第208話 任命②
二日後の朝。
僕などは、イグル達の店舗に訪れていた。
と言っても、外だけど。
まぁ、理由としては、発注していた[看板]ができたので、その設置を見届けに来たのだ。
ちなみに、[帝王家共同研究店]と書かれている。
これによって客足が伸びる事だろう……。
▽
一週間が過ぎた。
14時頃の[大執務室]にて。
僕らのもとに届いた報せによれば、敵対勢力を全て討伐したらしい。
つまり、〝内戦が集結した〟ということだ。
そうした三日後の夕刻に、[ユニコーン車]や[馬車]で主要メンバーがお城に集まった。
“ラグール叔父上”と、何名かの領主だ。
帝王家の一員である叔父上は別として、領主たちには残っていた[大臣職]に就いてもらう…。
♢
まず、日本における[農林水産大臣]は、こちらでは[農林大臣]と[水産大臣]に分かれている。
地球と違って魔物が存在しているので、農業や林業に水産業などが被害に遭うときもあるからだ。
特に“野良のモンスター”によって。
なので、別々に対応しないと復旧が遅れてしまうため、歴史上そのようにしてきたらしい。
♢
他に[法務大臣/郵政大臣/交通大臣/厚生労働大臣]を各自に与えていく。
♢
あとは、[商工大臣]だ。
日本では[経済産業大臣]にあたる。
このポストを、“ミチェル・カーリナ女侯爵”に任せた。
僕達の“従叔母”だ。
年齢は30代半ばらしい。
金髪ロングで、瞳は青く、眼鏡を掛けており、凛としている。
かつて、[旧ダイワ王家]たる父方の祖父の妹が、カーリナ侯爵家に嫁ぎ、誕生したのが彼女だ。
数年前に父親が病で亡くなった際に、跡を継いだのだとか。
母親は存命らしい。
そうしたミチェル女侯爵は、婿養子との間に子供が二人いるそうだ。
最西端に治めている地があり、国内でも一二を争う[港町]が存在している。
このため、貿易の統括も行なってもらう。
〝彼女は頭脳明晰で度胸もある故〟とのラグール叔父上の推薦もあって。
♢
人間だけでなく、獣人族やエルフ族にドワーフ族も、大臣になった。
年齢や性別を問わず……。
◆◆
ラグール叔父上は既に自身の領地に帰還している。
以前“ライニル叔父上”が使っていたお城を解体し、[屋敷]を造る運びになった。
新たな領主の住まいとして。
それに伴い、敷地の半分を売却する事にもなっている。
広すぎるため。
さておき…。
[玉座の間]で就任式を終え、[第一広間]で宴を催す。
地球の[料理/調味料/ビール/ジュース]を初めて口にしたヒトたちが、大感激する。
今後は国中に広めてゆく旨を伝えたところ、一層に歓喜していた……。
▽
四日が過ぎている。
この都における[飲食店]と[工場]が完成した。
それによって、近辺で[屋台]を営んでいるヒト達を、城内に集めている。
タケハヤ…、[オオクニヌシ島]で、[チキュウビストロ]ができたとき、店舗を構えていた所は下位互換の料理を作れたことで潰れずに済んだ。
一方、屋台では再現が難しかったので、拡張区域の[娯楽施設]や[宿屋]に勤めてもらっている。
また、あちらの中央都市に幾つかの[空き物件]があったらしく、島長である“ルーザー大公”の指示にて、施設もしくは宿にリノベーションされたらしい。
補足すると、“ルシム宰相”は[公爵]になっている。
本人は、もともと「爵位は要りません」と断った。
けれど、僕とかの母方の祖父である“ルファザ侯爵”に「無爵の人物が宰相となると不満を抱く王侯貴族が出てくるでしょう」「そうした者らが謀反を起こすやもしれません」「これを未然に防ぐためにもお受けください」と説得され、承諾してくれたという経緯がある。
おさらいとして、ルファザ侯爵は[総務大臣]だ。
なにはともあれ。
ここの[第二広間]で、僕は、屋台を経営しているヒトらに軽めの試飲試食を促した。
時刻はAM11:00あたりだ。
味わった事のない品々に全員が驚いた流れで至福の表情を浮かべる。
そうした皆に、働くのであれば[料理屋]と[工場]のどちらにするか訊ねる僕だった―。




