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第35話 来訪②

僕らは、食事中に話し合っていく。


結果、アシャーリーの鍛錬と勉学の回数が倍になった。


[武神カティーア様]が仰っていた未来がどのようなものかは想像がつかないけど、簡単には死にたくないので、アシャーリーは渋りつつも承諾する。


まず、アシャーリーが二日連続で稽古などを行ない、二日間休む。


そして、彼女の休日に、僕が鍛錬や勉学を進めてゆく。


逆に、僕の連休中にアシャーリーが修行する。


といった具合に落ち着いた……。



あれから四日が経っている。


[獣人のユーン]と【武術】を訓練し終えた僕は、お世話係達と“食堂”に赴いた。


すると、テーブル席の上座に[パナーア様]が座っていたのだ。


「あ。」

「こんにちは。」


会釈した僕に、


「はい。」

「お久しぶりです。」


パナーア様が微笑んで応じられる。


ざっと室内を見回してみたところ、僕ら以外のメンバーは既に揃っていた。


「殿下、こちらへどうぞ。」


ルシム大公に誘導され、僕も椅子に腰かける。


「何かご用でもあるのですか?」


僕がパナーア様に尋ねてみたら、


「あー、いえ。」

「皆さんに挨拶したら、すぐに帰るつもりだったのですが…。」

「ルシムさんが〝孫の料理をぜひ食べていってください〟と勧められるので、お言葉に甘えることにしたのです。」

「いろいろと興味深いですからね。」


このように述べられた。


「そうですか。」


親バカならぬ“孫バカ”な部分がある大公の振る舞いに納得した僕は、


「ところで……。」

「刑罰は済んだのですか??」


パナーア様に質問してみる。


「ええ、まぁ…。」

「そもそも、父上は〝最低でも一年は謹慎させるべし〟〝他の世界に思念体を飛ばすのも禁止〟と主張なされました。」

「しかしながら、伯母上様が〝巡り巡ってラダームの末裔に会えた〟〝お陰で五百年前の約束が果たされた〟〝ここは私に免じて違う罰にしてあげてくれ〟〝内容は私が決める〟と説いてくださったのです。」

「父上は姉にあたる伯母上様に弱いので引き下がり、お祖父(じい)様も承諾してくださいました。」

「それによって〝ホッ〟とした(わたくし)ではありましたが……。」

「伯母上様は、甘くはなかったのです。」


ふと遠い目になったパナーア様が、


(わたくし)だけで、土を5Mの高さに盛って“ちょっとした山”を形成し、それを自分で壊した後に、改めて作り直す、といった作業を不眠不休で丸一日やらされました。」

「しかも、素手のみ(・・・・)で。」

「その所為で全身が筋肉痛になってしまったのです。」

「本来であれば(わたくし)の能力で瞬時に治癒できるのですが…、伯母上様に〝自然と回復するのを待て〟〝それを含めての罰だ〟と凄まれてしまいました。」

「これによって、(わたくし)は、三日ほど寝込んでしまったのです。」


そう語られた流れで、


「今朝には、かなり動けるようになったので、こうして赴いてみたという訳ですよ。」


穏やかに〝ニッコリ〟なされたのだった。


(んー、……。)

(カティーア様は、武神なだけあって、体育会系みたいだな。)

(絶対に怒らせないでおこう。)


僕が秘かに誓ったタイミングで、館の給仕たちが配膳していく…。



いきなり余談になるかもだけど、アシャーリー母子が必ず調理している訳ではない。


なので、割合としては“こちらの世界の料理”が多くなっている。


今回、パナーア様は、運よく? アシャーリーの新作を食べられる事になった。


「んッん~♪」

「このようなお肉は初めてです。」


至福の表情となったパナーア様が味わっているのは、“ミディアムステーキ”だ。


ソースなどは無いので、塩胡椒(しおこしょう)のみで作ったのだろうか??


まぁ、なんにせよ、およそ10年ぶりのステーキは、僕にとっても喜ばしい限りだ。


「こいつぁ、美味いッ!!」


片目を〝カッ!〟と見開いたベルーグに、誰もが瞳を輝かせて〝うん うん〟と頷く。


「普段のものは結構な硬さじゃが、これは年寄りでも噛みやすい柔らかさで非常に助かる。」


レオディンが嬉しそうに喋ったら、


「確かに!!」


激しく同意する大公だった。


「この“焼かれた野菜”もいいですねぇ。」

(なま)よりも甘みがあって。」


〝ほくほく顔〟になっているのは、[ハーフエルフのリィバ]だ。


そんな“焼き野菜”のレパートリーは“ニンジン/アスパラガス/ピーマン/ブロッコリー”だった。


“オニオンスープ”を飲んでみた[細長眼鏡のマリー]が、


玉葱(たまねぎ)が沢山入っているので(にが)そうな印象でしたが、案外サッパリしていますね。」


満足そうに〝ほぉぅ〟と息を吐く。


ちなみに、パンは“スミット”だ。


こうした状況で、


「これらが“地球の料理”ですかぁ。」

「他の神々にも試してもらいたいところですが、作るのが大変になるでしょうから、追々にしましょう。」

「それにしても……、ほんっとうに来て良かったです♬」

「ここ数日の疲れが吹き飛びました☆彡」


パナーア様が幸せそうにする。


それによって、場が和やかな雰囲気に包まれてゆく。


(こういった意味でもパナーア様は“癒しの女神”なんだろう。)


と思う僕だった―。

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