第194話 来訪⑦
あれから三日が経った午前。
[合同鍛錬]のため、いろんなヒト達が城内に集まって来る。
そうしたなかで、“アシャーリー/セゾーヌ/兎の獣人 カトリーヌ”は[レシピ]を、“先生”が[調理器具]や[設計図]を、持ってきてくれた。
“神様がた”や“天空人”に渡すための物だ。
天空人にあげるのは【同盟】を結んだあとになるため、
「なんか、ごめんね。」
僕は“アンヌ”などに謝りながら【亜空間収納】に品々を入れていく。
「いえいえ。」
「そういう約束ですので、お気になさらないでください。」
優しく微笑むアンヌの可愛さに〝キュン〟とさせられる僕だった……。
▽
午後。
僕は、姉上と共に、[大執務室]で仕事している。
ふと[豪華絢爛な柱時計]に目を向けてみたら、PM14:55あたりになっていた。
こうしたところへ、“癒しの女神 パナーア様”と“闇ノ神 カッティ様”が【テレポート】で現れる。
僕と姉上はもとより、暇そうにしていた“妹のエルーザ&マンティコアのラバス”や、待機している“各お世話係”が、気づく。
ラバスが若干ながら身構えるなか、
「カッティさまぁ~♬」
再会に妹が喜ぶ。
一方で、
「エルーザ♪」
“闇ノ神様”もまた嬉しそうにしておられる。
僕や姉上が急ぎ起立すると、
「帝王への即位や、竜王との同盟など、諸々、おめでとうございます。」
パナーア様が穏やかに寿いでくださった。
「ありがとうございます。」
深々と頭を下げた僕に、姉上と“各お世話係”が倣う…。
▽
僕らは[第一客間]へと足を運んだ。
そうして、冷たい[珈琲]や[紅茶]と、 [苺のショートケーキ]が、配膳される。
[ケーキ]には、僕の姉妹だけでなく、パナーア様とカッティ様も、瞳を輝かせた☆
▽
食べ終えた女性陣が、至福の表情で余韻に浸っている。
ラバスは欠伸していた。
【アイテムボックス】をオープンした僕は、取り出した[調理関係の代物]を、
「どうぞ。」
パナーア様に奉る。
「まぁ、まぁ、すみませんねぇ~。」
「みぃーんな楽しみにしていましたので、助かりますぅ~。」
〝ニコニコ〟なさったパナーア様が、
「お礼に、“時空神”に見てもらった情報を提供しましょう。」
「……、まず、貴方がたは、国内の領主さんたち殆どに、お手紙を送ったそうですね?」
「こちらの現状はもとより、恭順や降伏を促すなど、何かと認めたものを。」
このように伺ってこられた。
それに、
「はい。」
僕は頷く。
あの“男性魔術士”を投獄した後に、“僕/姉上/数名の大人”で作成したものだ。
ま、以前にも、信頼できそうなヒト達には、僕の下に付くよう、書状を出したけど、返答は一つもない。
おそらく、判断に迷っているか、未だ届いていないのだろう。
こうしたなか、今回は、敵対勢力にも、郵便で配っている。
〝都で執行した公開処刑〟や、〝帝王の家臣になれば死罪だけは免れる〟〝爵位の降格、領地と家財の半分を没収、それだけで済ませてやろう〟といった旨などを。
父の弟で三男にあたる“ライニル叔父上”と、“ラノワマ元宰相”は、身分の永久剝奪や、〝命をもって償わせるべし〟などの方針が、評定で決まっていた。
それらを踏まえ、
「やがて、東方領は、六割ぐらいが、ラルーシファさんに服すみたいです。」
「中立を保っているヒトたちも含めて。」
「その動きで切羽詰まった“従叔父さん”と“元宰相さん”が、ラルーシファさんを討とうと、画策します。」
こうパナーア様が説明してくださる。
それには姉上が、
「争っている“ラハージャ”と“ラノワマ”が手を組む、ということですか??」
僕より先に反応なされた。
この流れで、
「ええ。」
「ここからは、それについての詳細を、お聞かせしましょう。」
「とは言え、未来は変わりますので、絶対ではありませんが。」
パナーア様が告げられる。
側ではカッティ様とエルーザが友達かのようにお喋りしており、ラバスは床で〝ウトウト〟していた…。
▽
「――、それと。」
「〝遷都するのであれば、北東の候補地が最も良い〟との事でしたよ。」
そうパナーア様が締め括られる。
「了解しました。」
「いろいろと教えてくださり、感謝いたします。」
僕は当然ながら、姉上も、お辞儀したところで、
「では、そろそろ戻りましょうかね、カッティ。」
パナーア様が従姪に声をかけられた。
ちなみに、“従姪”は“じゅうてつ”や“いとこめい”と呼ぶ。
とにもかくにも。
満足げにお帰りになられる“二柱”だった―。




