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第37話 会商②

[コンロ]に関しては、僕とアシャーリーが説明してみたけれども、やはり、こちらの世界の住人にはイマイチ伝わらなかった。


まぁ、それは置いといて。


パナーア様が帰られてから一ヶ月が過ぎている……。


これまでアシャーリーは鍛錬の回数が少なめだったので、[戦闘系のスキル]は何も習得できていないそうだ。


けれども、“弓”の扱いは上手いほうらしい。


ルシム大公は、夏が訪れる前の涼しい時期に一度は魔物討伐を行ないたいようだが、孫娘のアシャーリーを心配して決断できずにいる。


そうした折に、[スブキィ]から“ペガサス便”での手紙が大公宛てに届いた。


長男さんが送ってきたもので〝お店と従業員の候補が見つかった〟のだそうだ。


このため、レオディンの【瞬間移動】で、あちらの()に赴くことになった…。



一階のエントランスで。


たまたま通行中だった2人の給仕が、


「大公様!」


慌てた様子で頭を下げる。


〝うむ〟と頷いた大公は、


「儂らが来た事を、息子に報せてくれ。」


そのように指示した。



[客間]にて。


「店舗は、ここから南東に15分ほど歩いた所にあります。」

「長年に亘って経営していたものの、廃業を余儀なくされる状況になっていました。」

「これよりそのお店に向かおうかと思いますので、詳細はあちらで。」


そう語る長男さんだった。


現在は午後二時を回っている……。



長男さんが [ユニコーン車]を手配してくれたので、7分くらいで目的地に到着している。


石造りの店内には、“4人用の木製テーブル”が八つ(・・)設けられていた。


奥の方には[厨房]や[控室]が備わっているらしい。


また、お店の裏は、中庭を挟んで[二階建ての自宅]が在るのだそうだ。


さて…。


各自が椅子に座っている。


ここの代表は[狼の獣人]で“ヴォル・リュウス”という名前の男性だ。


背丈は170㎝あたりだろう。


精悍な顔立ちをしている。


ボサボサのロングヘア・耳・瞳・尻尾は、ダークブラウン(こげ茶色)だ。


40代前半に見受けられるけど、実際は80代らしい。


獣人族の寿命は200歳ぐらいのため、人間よりも老化が遅いのだそうだ。


あと、“30代半ばで小太りの狸・30代前半で痩せ型の馬・20代後半で小柄なリス”といった獣人達が、控えている。


おそらく、容姿に反して倍は生きているのだろう。


ちなみに、全員、男性で、コックの服装だ。


彼らは、そもそも、冒険者だったらしい。


いや、厳密には〝まだ引退していない〟のだとか……。


とかく。


この店舗は、リーダーである“ヴォル”の両親が切り盛りしていたのだそうだ。


一年ほど前、親御さんが2人とも150歳くらいになったので、ヴォルは帰省を決めた。


その際に、彼の仲間、というか…、“舎弟”の三人も付いて来らしい。


ヴォルは、当初、「各自で好きに暮らしていけ」と断ったものの、「他に行く当てがありません」とのことだったので、連れてきたそうだ。


なお、彼らに料理などの知識やコツを教えた両親は、既に引退している。


跡を継いだヴォルたちは、暫くは順調だったらしい。


けれども、一ヶ月半ほど前から(かんば)しくなくなってきたので、〝お店をたたもうか〟と考えるようになったのだそうだ。


彼らによれば、ここから南西に徒歩10分あたりの場所に、ある飲食店が存在しているのだとか。


先月、そこの店主の()が戻ってきた。


なんでも、“大公家の元料理長”との事で、これ(・・)を看板にして(おもて)に出しているらしい。


それによって、客足の多くがそちらに向いてしまい、ヴォル達は経営難に陥ったとの話しだ……。


「もしかして、アヤツか?」

「二ヶ月ぐらい前に辞職した。」


視線を送った大公に、


「きっと、そうでしょう。」


アシャーリーの()が頷く。


「つまり…、カラアゲとかを作れるんですか??」

「それで〝人気店になってしまった〟と?」


リィバが疑問を口にしたところ、


「いやぁ、……、あの人には無理なはずですが??」

「館の料理人たちに伝授するとき、参加していなかった気がしますので。」

「私の記憶違いでなければ。」


アシャーリーが首を傾げる。


少しの沈黙を置いて、


「そのお店は偵察しましたか?」


“細長眼鏡のマリー”が尋ねたら、


「ま、一応は。」


ヴォルが返した。


更には、


「私も領主と共に食べてみましたが、〝いたって普通〟といった感じでしたよ。」


長男さんが述べる。


〝ふぅむ〟と自身の顎髭(あごひげ)を右手で撫でたレオディンが、


「“大公家の元料理長”という肩書だけでも〝客を呼び込む効果が有る〟といったところかもしれませんな。」


このように分析した。


「成程のぉ。」


理解を示して、


「ま、こちらは味に自信がある故、何も問題なかろう。」


そう主張した大公に、


「とりあえず食べてもらえないことには、どうにもなりませんよ。」


“アシャーリーの母親”が意見する。


「う、む。」

「確かに。」


納得した大公ではあったものの、


「ならば如何いたすか??」


〝むむぅ~ッ〟と悩みだした―。

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