男さんが続いた。


〝ふむ〟と頷いて、


「つきましては、本日の夕刻、あちらの館に直接(・・)お越しくださいませ。」

「あの者らの料理を(しょく)していただきたいのと、諸々の最終確認がございますので。」


こう伝えてきた大公が、


「無論、お主も一緒にな。」


次男さんに穏やかな視線を送る。


かくして、[スブキィ]に渡る運びとなった僕らだった。



定刻の数分前に、レオディンによって、一階エントランスへと【テレポーテーション】している。


スタンバイしていたらしい“大公家の執事”が、


「お待ちしておりました。」


タキシード姿で頭を下げた。


そんな彼の先導で、僕らは[食堂]へ歩いて行く……。



入室したところ、アシャーリー母子/長男さん家族/領主夫妻&息子さん家族/アシャーリーの教育係が、椅子から立ち上がって、「お久しぶりです」や「初めまして」と、お辞儀する。


「皆、ラクにして。」


声をかけた僕に応じて、各自が座り直してゆく。


ここに、


「到着なさっておられましたか。」


背後より近づいてきた大公が、


「ささ、殿下がたも、お席にどうぞ。」


そのように促してきた…。


僕たちも腰かけたところで、雑談が交わされていく。


暫くすると、コック姿のヴォル達と、この館の給仕らが、“銀製の配膳ワゴン”を押して来た。


足を止めて、帽子を脱いだ“狼の獣人”は、


「お集りいただき、ありがとうございます。」

「アシャーリー様のお陰で、どうにか提供しても恥ずかしくない腕前になりました。」

「これより皆さんに味わっていただきますが、お気づきの点がございましたら、遠慮なくお申し付けください。」

「より一層に精進してまいりますので。」


口上を述べ、お辞儀する。


これに、ヴォルの舎弟……、というか、従業員一同が(なら)う。


そこから、いろいろとテーブルに並べられていった。


なお、お皿はどれも小さめで、載せられている食べ物が割と少ない。


今回は、幾つかの品数となるので、すぐに満腹にならいよう工夫しているそうだ。


ただし、セミハードパンにオニオンスープは、通常サイズとなっている。


お店で提供する際には、定食みたいな形式にするので、お皿は大きめで、量も多くするらしい。


さて。


“おかず”はというと…、お馴染みの“フライドポテト”や“スクランブルエッグ”に、“(アジ)のチーズパン粉焼き/白身魚の塩カラアゲ/アサリのバター焼き”だ。


初めて口にするらしい“領主ファミリー”が、感激している。


余談になるかもしれないけど、領主の奥さんは、60代前半といったところだ。


息子さん夫婦は30代半ばらしい。


孫娘は11歳で、孫息子は7歳なのだそうだ。


ちなみに、全員が細身の体型だった。


……、話しを戻して。


最後に並べられたのは“チーズフォンデュ”だ。


溶かしたチーズ自体は、個々の“陶器鍋”に入れられている。


食材はというと“鶏の唐揚げ/アスパラガス/ブロッコリー/ニンジン/春シメジ/菜の花”だ。


これ(・・)は、僕らも経験がない。


補足として、チーズそのものは、こちらの世界にも、もともと存在している。


地球に比べて種類は少ないみたいだけど。


まぁ、それは置いといて…。


ヴォルの説明で、誰もがスピックを使って味わう。


結果、僕の“教育係”と“お世話係”を中心に、瞳を輝かせた面子が、騒ぎ出す。


なかでも楽しんでいるのは、子ども達だった。


これらの光景に、ヴォルなどが安堵し、アシャーリーは満足そうに微笑んでいる。


「チーズフォンデュの器とスピック、よく有ったね、こっちの世界に。」


僕が尋ねてみたところ、


「いえ。」

「無かったので、お祖父(じい)様にお願いして、町の職人がたに作ってもらいました。」

「何十個も。」

「特注で。」

「お祖父様が〝よくは分からんが、美味い物が食えるのであれば(カネ)に糸目は付けん!!〟と乗り気だったので、助かりました。」


そうアシャーリーが答えた。


「あぁ、それで、一ヶ月くらい掛かったのか。」

「製品が完成するのを待って。」


勝手に納得した僕に、


「いいえ、そうではなく……。」

「ヴォルさんたちが、パンづくりに手間取っていました。」


アシャーリーが、ふと遠い目になる。


この(かたわ)らで、


「成程!」

「こうきたかぁあッ!!」


チーズフォンデュに興奮を隠しきれない大公だった―。

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