第214話 ダンジョン探索⑧
オルトロス…。
いつだったか、“ハーフエルフのリィバ”に教わった記憶が、なんとなく甦る。
あれは“ヘルハウンドの進化系”だ。
左腰に帯びている[刃渡り30㎝のダガー]を、鞘から抜きつつ、
(体高や体長は、ヘルハウンドの二倍になるんじゃなかったっけ?)
こうした疑問を僕が抱いたところで、“ドォーゴ竜王子殿下”が、
「あの大きさであればジェネラルですね、きっと。」
「本来はもっと下の階層に居る筈ですが、餌を求めて上がってきたのでしょう。」
「今しがたの竜人四名は、新参冒険者で、思いがけず遭遇し、全滅しかねないと判断して、逃げていたのかと。」
そのように分析する。
僕が納得していたら、魔犬のうち20匹あたりがクチから【火の玉】を放ってきた。
ほんの1秒後、残りの20体が、こちらへと駆けだす。
ヘルハウンドの連携攻撃だ。
なお、先ほど僕の【サンダー・ボール】がヒットした魔獣達は、まだ倒れたまま痙攣している。
それと、“3.5M級のオルトロス”は、あちらの最後尾で様子を窺っていた。
いや、高みの見物といったところみたいだ。
いずれにせよ。
ほぼ同時に迫る【火の玉】とヘルハウンドに、僕は少し焦る。
こうしたなかで、右斜め前の【ファイア・ボール】を、左へのサイドステップで躱す。
流れで、左斜め前から襲ってくる魔犬に、両手で握った[短剣]を払う。
ヘルハウンドは頭を下げて回避しようとするも、僕に近づきすぎていたいので間に合わず、横一文字に額が斬れて、血飛沫をあげながら通過していった。
前線では、ユーンなどの“お世話係たち”が、僕と似たような動きをしている。
ただし、あちらは、魔獣を確実に仕留めていた。
“マンティコアのラバス”がクチから直径20㎝といった【火の玉】を吐く。
こうした【ファイア・ボール】が相殺し、煙が発生して焦げ臭くなる。
その最中、ラバスは、自身に噛み付こうとしたヘルハウンドに、右前足を振り下ろす。
この[鋭い爪]によって、魔犬は顔を怪我した。
一方で、「ぐあッ!」や「うおッ!!」といった声が、いくつか聞こえてくる。
【火の玉】や[物理攻撃]が当たってしまったヒト達だろう。
“イグル”は、
「ぅりゃッ!」
「このッ!!」
[槍]でヘルハウンドを突こうとしているけど、躱されまくっていた。
そうした本人を、
「冷静になれ!」
「俺が援護するから大丈夫だ!!」
彼の父親が落ち着かせる。
僕とかの背後のほうでは、
「追躡。」
“リーシア姉上”が【レアスキル】を発動なさったようだ。
振り返ってみたところ、丁度、姉上が[矢]を射った。
これを避けた魔獣が、姉上との距離を詰めてゆく。
次の瞬間、[矢]が〝グギュンッ!〟とターンして、ヘルハウンドの後首に刺さる。
転がった魔犬を眺めつつ、
「武器を変えたが良さそうね。」
ふと呟かれた姉上は、
「亜空間収納よ、開きなさい。」
[弓]を仕舞って、[鞭]を取り出された。
ちなみに、さっき僕が負傷させたヘルハウンドは“姉上のお世話係”の誰かしらが息の根を止めたみたいだ。
ドォーゴ殿下は、[ハルバード]を縦横無尽に払って、魔獣を次々に屠っていく。
僕が正面を向き直したタイミングで、痺れが解けたらしい10匹のヘルハウンドが立ち上がりだす。
そうしたなか、リィバと“魔術師のレオディン”が詠唱を始める。
これらを成功させてあげるため、“片目のベルーグ将軍”に“細長眼鏡のマリー副将軍”が、邪魔してくる2体の魔犬を牽制するようにして戦っていた―。
現時点での[リーシア=イズモ]
【魔法】
・光属性/闇属性/攻撃系
※どれもが中級
【スキル】
・亜空間収納
※小規模
【レアスキル】
・追躡
敵に当たるまで武器が自動で追跡する
矢以外でも可能
何度でも使用できる
【戦闘スキル】
・狙撃術/剣術/打撃術/槍術/武術
※どれもが[壱]
To Be Continued・・・・




