第193話 真相④
僕が“帝王”に即位してから二日が過ぎている。
お昼を終えた数十分後。
[自室]に届いた報せによると、何人かの兵士が、ある者を連行してきたらしい。
例の[ポーション店]を張り込んでいた際に、【テレポート】で現れた“魔術士”を、捕まえたのだそうだ。
これによって、控えていた“お世話係たち”や、“マンティコアのラバス”と共に、[玉座の間]へと向かう僕だった…。
▽
上半身を麻縄で縛られ、床に両膝を着かされている男性は、40歳あたりだろう。
その左右と背後に計四名の兵が佇んでいる。
男を逃がさないために。
こうした状況の魔術士がラバスに怯んでいたところへ、“リーシア姉上”と“妹のエルーザ”が、それぞれの“お世話係”を伴って訪れた。
この流れで、
「“ラノワマ元宰相”の配下に間違いないわね?」
姉上が訊かれる。
「ん??」
「もと?」
首を軽く傾げながら呟いた男性に、
「あぁ、まだ知らないわよね。」
「いいわ、教えてあげる。」
[スサノオ帝国]と[オオクニヌシ島]や、[新しい各大臣]に、[竜人のドゥユール王国]との同盟を、簡略的に説明していかれる姉上だった……。
▽
「なんと…。」
男が目を丸くする。
おそらく、竜王達が僕の味方に付いていることが、なかでも特に驚きだったのだろう。
そんな魔術士に、
「ところで。」
「ラノワマは、今どうしているのかしら??」
「正直に答えたが身の為よ。」
姉上が問われた。
少し考えた男性が、意を決したかのように語りだす。
〝このまま元宰相に従い続けるのは得策ではない〟と思ったのかもしれない。
なにはともあれ。
現在の[東方領]が判明していく……。
▽
男によれば、あちらの四割を元宰相が押さえたそうだ。
三割は、父上などの従兄弟である“公爵”が手中に収めたらしい。
僕らにとっては従叔父にあたる人物で、名を“ラハージャ”という。
「正義のために謀反人ラダンを誅す」として挙兵したらしいけど、実のところは〝王座が欲しいだけ〟みたいだ。
こうしたラハージャ公爵と、ラノワマ元宰相が、[東方領]の覇権をめぐって争っている、との話しだった。
残りの三割は中立を保っているらしい。
なお、元宰相は、ラダン兄上が既に亡くなられている事を把握しているものの、その件は隠しているのだとか。
これに、
「公表すると離れていきかねない者たちが多々いるからでしょうね。」
と、姉上が推測なさる。
「ぼ…、余からも確認しておきたいことがある。」
「そなたは、もしかして、約二年前、この城の庭で余などに“爆発の玉”を放った者ではないか?」
なんとなく魔術士に探りを入れてみたら、
「……、はい。」
観念したように頷いた。
当たっていた事に内心ビックリする僕とは対照的に、
「それは万死に値するわね!」
姉上が怒り混じりで述べられる。
「誠に申し訳ございませんでしたぁーッ!!」
[レッドカーペット]に額を付けて謝罪した男性が、
「全てはラノワマ閣下の指示によるものなので、どうか命だけ御勘弁をーッ!」
そう懇願した。
いささか哀れんでしまい、
「面を上げよ。」
このように促した僕は、
「やはり、余の暗殺を企てたのは元宰相か??」
「だとすれば、“毒矢”に刺さったのは自作自演だな?」
話題を変えてみる。
すると、
「左様にございます。」
あっさり肯定した。
んー。
元宰相に忠誠を誓っているヒトって殆どいないのだろうか??
逆に心配してしまう。
ま、同情はしないけれど…。
更に聞いてみたら、僕の殺害に失敗したメンバーは、元宰相の判断にて、身を隠したそうだ。
父上による捜査が厳しくなったので。
暫くしてそれが緩まってきたところで元宰相に言われ、僕が何処に避難しているのか国中を調べ回ったらしい。
ちなみに、[旧タケハヤ島]に渡っていたのは盲点だったようだ。
[イズモ旧王家]と[大公家]が、あまり交流しなくなっていたのもあって……。
「成程ね。」
「まぁ、いろいろと白状したから、死刑は免除してあげましょう。」
そう喋られた姉上が、
「〝ひとまず投獄する〟ということで、よろしいですね? 陛下。」
僕を窺われた。
「え??」
「あ、はい。」
承諾した僕は、
「そのように致せ。」
兵達に告げる。
これに、「はッ!!」と応じる四名だった―。




