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第196話 過ぎゆく季節のなかで⑫

あと数日で初夏を迎える。


気温としては、まだまだ涼しいほうだ。


[スサノオ帝国]では、七割近くの領主らが、恭順の意を示す書状を、僕に送ってきている。


以前、ラダン兄上側に付いた事で処刑されたヒト達の遺族は、半数ぐらいが音沙汰ない。


“リーシア姉上”や“各大臣”は〝おそらく、こちらを恨み、敵対する方針で固めているのだろう〟と考えていた。


残りに関しては〝やはり憎んではいるものの、お家存続を最優先にしたのかもしれない〟〝となれば、表面的に従うだけであって、いつ裏切るか分からないため、油断は禁物だろう〟とも語っている。


そうした状況となっているなか、お城の敷地内に[二両のユニコーン車]が入ってきたらしい。


乗っていたのは“ラグール叔父上”と“護衛の者たち”だったそうで、給仕によれば[第一客間]に通したとのことだ。


ちなみに、夕方の4時になろうかとしていた……。



僕などが赴いたら、ソファーに腰掛けていた叔父上達が、床に跪く。


この流れで、


「新国家の樹立、帝王への御即位、ドゥユール王国との同盟、お(よろこ)び申し上げます。」

「誠におめでとうございます。」


叔父上が述べると、護衛の3名が「おめでとうございます」と続いた。


割と強めに〝うむ〟と頷いた僕が、


「ラクにせよ。」


そう許可した事で、「はッ」と応じた叔父上を筆頭に、起立する。


「堅苦しいのはここまでにしましょう。」

「ところで。」

「今日は全員が正装なんですね。」


このように喋った僕に、


「“王家の墓”に参ってきたからな。」


叔父上が穏やかに返す。


なお、[惑星ガーア]には、()だ喪服が存在していない。


ともあれ。


姉上の勧めで、座っていく…。



「ライニルめの居城に攻め込んだところ、妻子と腹心どもを連れて既に逃げておった。」

「置き去りにされていた者らによれば〝今ごろ何処(どこ)にいるのかは不明〟とのことだ。」

「一方で、あそこの家令(かれい)などは、“北の隣国 スコーリ”に亡命したのかもしれない、と予想している。」


そうした叔父上の報告を受け、


「かつては、あの王国との和睦交渉を(にな)っていたのだから、顔が利くでしょうね。」

「その縁故(えんこ)を頼ってもおかしくはないわ。」


姉上が納得なされた。


「ま、そうなんだが……。」

「実はな。」

「あの愚弟(ぐてい)、もともと、いつか謀反(むほん)を起こすために、スコーリとの外交役に立候補したらしい。」

「つまりは、〝その時が来たら援軍を要請するつもりでいた〟との話しだ。」

「しかし、あちらが先に内戦となり、国力が低下したので、無理だった、と。」


このように叔父上が教えてくれたら、


「それって…、〝もう何年も前から画策していた〟という事になるわよね?」


姉上が独り言みたいに疑問を口にされる。


そうしたところで、


「あぁ、間違いなく、な。」

「まったくもって、いけ好かない野郎だ。」

「子供のときから。」


叔父上が忌々(いまいま)しそうにした。


「ラグール公だって、王位を望んで、お祖父(じい)様に激怒されたんでしたわよね??」


こう尋ねられた姉上に、


「あー。」

あれ(・・)は、若気の至りだ。」

「文武両道に秀でていたライザー兄上に憧れ、いつしか〝超えてみたい〟と思うようになった結果、つい、な。」

「その件は、とっくに反省しておる。」


叔父上が〝ふッ〟と笑みをこぼす。


「諸々、理解しました。」

「それにしても、丁度いいときに来られましたね。」

「何せ、およそ1時間後には“カルスム王国”と同盟の調印式を行ない、そこから(うたげ)を催しますので。」

「よろしければ、叔父上がたも、ご列席ください。」


そのように僕が伝えると、


「天空人族か?!!」

「“浮遊島(ふゆうとう)”の??!」


おもいっきり驚いて、


「〝一年の九割ほどを宙で過ごしているというのもあって、他国に殆ど干渉しない〟と、大昔から知られていたが……。」


自身の腕を組みながら〝うぅ~む〟と唸る“ラグール公爵”だった―。


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