第27話 連関③
[癒しの女神]こと“パナーア様”によれば……。
およそ五百年前については、前世で武士だった人々が「本当に生まれ変われるのであれば再び同じ主君に仕えとうございます」と、カティーア様にお願いしたのだそうだ。
それを叶えてあげるべく、“武神カティーア様”は、タケハヤ島…、当時のレナンイセ島の[中央都市]に、全員を転生させてあげたらしい。
ラダーム様は“島長の血筋”で、他の人達を“平民”として。
なぜ島だったのかというと、カティーア様が「なんとなく選んだ」との事だった。
以前の記憶が15歳で甦ったのは、ラダーム様が「その年齢で元服するのが武士の基準なので」と言ったからのだそうだ。
こうして、ラダーム様のもとに集結した“元・武士の一団”が改めて忠誠を誓ったのだと……。
僕らに関しては、「思い出すのは10歳ぐらいでいいんじゃないか?」「早すぎると理解できなさそうだし、遅すぎるとつまらなそうだから」といった意見が多かったとの話しだ。
また、武神のカティーア様には〝戦闘系のスキルを平等に備えさせることが出来た〟ものの、パナーア様は専門外なので不可能だったらしい。
更には「各種族に生まれ変わらせたのは、できうる限り皆さんの希望に応えたからです」「どこに誕生させるかはほぼ無作為でした」との事だ…。
それらの流れで、リィバが、
「よろしいでしょうか??」
パナーア様を窺う。
「はい、なんなりと。」
「ラルーシファ王子とアシャーリー嬢は、かつての御友人がたの詳細を覚えていませんよね?」
「それに対して、ダイワの初代陛下と近衛衆は違ったみたいですが、どのような理由があるのでしょう??」
「あぁー、……。」
「私は、記憶操作系が苦手なのですよ。」
「それを司る神であれば、当然、完璧にこなせますけど…。」
「他には、伯母上様と、私の祖父にあたる“最高神”が、割と得意です。」
パナーア様とリィバが、やり取りを交わしていたところ、
「え?!」
「それって、“ラノース神”ですよね??」
「まさか、そんな続柄だったとは…、初めて知りました!!」
マリーが驚いた。
「最高神……。」
「つまり〝宇宙で一番偉い〟ってことですか?」
僕が疑問を投げかけたら、
「いえ、それは“創造主様”です。」
パナーア様に否定されてしまう。
誰もが〝んん~??〟と首を傾げたところ、
「まず、宇宙と、幾らかの神々が、創造主様によって生を受けました。」
「そこから、更に増えていった神たちによって、沢山の星が作られたのです。」
「こうして、各銀河を担当する頂点が“最高神”と呼ばれるようになりました。」
「ちなみに、それぞれの最高神を、一家眷属が支えています。」
「補足として、こちらの惑星と地球は“別の銀河”です。」
こう語られた。
「となると…、〝この世界には大国主命に建速須佐之男命は存在していない〟という事になりますよね?」
僕が確認してみたら、
「ええ、その通りです。」
穏やかに肯定するパナーア様だった。
「そうなのですか??!」
ルシム大公が目を丸くしたなか、
「どうりで“オオクニヌシ様”と“スサノオ様”についての記録が残っていない筈です。」
マリーが呟く。
「まぁ、そこら辺は、ラダーム様と近衛衆の“前世の地元”に根づいている神々だから。」
そのように僕が述べたところで、各自が納得する。
少しの間を置いて、
「此度、パナーア様は、先程の情報を伝えるため地上に赴かれたという訳ですな?」
レオディンが伺ったら、
「ん~、ま、そのぉー、……。」
途端に歯切れが悪くなった。
「何か不都合でも??」
大公が軽く眉間にシワを寄せると、観念したらしいパナーア様が、
「私には、本来、“異世界転生”を施すのは認められていません。」
「これを行なって良いのは、創造主様と各最高神です。」
「ただし、例外として許可されている神もチラホラいます。」
「こちらの銀河であれば、私の伯母上様のみです。」
「そのため、私は勝手な真似をしてしまったのですが、10年ほど知られずに済んでいました。」
「神々も何かと忙しかったので…。」
「ところが。」
「昨日、ラルーシファさんが神剣の能力を発揮させてしまったことで、ついに悟られてしまったのです。」
「神気を感じ取られたのが原因で……。」
「そこからは犯人捜しが始まってしまいました。」
「私が難を逃れようと黙っていたら、しびれを切らしたお祖父様が“時空神”に命じてしまったのです。」
「〝過去を調べよ〟と…。」
「これによってバレてしまい、父上に激怒されてしまいました。」
「そうして、〝せめて中心人物にだけでも説明して来い〟と天界より投げ飛ばされてしまったのです。」
「それはもう綺麗な“一本背負い”で。」
ふと遠い目になる。
一連を聞き終え、
(このヒトって、いわゆる“駄女神”ていうやつなのかな?)
秘かに思う僕だった―。
[ラノース神]も本作のオリジナルとなります。
現実(地球)の伝承や逸話などには出てきませんので、あしからず。




