第21話 二重の意味で進む御飯①
それぞれに“唐揚げ”を口へと運ぶ。
「むッ??!」
「なんじゃ!!?」
「これはぁあ―??!」
両目を〝カッ!!〟と見開いたのは、レオディンだ。
これに続いて、
「外のサクサク感と、中の柔らかさとの相違が、もぉう、なんとも!」
マリーが至福の表情を浮かべた。
他のメンバーも〝ぬおぉ~ッ!!〟といった具合に感激している。
更には、
「こちらの“お野菜たくさんのスープ”も素晴らしいです!」
「初めて体験しました!!」
声をあげたユーンに、お世話係達が〝うん うん〟と首を縦に振った。
「なんだ?! このパン!!」
「いつものよりか柔らけぇ!」
「しかも、ほんのり味が付いてるぞ!!」
ベルーグもまた驚きを隠せないでいる。
別に僕が作ったわけではないけれど、彼らの反応に喜ばしくなっていたところ、
「どうです??」
「こちらの世界では手に入らない材料もあったので、日本で食べていたのと比べると劣ってしまうんですが…。」
“嶋川由美さん”こと“アシャーリー=イズモ”が心配そうに窺ってきた。
「いや、大丈夫だよ。」
「どれも美味しいから。」
お世辞ではなく本音で答えた僕に、
「良かったぁー。」
アシャーリーが安堵する。
そうしたタイミングで、
「すみません。」
「キャベツやトマトの“添え物”はまだ分かるのですが……、このレモンを切ったのも食べないといけないんでしょうか?」
リィバが質問した。
「あ、いえ。」
「レモンは、こうやって…、お好みで唐揚げに掛けて召し上がってみてください。」
アシャーリーが実演してあげるなり、僕の“教育係”と“お世話係”が一斉に真似しだす。
改めて食べたリィバが、
「お!」
「味わいが変わった。」
「ん~、これもいいですねぇー。」
〝にこにこ〟している。
彼以外の面子も満足そうだ。
「しっかし、カラアゲってやつは、エールに会うなぁ。」
こう述べたのは、ベルーグだった。
なお、“エール”というのは、地球でいうところの“ビール”みたいなものらしい。
僕は飲んだ事がないので、よくは知らないけれど…。
ちなみに、この世界では、15歳からの飲酒と喫煙を許可している国が多い。
種族によっては10歳で認められているそうだ。
かつてマリーに聞いた情報によれば。
それはさて置き。
「あ。」
「“おかわり”あります?? どっちも。」
このように尋ねたベルーグに、
「ええ、勿論ですよ。」
「どれも多めにご用意してありますので、皆さんも遠慮なく。」
アシャーリーの“母”が微笑む。
それに対して、誰もが瞳を〝キラリィ~ン☆〟と輝かせたようだ……。
▽
数十分が経ち、
「ふぅー、食ったぁ~。」
「そして、飲んだなぁー。」
ベルーグを中心に、[ダイワ王国]の顔ぶれが、天井を仰ぐ。
ルシム大公や、アシャーリー親子は、嬉しそうにしている。
この流れで姿勢を正したマリーが、
「そう言えば、ラルーシファ王子とアシャーリー嬢は“転生者”とのことでしたね。」
「あと、初代ラダーム王に近衛衆も。」
僕に視線を送ってきた。
「うん。」
「確かに。」
そのように肯定したら、
「…………。」
マリーが少し考えて、
「大公殿下。」
「もしかして、ですが…。」
「アシャーリー嬢も“神法”を扱えるのではありませんか?」
こうした疑問を投げ掛ける。
「何故それを??!!」
ルシム大公がビックリしたところ、
「真に使えるのですか?!」
レオディンも目を丸くした。
「やはり。」
納得したマリーに、
「なんで、そう思ったんだ??」
ベルーグが訊ねる。
「まず、大公殿下は、“ライザー陛下の書状”を読まれた際に、王子が神法を備えておられる事に関して平然となさっていました。」
「ムラクモの件については驚きを隠せずにおられましたが。」
「それと……。」
「ラルーシファ王子、アシャーリー嬢、初代国王、近衛衆には、“転生”に“チキュウ”や“ニッポン”といった共通点があります。」
「これらを繋ぎ合わせての結論です。」
マリーの説明を受け、
「なかなかの推理力よのぉ。」
〝うぅ~む〟とルシム大公が唸った。
「まさか本当だとは…。」
レオディンや、
「こいつぁまた……。」
ベルーグに、
「ラルーシファ様だけでなく…。」
ユーンなどが、【神法】について唖然とするなか、
「成程ねぇ。」
「どうりで、アシャーリー嬢からも王子みたいに“神秘的なもの”を感じるはずだよ。」
リィバだけが落ち着き払って食後の紅茶を嗜んでいる。
「気づいておられたのですか?」
レオディンに問われ、
「んー。」
「ま、〝きっとそうなんだろうなぁ~〟って。」
「ボクは“ハーフエルフ”だからね、“純血のエルフ”や“ハイエルフ”みたいに、はっきりとは感じ取れないんだよ。」
「なので、確信が持てなかったんだ。」
「それに……。」
「“転生者”だの、“絶品手料理”だので、全員それどころではなくなっていたしね。」
そう語ったリィバが、
「で?? 王子。」
「諸々の詳細を教えてもらえませんか?」
僕に聞いてくるのだった―。




