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第23話 古来

リィバの要望で、僕は語っていく…。


まず、初代ラダーム様と近衛衆(このえしゅう)は、およそ五百年前の“日本の武士達”だった。


当時、[出雲国(いずものくに)]と呼ばれていた領土の、とある砦に駐屯していたらしい。


砦は小さめながらも、初代様はそこ(・・)の指揮官だった。


ある日のこと、敵が進軍してきたそうだ。


その情報を得た初代様は、急ぎ、“妻と娘”に“料理人などの非戦闘員”を逃がしつつ、主君である[大名]に使者を送り援軍を頼んだらしい。


こうして初代様は砦を守ろうとするものの、武士の数は合わせて151人だった。


それに対して、相手は約五千人。


勝ち目はない。


案の定、“味方の本軍”が到着する前に、砦が攻略されてゆく。


〝もはやこれまで〟と覚悟を決めた初代様がたは、砦に火を放ち、揃って自害なされた。


初代様たちの魂が天へと昇る際に、空中で遭遇したのが、こちらの世界(・・・・・・)の[武神様]だったとの事だ。


なんでも、初代様によれば、その武神様は“思念体”を飛ばし、日本を遊覧なさっていたらしい。


このときは、そうとは知らずに、誰もが〝我々を迎えにわざわざ神が御出(おで)ましになられた〟と感激したのだそうだ。


ここから、神殿の[個室]に連れて行ってもらい、〝真相を聞かされた〟とのことだった。


更に、〝我らを(あわ)れんでか、武神様は、この世界に転生させてくださった〟とも記されている。


その時に【神法(しんぽう)】などが付与されたらしいのだが、詳細は書かれていない。


生まれ変わった初代様は、成長の過程で神法を扱うようになられた。


こうした流れで、“前世の記憶”が甦ったのは、15歳のときだったそうだ。


しかも、かつての家臣である武士達も[タケハヤ(しま)]に転生しており、初代様のもとに続々と集結したとの事だった。


ちなみに、〝全員が同い年〟となっている。


とかく。


初代様がたは、島を制圧しようとする国々を何度となく撃退していった。


それでも埒が明かなかったみたいで、初代様が17歳となった折に、なかでも酷かった[イクアド王国]を奪取して新たに統治するといった方針を固められる。


ここへ降臨なさった武神様に賜ったのが、あの[剣]なのだそうだ。


初代ラダーム様が、いつしか[ムラクモ]と名付けた、例の……。


そこからは、僕や嶋川(しまかわ)さんの件を、皆に伝えていった。



「“こうこうせい”や“しゅうがくりょこう”に“ばす”というものが、なんなのかまでは分かりませんが…。」

「そうした経緯で突発的に亡くなられたとは、ラルーシファ殿下もアシャーリー嬢も、おいたわしやぁ~。」


何故だか涙ぐむレオディンに、


「いや、あくまで“前世”のことだから。」

「今は、もう、大丈夫だよ。」


このように僕は声をかける。


「ところで。」

「お二人も、やはり、武神様によって転生なされたのですか?」


ユーンに質問され、


「さぁ??」

「どうなんだろう?」

「そこら辺に関しては全く覚えてないんだよねぇ。」


そう答えて、


「嶋川さんは??」


[元クラスメイト]に視線を送る僕だった。


「いえ。」

「私もです。」


首を横に振った嶋川さんが、


「あのぉー、……。」

「すみませんが、できれば、“アシャーリー”と、お呼びください。」

「立場がありますので。」


こう発言する。


それを、


「確かに。」

「二人きり、或いは、我々しかいないときであれば、たいして構いませんが…、普段から癖を付けておかないと、公の場で“うっかり”してしまうかもしれないので、お気を付けください。」

「世の中、何かと口うるさい者どもや、何を企んでいるか読めない連中がおります故。」

「隙を与えないよう、ご注意を。」


ルシム大公が捕捉した。


これらの意見に、


「そう、だね。」

「……、うん。」

「了解。」


僕は頷く。


[食堂]が静寂に包まれかけるなか、


「一つ、よろしいでしょうか?」


マリーが僕に尋ねてくる。


〝ん??〟と反応を示したら、


「初代ラダーム国王陛下は、ご自身などの“ニッポン”での名前を記録されていなかったのですか?」


そのような疑問を投げかけてきた。


「どこにもなかったけど??」


僕が教えたところ、


「そうですか。」

「歴史的にも興味深かったのですが、仕方ありませんね。」


そのように返したマリーが、いささか残念がる。


「うぅ~ん。」

「全てが解明されたわけではないけれど…、でも、まぁ、どれもこれも面白い話しでしたね。」


満足しているのは、リィバだ。


「……、ふむ。」

「ひと段落ついたみたいなので、大浴場に赴かれては如何ですかな? 殿下。」

「慣れない旅路や、神剣(しんけん)の性能を試された事で、お疲れでしょうから。」

「今日は早めに、お休みください。」


大公が勧めてきたら、


「じゃ、ラルーシファ殿下が風呂に入っている間、俺らは周囲の警備に当たるとすっか。」


こう提案したベルーグが、立ち上がる。


そんな本人は、お酒の影響で、少なからず“赤ら顔”になっていた―。


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