第39話 交錯するもの⑥
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儂は、ルシム=イズモ。
[タケハヤ島の長]にして[ダイワ王国の大公]である。
ま、この島は、初代ラダーム陛下が“自治領”と定められたので、およそ五百年に亘って本土との関係は希薄だが…。
とは言え、先祖代々、新しい国王の即位式に参列したりなど、必要最低限の交流は続いておる。
何はともあれ。
儂には子供の頃より憧れがあった。
それは……、【神法】である!
しかし、初代陛下と近衛衆が扱って以来、誰にも再現できておらなんだ。
故に、“幻”とも“御伽話”ともされておる。
儂も、かつては、〝どうにか使えるようにならないものか??〟と試行錯誤してみたものの、残念ながら無駄骨に終わった。
正確には【攻撃魔法】の中級止まりだが…、何か問題でもあるかね?
まぁ、才能を持ち合わせていなかったのは認めよう。
一方で、“バトルアックス”や“モーニングスター”などの【打撃術】は[頂]に達しておる!!
……、うむ!
自慢だ!!
…………。
ん??
〝これ以外のスキルについて〟か?
それは…、あれだ。
平均で[弐]といったところである……。
何が悪い!??
べ、別によかろう?!!
…………、取り敢えず、儂のことは置いといて。
(やはり神法は架空でしかなかったか)と諦めるようになって数十年が経った…。
こうした或る日の事、儂の孫娘の一人である“アシャーリー”が[光属性の神法]を備えておるのが判明したのだ!!!!
儂は、驚くのと共に、喜びに打ち震えた。
「よし!」
「アシャーリーに英才教育を施そう!!」
そのように告げるなり、猛反発されてしまったのである。
なんでも、本人は、「調理を優先したい」とのこと。
これを、儂の次男……、つまりは“アシャーリーの父親”が援護した。
確かに、「跡目争いが勃発しかねません」との主張には一理ある。
致し方なく、ほどほどに修行を積ませる事にした儂であった…。
それから約三年が過ぎたとき、アシャーリーが“カラアゲ”や“ポテトフライ”などを作るようになったのである。
お陰で、これまでの“食”が様変わりした。
どれもが美味である!
まさに至福!!
毎日が楽しみになった折、料理長が〝一身上の都合〟とやらで辞職を願い出てきた。
儂が承諾したところ、意外そうにしたのである。
……、はて??
理由が分からん。
結局、一礼して退室したので、問題はなかろう。
こうした日々のなか、[ダイワの第二王子殿下]が護衛者たちと共に、館に参られた。
現国王陛下の書状によれば、ラルーシファ殿下は[攻撃系の神法]を得ておられるのだそうだ。
アシャーリーだけではなかったことや、二人が同い年であるという共通点に、儂は少なからず興味を抱いた。
が…。
殿下が伝説の[神剣ムラクモ]を鞘から抜かれたという件には、さすがに目を丸くさせられたのである。
更に、殿下の【解読】とかいう[特殊スキル]によって幾つかの事が判明した。
そして、[ムラクモ]は、“真の力”を発揮したのである!
現場に居る誰もが興奮するなか、殿下が体調を崩された。
魔力ならぬ[神力]を消耗しきったらしい。
この後、回復なされた殿下は、“転生”に関して語られたのである……。
そうこうしているうちに、[癒しの女神パナーア様]や[武神カティーア様]が御来訪なされた。
いや、なんか、もう…、次々と奇跡が起こっているとしか思えん!!
生きてて良かったぁー。
儂が人知れず〝しみじみ〟しておったところ、「近い将来に殆どの者が命を落としてしまう」とカティーア様が告げられたのである。
……、それは嫌だ!
せめてアシャーリーの成長を見届けるまでは、まだ旅立ちとうない!!
結果、アシャーリーの鍛錬を倍に増やした。
当初は渋っていた本人も、早死にしたくないため受け入れたのである…。
あれから、長男などに頼んでおった“店舗”と“従業員”を確保できた。
なんだかんだと相談していったところ、アシャーリーが〝長男宅に暫く住み込む〟との運びになったのである。
このため、儂と“アシャーリーの教育係”も居候する旨を提案した。
すると、どうであろう。
アシャーリーが固まってしまったではないか。
うぅ~む、何故だ?
……、ハッ! さては!!
孫想いの儂に感激するあまり、言葉を失ったのだな!??
うん、うん。
そうであろう、そうであろう。
まったくもって〝祖父冥利に尽きる〟というものだ。
では、いろいろと準備を整えていくとするかな。
より素晴らしい未来を掴み取るために―。




