第210話 談論⑤
更に2日が経っている。
[工場]はどこもスタートしていた。
これらは[チキュウ調味料工場/チキュウ酒造工場/チキュウジュース工場]という名称になっている。
料理はまだ実習中だ。
そうしたなか、僕などは、[合同鍛練]のため、お庭に集まっていた。
空は若干ながら曇っている。
なにはともあれ。
「ヴァイア。」
「相談があるんだけど。」
例の件を“竜王の孫”に伝えていく…。
▽
僕が喋り終えると、
「入手した金は、この国の職人達に発注して通貨を製造してもらう予定なの。」
このように“リーシア姉上”が補足なされる。
「なるほど。」
「では、帰ったら祖父上に話してみよう。」
了解してくれたヴァイアに、「よろしく」と声をかけた僕は、
「それと。」
「スサノオ帝国では七歳から実戦を認めようと考えている。」
そう告げた。
まだ六歳である“妹のエルーザ”が背中を丸めつつ肩を落として〝え~??〟と不服がる。
この状況で、
「イリースはあと数週間で誕生日を迎えますが、実戦に参加するのは難しいかと。」
「まだ基本を身に付けようとしている最中ですので。」
イグルの母が戸惑った。
なお、今回は父親が店番しているらしい。
さておき。
エルーザが姿勢を戻さないまま、
「それでもいくのか?」
「いくつもりなのか?? イリース。」
ジト目を繰り出した。
少なからず威圧された“イグルの弟”は、
「いや、おかあさんがいうとおり、ぼくにはまだムリです。」
「だから、エルーザさまも7さいになるまで、まちます。」
そのように返す。
これによって、僕などの妹が、胸を張りながら、腰に両手を添え、
「わかってるじゃないか!!」
「おまえ、いいやつだな♪」
上機嫌となる。
イリースの賢さに反して単純なエルーザの将来が不安になる僕だった……。
▽
翌日の午後。
揃い踏みした全大臣と、[評定]を開いている。
その場には姉上もおられた。
こうしたなか、さまざまな議論が交わされていく…。
なんだかんだで、〝七歳から冒険者ギルドで試験を受けられる〟〝それに合格すれば実戦を行なってよい〟となった。
ただし、〝王侯貴族のなかには体面を気にする者もいるだろうから子孫が落第する危険性を嫌がりかねない〟〝なので、特権階級の試験は免除する〟〝何歳で実戦を許可するかは、それぞれの家長の判断に任せよう〟という運びにしている。
あと、〝正規兵になれるのはこれまでと同じで15歳からである〟とも。
……、他の件に関する確認事項なども済んだところで、
「皆に言っておくわね。」
「私が評定に顔を出すのは、陛下が13歳になられるまでにしようと思っているの。」
そう姉上が告げられた。
「え?!」
「それは困ります。」
「姉上には、できるだけ長く、お知恵を貸していただきたいので。」
このように僕が述べたら、首を横に振られた姉上が、
「やがて誰かしらが私を疎ましがるようになるかもしれません。」
「それに、陛下と私を支持する者に分かれでもしたなら、派閥ができあがった末に、内輪もめが起きかねないでしょう。」
そう語られる。
「ですが…。」
僕が渋ると、
「リーシア殿下は、ゆくゆく“帝王の相談役”になられるということで、如何ですかな??」
こう“ルシム宰相”が提案してくれた。
異論がなかったのもあって、
「お願いします。」
僕は本心から頼んでみる。
結果、
「……。」
「陛下がそれでよろしければ、お引き受けしましょう。」
そのように承諾してくださる姉上だった―。




