第209話 来訪⑨
そう言えば、もう一つ思いだした。
うちの料理長に「人手不足になっておりますので、もし可能でございましたら少なくとも5名は雇っていただきとうございます」とお願いされていたのを。
なので、僕は、このことも、[第二広間]に集まっている“屋台の経営者たち”に知らせていく。
ちなみに、都の[北東区/南東区/南西区/北西区]のなかでも〝お城まで片道徒歩15分ぐらいの距離でそれぞれ暮らしている〟という彼ら彼女らへ数日前に[お触れ]を出し、招いていた。
訪れているのは、およそ80名あたりだ。
ま、おいといて。
[飲食店]や[調味料/お酒/ジュースの各工場]と[宮廷料理人]に、割とバランス良く希望者が分かれている。
偏るかもしれないのを考慮していたので、意外だった。
何はともあれ。
明日の朝から研修を始める。
クッキングは、お城に通ってもらい、うちの料理人達が教える事になっていた。
お酒&ジュースに関しては、先生の所のドワーフ族が来てくれる。
調味料は“セゾーヌ”が伝授してくれる運びになっており、それを“アシャーリー”と“カトリーヌ”が補佐する話しでまとまっていた……。
▽
“屋台のヒトたち”が帰り、お昼を済ませた僕は、[大執務室]に赴いている。
時刻は13:00あたりだ。
“リーシア姉上/妹のエルーザ/マンティコアのラバス”も居て、“各お世話係”が壁際に整列して待機していた。
なお、僕の左斜め前にも[机と椅子]が在り、そこで姉上が公務をサポートしてくださっている。
右斜め前には[ローテーブル&何脚かのソファー]が置かれていて、妹がお絵描きしていた。
この側の床では、ラバスが伏せて両目を閉じている。
うたた寝しているのだろうか?
さておき…。
姉上が、
「陛下。」
「内戦の終結、全大臣の就任、飲食店に工場の計画、どれも良きほうに進みましたので、そろそろ帝都を造る作業に取り掛かってよろしいかと。」
「石材に木材と人工は、それなりに確保できていることですし。」
「ただ、国内の採石業も林業も他との商談が決まっておりますので、新都用の石や木々を得るには限りがございます。」
「まぁ、それらは“嘆きの島 ハグーカ”でも入手するとして……。」
「問題は、お金です!」
「もともとの貯えや、当初は敵対していたもののこちらに降った領主達から没収した半分の財産、その殆どを消費する破目になるかと。」
厳しい表情になられた。
「では、どうしましょう??」
僕がお尋ねしたところで、
「天空人族の“浮遊島”でオリハルコンとミスリルを採掘させてもらう、といった方法もありますが…、すぐに売りさばけるかどうか?」
「しかも大量に。」
〝うーん〟と姉上がお悩みになられる。
その数秒後、〝ガバッ!!〟と起き上がったラバスが、身構えた。
「あ。」
「パナーア様、カッティ様。」
僕が呟いたら、エルーザが〝え??〟と反応を示し、
「カッティさまぁ~♬」
嬉しそうに駆け寄りだす。
これに、
「エルーザ♪」
“闇ノ神”がお喜びになられる。
そうしたなか、
「竜王であるラドンさんに頼んで、あちらのダンジョンに潜らせてもらうのがよろしいでしょう。」
「久しぶりの実戦を兼ねて。」
「何せ、あの王国には、金が取れる場所が割と存在していますからね。」
〝ニコニコ〟しながら語られる“癒しの女神”だった。
「あー、成程」と理解なされた姉上が、起立して、
「感謝いたします。」
お辞儀なさる。
僕も、急ぎ立って、
「ありがとうございます。」
パナーア様に頭を下げた。
こうしたところで、
「じっせん……。」
「わたしもやってみたい!」
妹が瞳を輝かせる☆
「いや、エルーザにはまだ早いから。」
そのように僕が告げると、床で仰向けになった妹が、
「やだ!! やだ!!」
「わたしもッ、やるぅ―ッ!!」
〝ジタバタ〟しだした。
これを〝じぃ――ッ〟と見ていた“闇ノ神様”は、エルーザの右隣で同じ態勢になられ、無表情かつ無言で両手両足を動かされる。
その事態に、
「あぁ、真似しないでください。」
「カッティ。」
お困りなられる“癒しの女神様”だった。
すると、
「いっそのこと制度を作り変えられては如何です? 陛下。」
そう姉上が提案なされた。
これが聞こえたらしく、〝ピタッ〟と止まった妹が、寝そべったままで僕を凝視する。
エルーザ、もしかして…、プレッシャーをかけてきているのか??
溜息を軽く〝はぁ〟と吐いた流れで、
「今度の評定で大臣たちと議論するために、内容を考えておくとしましょう。」
そう僕が姉上に述べたら、勢いよく上半身を起こした妹が、〝うっし!〟とガッツポーズする。
すっかり機嫌を直し、
「それじゃ、あにうえにまかせるとして。」
「カッティさま、いっしょにおにわであそぼう。」
「ボールで。」
“闇ノ神様”を誘うエルーザだった―。




