第198話 心組み③
以前、“癒しの女神 パナーア様”が“闇ノ神 カッティ様”とお越しになられた際に教えてもらっている。
“時空神様”による情報を。
それによって、“ラハージャ従叔父”と“ラノワマ元宰相”が、どのくらいの兵数を率いて何時何処に現れるかなど、僕らは知る事ができた。
このため、最も近い領地と、その北側や南側に隣接している領地、これらの領主に書状を送っていたのだ。
神様がたのことを文章で説明しても、きっと信じてもらえないだろうから、〝ラハージャとラノワマが結託し、中央領に進軍しようと企んでいるのが、密偵によって判明した〟といった内容にしている。
三名の領主達は、それぞれの先代が、ラダン兄上側に付いていた。
なので、公開処刑されている。
こちらの事を恨んでいる可能性もあるけど、一応は恭順の意を示した者たちだ。
よって、いつ裏切られるか分からないため、〝余と共に謀反人らを討てば、爵位の降格や、領地と財産の半減を、免除する〟といった旨も、手紙に認めておいた。
〝帝王である僕に本気で忠誠を誓って良き働きをすれば、決して冷遇しない〟〝寧ろ恩賞などを与える〟という考えを、国内に広めておけば、治めやすくなるらしい。
パナーア様、いや、時空神様によれば。
“リーシア姉上”に“妹のエルーザ”も一緒に出陣したがったけれど、危険が伴うので、止めさせた。
不服がる二人を〝僕が留守の間、お城を守ってほしい〟〝未来は確定しているわけではなく、いくらでも変わるので、もしかしたら奇襲があるかもしれないし〟と宥めて。
結果、姉妹ともども納得してくれている…。
そうした経緯での、現在。
天候、やや曇り。
風が軽く吹いており、雨が降りそうな匂いがしていた。
割と離れた位置の敵兵およそ二万は、明らかに動揺している。
もともと、あちらの計画では、[中央領の東部]を味方に引き込んで、軍勢を吸収しつつ、[都]を目指すつもりだった。
このため、主だった領主を懐柔すべく、書状を届けているみたいだ。
そうしたなか、例の三名は、僕に従うことにした。
おそらく天秤に掛けただろうけど。
……、とかく。
ラハージャ従叔父&ラノワマ元宰相の連合は、いつでも戦を始められるよう陣形を整えた兵隊が正面に待ち構えていたのだから状況を理解できずにザワついてもおかしくはない。
ここへ、“マンティコアのラバス”によって宙に浮いた僕が、
「余は、ラルーシファ=イズモ!!」
「帝王である!」
「余を暗殺しようとしたり“兄ラダン”を操ったラノワマと、帝位を簒奪する魂胆のラハージャを、許さん!!」
「投降する気のある兵は、武器を捨て、両膝を着き、頭の後ろに両手を回せ!」
「さすれば命の保障を約束する!!」
「そうしない者らには容赦せん!」
そのように告げた流れで、息を〝すぅ―ッ〟と吸って、
「突撃ぃ――ッ!!」
軍勢に下知する。
これを受け、多くの兵が「ぅおお――――ッ!!!!」と声を発しながら敵に向かって駆けだす。
そうして、殺し合いとなった。
メンバーの殆どは人間だけれども、なかにはドワーフ系やエルフ系に獣人がチラホラいる。
あと、むこうの軍には、戦闘を放棄する者らがいた。
なんにせよ。
魔物とは異なる存在が血飛沫を上げて死にゆく光景に、少なからず怖さを感じた僕は、いささか震えている。
事前に[将軍かつ軍部大臣]である“隻眼のベルーグ”に覚悟しておくよう伝えられていたものの、実際に見るのとではメンタル的に違うため、吐きそうになる僕だった。
まぁ、耐えたけど。
なお、[ムラクモ]の【閃光】を残り1回は扱えるけれども、【神力切れ】を起こして立ち上がるのも困難になるので、使用を控えている。
狙われたときに備えて―。




