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第31話 二重の意味で進む御飯②

アシャーリーと、その母親が、連れて来ていた二名の料理人を伴って、厨房に向かっている。


[客間]に残った僕らには、給仕によって、紅茶と、お菓子が、振る舞われた。


“お菓子”と言っても、スコーンみたいな形と大きさで、〝パンを乾かしてもう一度焼いたもの〟である。


いわゆる“堅パン”であり、保存食みたいな味だ。


お昼の支度が済むまでの間に、ルシム大公の家族を軸として、会話を交わしていく僕たちだった……。



一人のメイドが「準備が整いました」と知らせてくれたので、僕らは[食堂]に赴いている。


ひと足先に到着していたアシャーリー達は、二名の子供に、一名の女性と、談笑していた。


ふと“女の子”のほうが、


「あ!」

「おじぃ様!!」


大公に気づき、駆けてくる。


少し年配の“男の子”も、この後ろに続いた。


「おぉ~、二人とも、元気じゃったか?」


〝ニコニコ〟しながら少年少女を抱きしめた大公に、近づいてきた女性が、


「お久しぶりです。」

「お義父(とう)様。」


柔らかな物腰で会釈する。


「うむ。」

「息災そうで何よりじゃ。」


そのように返した大公に、


「父上。」

「再会を楽しむのは、また後程になさってください。」


長男さんが声をかけた。


「あぁ、そうじゃったの。」

「儂とした事が、つい、うっかりしてしもうた。」


姿勢を正して、〝コホン〟と咳払いした大公が、


「こちらにおわす御方(おかた)は、“ダイワの第二王子”ことラルーシファ殿下であらせられる。」


威厳を示す。


これによって、僕に対し、三名が貴族らしい挨拶を行なう。


なお、長男家さんの家族だった。


30代半ばくらいの奥さんは、“ゆるふわセミロングの白金髪”だ。


12歳の男子は“ライトブラウンのショートヘア”で、9歳の女子は“白金のロングヘア”だった…。



それぞれ、ほぼ同時に“(から)揚げ”をひとかじりする。


「むッ??」


領主と、


「これは?!」


長男さんが、目を丸くした。


お兄ちゃんのほうは、


「おいっしぃーッ。」


瞳を輝かせ、


「はふぅ~。」


妹ちゃんが至福の表情となる。


奥さんは、


「このようなお肉料理は初めてです。」

「なんと形容したらよいのか……、ただただ感動しております。」


驚きを隠せないようだ。


そこから更に、面々が、“ポテトフライ/スクランブルエッグ/野菜スープ/ロール型のセミハードパン”を口に運んでは、〝おッおぉーッ〟や〝むッはぁ~〟など、何かと喜びを爆発させる。


こうしたなか、


「パンとスープも、こっちで作ったの??」


アシャーリーに素朴な疑問を投げかけてみたら、


「いいえ、そこら辺は、いちから調理する時間がなさそうだったので、今朝の残りを“アイテムボックス”に入れてきました。」

「スープは“ストックポット”ごと持って来て、こちらで温め直しています。」


との説明だった。


ちなみに、[ストックポット]とは、[寸胴鍋(ずんどうなべ)]の事らしい…。



“地球の()”を堪能した5人が、〝ふぅ―〟と息を吐き、満足そうにしている。


まぁ、僕らも似たようなものだけど。


「まさか、これほどまでとは……。」


いささか余韻に浸った長男さんが、


「父上が仰せになられていたとおり、お店を開けば繁盛するに違いないでしょう。」


大公に視線を送った。


「で、あろう。」


少なからず得意気になった流れで、


「まずは、ここ“スブキィ”で試して、様子を見たい。」

「軌道に乗った暁には、北の港町“ジィーモ”でも展開していこうと考えておる。」

「噂が広まれば、各国から客が訪れ、かなりの経済効果に繋がるじゃろう。」

「ただ…、忘れてはならんのは、ラルーシファ殿下とアシャーリーの件だ。」


そのように大公が語る。


「何かあったの?」


従兄に尋ねられたアシャーリーが、


「あぁ~、うん、そのぉー、……。」


返答に困ったところ、


「詳しいことは、あとで聞かせるから、今は控えなさい。」


長男さんが優しく諭す。


これに、


「はい、分かりました。」


素直に応じて引き下がる息子くんだった。


「さて…。」

「二人には、できるだけ早く店舗に打って付けそうな物件を探してもらいたい。」

「もし、どこにも無さそうであれば、営業不振で潰れそうな店でも構わん。」

「料理人ごと確保できれば、手間を省けて助かるしのッ。」


そう述べた大公に、


「責任重大ではありますが…、かしこまりました。」


領主と、


「必ずや成し遂げましょう。」


長男さんが、頷く。


「ところで。」

「先程ご馳走になった品々を、たまにでもいいので今後も味わいたいのだけれど……。」

「定期的に、こちらに通ってもらえないかしら??」


長男家の奥さんに窺われ、


「それでしたら、一緒に来ている料理人たちが、厨房で調理法を教えている最中なので、大丈夫ですよ、お義姉(ねえ)さん。」


アシャーリーの母親が状況を伝える。


この発言を受け、〝ぱぁあ~☆〟と幸せそうな顔つきなる“長男さん家族”だった―。


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