第33話 連関④
テーブル席の上座にて、ひと口ほど紅茶を飲んだカティーア様が、
「姪のパナーアから話しは聞いた。」
「かつて私がラダームに授けた“神剣”を、使いこなせていないと?」
僕に訊ねられる。
「あ、はい。」
「一度、ビーム、じゃなかった…、光線を飛ばしてみたところ、暫く立てなくなりました。」
「初代様は違ったそうですが??」
「うむ。」
「ラダームは、初めから、日に八回は放っていたな。」
「まぁ、あやつの場合、その時は既に“中級の神法”と“剣術の参”を取得していたからな。」
「最終的には、二十回ぐらい扱えるようになっていたみたいだぞ。」
「え?!」
「そんなに、ですか??」
「……。」
「じゃあ、僕も、神法と剣術が進化すれば、そうなれるという事ですよね?」
「いや、残念だが、それは無理だろう。」
「ラダーム達の前世は“殺すか殺されるのか戦国時代”だったからな。」
「そういう日々を過ごしていた武士たちと、割かし平和な日本で暮らしていた一般人らとでは、精神面に差がありすぎる。」
「そのうえ、ラダーム達が触れたのは、武神である私の神気だ。」
「癒しを司るパナーアではなく、な…。」
「要は、“魂の質”みたいなのが異なるんだよ。」
「結果、君は、ラダームの“四分の一”も使えれば、いいほうだろう。」
こうしたやり取りを経て、再び紅茶を口に運んだカティーア様に、
「あのぉ~、よろしいでしょうか??」
リィバが控えめに挙手した。
「なんだい??」
穏やかに問われ、
「先程の会話から推測するに、神法と剣術を兼ね備えていれば、ムラクモから光線を発することが可能なのではありませんか?」
「初代国王やラルーシファ王子に限らず。」
そのようにリィバが伺う。
「ああ、正解だ。」
「なので、ラダームの“近衛衆”はもとより、そこのアシャーリーでも扱える。」
肯定なされたカティーア様に、今度はベルーグが、
「もしかして……。」
「それらの二つを有していれば〝そもそも抜剣できる〟という事だったりしませんか??」
こう尋ねた。
「もともとは、だったがな…。」
「年老いたラダームが、体調を崩して寝込みがちになった頃、見舞いに来たことがある。」
「そのとき、〝もう長くない〟と悟っていた本人は、私に願った。」
「〝もし、日本での自分の子孫が、同じように転生してくることあれば、その者にしかムラクモを鞘から抜けないようにしてもらいたい〟〝こちらの世界での救いになるように〟と……。」
「私が鍛冶神に依頼して、そうした細工を施してもらった数週間後に、ラダームが亡くなり、ムラクモは遺品の一つとして“ダイワ王国の二代目”に渡ったという訳だ。」
カティーア様の言葉に、誰もが〝んん~?〟と首を傾げる。
察したらしいカティーア様によって、
「なんだ??」
「知らないのか?」
「ラルーシファは、前世においてもラダームの子孫だぞ。」
そう告げられ、〝はいぃッ??!〟と目を丸くする僕たちだった。
「どうやら、そこは伝わっていなかったようだな。」
「…………。」
「日本の武将だったあやつは、守っていた砦を敵軍に襲撃された。」
「しかし、それよりも早く、自身の妻子を逃がしている。」
「妻は、娘を連れて、無事に生家へと辿り着いた。」
「歳月が過ぎ、娘は、婿養子をもらう。」
「彼女の子孫のなかでも、女性達は、どこかしらに嫁いでいったのだが…、そのうちの一つが“日之永家”だ。」
カティーア様に教えられ、
「そう、だったんですね……。」
驚きを隠せない僕ではあったが、
「でも。」
「ムラクモを抜けることに関しては、“贔屓”になりませんか?」
このような疑問を投げかけてみる。
「ま、確かにな。」
「だが、仕方のない事なのだ。」
「こちらとしても“日本の神々”を敵に回したくはないのでな。」
「あの神々は、基本的には大らかで優しいのだが…、怒らせると非常にやばい。」
「何せ、“全宇宙最強”を誇っているからな。」
苦笑いするカティーア様に、
「つまり、どういう意味でしょうか??」
どこか興味深そうにして窺う“細長眼鏡のマリー”だった―。




