第206話 来訪⑧
翌日のお昼過ぎ、“イグル”が【テレポート】してきた。
家族を連れて。
そのため、僕達は[客間]で語らってゆく。
なんでも、彼らの本家にあたる[商会]では、早速、[カカオ]と[小豆]の入手に乗り出してくれたらしい。
これらをゲットすべく、従叔父の人が、冒険者仲間と共に、旅立ったのだとか。
それと、祖父母などから移住の許可が下りたそうだ。
あちらにしても〝アレルギーに効果のある薬が完成するのであれば喜ばしい〟との事で。
このため、都で[ポーション類]を製造販売しているスタッフたちを、お城に急ぎ呼び寄せる……。
▽
[玉座の間]にて。
跪いているのは、“エルフの男性/ハーフエルフの女性/人間の男女”だ。
そうした計四名から、少なからず緊張の色が窺えた。
けれども、召集した理由を知らせたところ、安堵しだす。
どうやら〝何か罰せられるのかも??〟と危惧していたらしい。
前もって伝えていなかったことを反省する僕だった。
ま、いずれにしろ。
彼ら彼女らが、こちらの案を快諾してくれる。
よって、[ユニコーン車]や[馬車]で店舗に向かう僕達だった…。
▽
お店の外で何人かの兵士が待機している。
[ユニコーン車]から降りた“僕/リーシア姉上/妹のエルーザ”に、兵隊が最敬礼した。
すると、眺めていたヒト達がざわつきだす。
次の瞬間、同行してくれている“隻眼のベルーグ将軍”が、
「ラルーシファ帝王陛下と、その御姉妹であらせられる!!」
そう告げた事で、民衆が慌てながら[石畳の道路]に膝を着く。
「……、ラクにせよ!」
このように許可した僕を筆頭に、数名が店内へと足を運ぶ。
なお、“マンティコアのラバス”は、お留守番している。
あと、“各お世話係”の殆ども。
一緒に来ているのは、それぞれのリーダーだ。
僕の所であれば“黒猫の獣人 ユーン”のみとなっている。
訪問者が多くなりすぎるのを避けたかったので…。
▽
建物を気に入ってくれたイグルたちは、近日中に引っ越してくるそうだ。
それを、従業員らが大歓迎した。
今後は、勿論、“イグルたちの父親”が店主を務める。
あと、イグルや従業員は、月に何度か、お城に赴いてもらうことになっていた。
[アレルギーの処方薬]を研究するために。
これに関しては、担当を任せているハーフエルフの“リィバ科学技術大臣”と、いろいろ相談しながら進めてもらう……。
▽
二日が経ち、イグルファミリーは都での生活を始めている。
[家具]や[食器]などはイグルと両親それぞれが【アイテムボックス】に収納して持ってきたらしく、ラノワマ元宰相と繋がっていた“例の親子”が使っていた物は処分したらしい。
また、[ルゥターン王国]で暮らしていたお家には、祖父母が住むようになったのだとか…。
▽
三日後。
主だったヒトが[合同鍛練]で集まった。
暫く汗を流したところで、
「あにうえー。」
「イリースにも、やらせてあげたい~。」
「みてるだけじゃ、つまらないだろうし。」
こう“妹のエルーザ”が声をかけてくる。
おさらいとして、“イリース”は、イグルの弟だ。
父親と隅で見学していた。
それを気にしたらしいエルーザが、僕に提案してきたというわけだ。
ちなみに、妹は、僕の事を“兄様”から“兄上”と呼ぶようになっている。
さておき。
「恐れながら!!」
「イリースは七歳になっておりませんので鍛練などを始めるには少し早うございます!」
父が慌てながら止めに入った。
「だいじょうぶ。」
「わたしもまだ6さいだから♪」
〝ニカッ〟とする僕などの妹に、
「あ、いや、エルーザ殿下は、帝王家の血筋であらせられますので。」
イグル兄弟の父親が、困りだす。
こうしたところに、
「できるだけ戦力を増やしておくのがよろしいみたいですよ。」
突然そのように聞こえてくるなり、この場に居るヒトらが跪く。
状況を理解できずいるイグル達に、
「パナーア様だよ。」
「“癒しの女神”の。」
僕が教えると、驚きながら地面に膝を着いた。
「皆さん、構いませんので、ご起立なさってください。」
そうパナーア様が仰せになられたことで、誰もが姿勢を戻していく。
……、【アイテムボックス】から取り出した[レシピ]を手渡した僕が、
「先程のは、どういう意味でしょうか?」
このようにお伺いしてみたら、
「ん??」
「あぁ。」
「時空神によれば〝今のうちから優秀な人材を育成しておくのがいい〟との事でした。」
「ラルーシファさんが国の制度を変えるのであれば、問題ないかと。」
「何せ、帝王ですからね。」
優しく微笑まれる“癒しの女神様”だった―。
To Be Continued・・・・




