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第203話 展望⑦

僕は、“宇留間洵(うるま・しゅん)くん”こと“イグル・バジ”と挨拶を交わす。


前世での本人は寡黙な印象だった。


あちらの高校生だった頃、彼と喋った記憶はあまりない。


ともあれ。


宇留間くんが、同行している人々は親族である事を教えてくれた。


逆に、僕は、場に居る面子を紹介していく。


すると、むこうの父母(ふぼ)従叔父(いとこおじ)が、こちらのメンバーの殆どに90度でお辞儀した。


僕たちの大半が地位や身分が上なので。


そうしたのが済んだところ、


「皆は、ここで一緒に暮らしているの??」


宇留間くんが首を傾げた。


これによって、


「いえいえ。」

「実はですね…。」


先生が代表して今日(こんにち)に至るまでの経緯(いきさつ)を簡単に伝えてくださる……。



天を仰ぎつつ、


「神々の件は、にわかに信じられないけど…。」

「僕らを(だま)す理由はないだろうし……。」


〝ん~〟と考え込んだ宇留間くんが、正面を向き直し、


「一応、分かりました。」


そのように告げた。


まだ疑いが残っていそうな彼に、


「いつかお会いできると思いますよ。」


先生が〝ニコニコ〟なさる。


こうした流れで、


「宇留間く…、イグルも僕達の鍛錬に参加しない?」

「それが終わったあと、カトリ……、高瀬(たかせ)さんが“チーズケーキ”と“タルトケーキ”を作ってくれるから、良ければお昼ご飯ともども食べていって。」


そう僕が声をかけるも、


「あー。」

「ま、うん。」

「ありがたく、いただきます。」


イグルの歯切れは悪かった。


「もしかして、お嫌いなんですか??」

「ケーキ。」


このように先生が訊ねられると、


「いや、そうではなく。」

「アレルギー持ちなんです。」

「僕が卵の、弟は小麦の。」


苦笑いしたイグルが、


「でも、他の親族は平気なので、食べさせてあげたいです。」


そう述べる。


「ごめん。」

「よく考えもせず、提案してしまって。」


申し訳なくなる僕に、


「大丈夫…、です。」


イグルが距離感を掴めなさそうにしながら返した。


こちらは“帝王”で、あちらは“平民”のため、無理もない。


僕としてはタメグチで構わないんだけれども……、徐々に慣れていってもらうとしよう。


そうしたなか、


「なんです?」

「アレルギーっていうのは??」


“ハーフエルフのリィバ”が質問してきた。


「ん?」

「あ…。」

「どう言えばいいんだろう??」


僕が困ったところ、


食物(しょくもつ)塵埃(ちりほこり)とか金属などによる、気管支喘息(きかんしぜんそく)に、皮膚炎や粘膜炎など、ですよ。」

「あと、花粉症とかも含まれる筈です。」


このように先生が説明してくださる。


それによって、


「成程。」


理解を示したリィバが、


「あれらは、ポーションであったり、魔法や神法(しんぽう)でも、治せませんからね。」


〝うーむッ〟と難しい顔つきになった。


こうした状況にて、


「僕の“特殊スキル”であれば、地球の薬品類を製造できるみたいなんだけど、知識がないから、何もできないんです。」


いささか困ったようにイグルが語る。


そこへ、


「だったら、先生に本を取り寄せてもらえばいいよ♪」


カトリーヌが意見したところ、


「そうですね。」

「では、あとで、そのようにしましょう。」


先生が穏やかに承諾してくださった。


お城の兵や給仕などのなかにも、アレルギーのヒトが若干いるため、薬が完成すれば喜ばしい限りだ。


こうしたなか、


「料理する身でありながら、うっかりしていました。」

「卵や小麦粉の代用として大豆などがあるので、今度そこら辺のレシピも書くとします。」


そのようにアシャーリーが進んで引き受けてくれる。


更には、


「私も。」


どこか反省した様子になるカトリーヌだった……。



イグルが僕たちとの[合同鍛錬]を行なう。


従叔父の人も〝面白そう〟とのことで加わっている。


一方で、イグルの弟くんは、両親と共に(すみ)で見学していた―。


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