第204話 展望⑧
地上においての模擬戦では、もはや“竜人のヴァイア”に勝てなくなっている。
歳を重ねるのと共に彼の身体能力が他種族より伸びてきているのもあって。
それだけでなく、技術面も向上していた。
ただ、空中であれば、“マンティコアのラバス”のほうがまだ素早いのもあって、こちらが有利に展開できている。
宇留間く…、イグルは[槍]を使うので、ヴァイアとの手合わせが為になっているらしい。
イグル達の従叔父は、“竜人の双子さん”に代わる代わる挑んでは負けていた。
けれども、いろいろと学びがあるらしく、楽しそうだ。
ちなみに、“兎の獣人 カトリーヌ”の兄は、【武術:壱】と【打撃術:弐】を扱える。
さて…。
普段よりも早めに[合同鍛錬]を終わらせた。
カトリーヌが[ケーキ]を作るため。
それを“アシャーリー”が補佐するらしい。
あと、〝バニラオイルを完成させた〟という“セゾーヌ”も、[厨房]に向かっている。
彼女ら以外のメンバーは[第二広間]へと赴いた……。
▽
先生が、アレルギーや薬品に関する[書籍]を幾つか【お取り寄せ】してくれる。
この代金は、イグル兄弟の“父親”が支払った。
そうしたなか、
「今更ですが、製造する場所がないんですよね。」
「僕には。」
イグルが少し困った表情になる。
すると、“ハーフエルフのリィバ”が、
「この城内であれば、ありますけど…。」
僕に視線を送ってきた。
よって、
「ここで暮らす?」
なんとなくイグルに訊いてみるも、
「いえ、さすがに、恐れ多いです。」
彼の父に断られてしまう。
(どうしたものか??)と考え込みだしたところ、
「“例の店舗”はどうかしら?」
「かつてラノワマの配下などが行き来していた。」
このように“リーシア姉上”が薦めてこられる。
それを受け、
「あー。」
「確か、あれからというもの、悪評が広まって、営業が困難になっているんでしたよね??」
僕は記憶を辿った。
おさらいとして、内通者達が暗号とかで連絡していた[お店]だ。
あの親子が[牢屋]に入ったあと、“新たな代表や販売員”を探したものの、いろんなヒトに断られたらしい。
また、〝お客さんが激減している〟とも。
あそこで[ポーション類]を生産している顔ぶれに罪はないのだから、なんとかしてあげたい。
このため、僕は、イグルたちに話していく……。
▽
喋り終えたところで、
「う~む。」
「経営が傾いているとなると、かなり厳しいです。」
「我々にとっては見ず知らずの土地というのもありますし。」
起立している“イグルなどの父”が、眉間にシワを寄せる。
「ま、そうだよね。」
落胆気味に納得しかけたら、
「よろしいですかな? 陛下。」
“ルシム宰相”に伺われた。
「ん??」
反応した僕に、
「チキュウビストロ関連店のような“看板”を用いるのは如何でしょうか?」
「“帝王家御用達”みたいな。」
「そして、暫くは陛下が定期的に訪問なされば、黒字回復するかと。」
そう宰相が述べる。
「いいわね!」
「それでいきましょう♪」
すぐさま姉上が賛成なされたところ、
「一度、持ち帰らせていただいて、構いませんか??」
「親族と相談させてください。」
イグルたちの父が、深々と頭を下げた。
「勿論。」
穏やかに僕が承諾すると、
「もし彼らが移住してくるのであれば、ボクも携わりたいです。」
「地球の薬品を共同開発するのはどうですか?」
「ボク自身とても興味がありますし。」
「それに…、〝国の計画〟という事にすれば、お店に対する印象がより変わって、客足がたくさん伸びるでしょう。」
リィバが〝ニコニコ〟しながら提案してくる。
〝うん〟と頷いて、
「まぁ、イグル達が実際に引っ越して来てくれたら、ね。」
「他にも、あの店舗の従業員に説明して理解を求めないといけないし。」
このようにまとめる僕だった―。




