第192話 交錯するもの㉑
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私は、マリー・ラキリアス。
“ラダン王子”の造反には少なからず動揺させられました。
ここから“リーシア王女”が手を打っていかれます。
そうした王女と、私の親である“メイラ”が、口論となったのです。
迂闊に「祖母と孫娘といった感じ」みたいな例えをしてしまったところ、怒りの矛先がこちらに向きました。
失敗です。
けれども、秘かにお慕いする“隻眼のベルーグ殿”が、私を庇ってくださったので、ある意味では成功だったのかもしれません…。
大公家の配下に“初代ラダーム王に仕えた近衛衆の末裔”がそれなりいました。
歴史的に興味を惹かれる私です!
[ダイワ王国]に渡ってから、いろいろと質問させてもらいました……。
夜襲に遭うも、無事に解決し、北上していきます。
この流れで、“ラドン王”がたの竜の姿に、目を丸くしつつ、固まってしまいました。
“兎の獣人 カトリーヌ嬢”によれば、日本などでは〝フリーズする〟と表現されるそうです。
それはさておき…。
王女が、ベルーグ殿を「将軍に」と提案なされました。
更には、ユーン殿が、何故かしら私のことを[副将軍]に推挙したのです。
戸惑いはしましたが、ベルーグ殿との距離を縮めていけるかもしれないので、拝命させていただきます。
すると、ユーン殿を筆頭に“ラルーシファ王のお世話係達”が上機嫌で耳と尾を〝パタパタ〟させました。
これはもう、私がベルーグ殿に想いを寄せている事がバレているに違いありません。
そっとしておいてもらえるよう頼むべきか悩みどころです。
私の勘違いだった場合、それがきっかけで知られてしまうので、ここは様子を見るとしましょう……。
お城に辿り着きました。
ラルーシファ王がたの兄君が自害なされたそうです。
〝御両親も既に〟との話しでした…。
王の誕生日を祝う会が催されます。
潰した茹で卵とマヨネーズを混ぜた[スパゲッティ]に嬉しくなる私です♪
カトリーヌ嬢に〝ケーキの他にも玉子を使ったお菓子はないのか〟尋ねてみたら、[プリン]というものがあるそうです。
“魔術師のレオディン殿”や“ハーフエルフのリィバ殿”にも何かしら作る約束をしていたので大変でしょうが、楽しみにしています……。
リーシア王姉が[遷都]する旨を告げられました。
そこから、私は、[伯爵]の地位を母に譲る一方で、[軍部副大臣]の任をお受けします。
〝ベルーグ殿と二人きりになれる時間が増えるかもしれない〟と、期待したのもあって。
当然、公私混同しすぎないよう心がけます…。
ラルーシファ帝王のもと、次の段階へと移行しました。
[スサノオ帝国]に[オオクニヌシ島]としての新たな出発です。
これに伴い、気を引き締め直すとしましょう―。
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私は、ユーン・バーンネル。
“黒猫の獣人”にございます。
ラダン様のご謀反には言葉を失いました。
それがきっかけでラルーシファ様が“国王”になられたとはいえ、手放しでは喜べません。
あまりにも不謹慎なので……。
リーシア様のお考えで、およそ1年ぶりに本国へと戻った私たちは、侯爵であられる“ルファザ様”とも団結し、[王都]を目指します。
こうした道中に、夜討ちを仕掛けられてしまったので、その黒幕である“モガン”とかいう子爵の[邸宅]に乗り込んだのです。
階段を駆け上がった勢いで跳んだ私は、子爵の左顔に〝右の蹴り〟を見舞います。
ラルーシファ様の命を狙うといった愚行は許し難いため、首の骨を折ってやろうかと思いました。
ですが、ラルーシファ様は望んでおられないでしょうから、加減してあげた次第です…。
“マンティコアのラバス”に跨り、空中にて、王位を継承なされたことを伝え、【閃光貫】を放つお姿は、勇壮にございます。
そうしたなか、数体の竜に、釘付けになってしまいました。
誰もが、テンション上がったり、フリーズしたり、しております。
私などの“お世話係達”は、平静を保とうとしたものの、つい興奮してしまい、耳や尾が自然と〝パタパタ〟しまくっていました。
全員まだまだ修行が足りません。
しかしながら、さすがにあれは無理というものです。
ま、おいといて。
陸地でラバスから降りられたラルーシファ様に、“天空人のアンヌ様”が「ご立派でしたよ」と声をかけられました。
ラルーシファ様は照れながら「ありがとう」と応えられます。
なんだか微笑ましいです……。
[副将軍]にマリー殿を薦めてみました。
ベルーグ殿との仲が進展する事を願って。
ただ、これ以上お節介を焼くのは止めておくべきでしょう。
お二人が意識しすぎるようになって、それが原因で結ばれないかもしれませんので…。
“ライザー様”と“エルシファン様”に、ラダン様が、崩御なされました。
強まる雨は、ラルーシファ様がたの心を映しているかのようで、切なくなる私です……。
私は[女男爵]を、お世話係の残る4人は[準女男爵]を、授かりました。
身に余る光栄に、ただただ感謝するばかりの一同でございます…。
[苺のショートケーキ]が美味しいです♬
お城の料理人たちによれば〝イチゴは野菜〟とのことでした。
なんでも[草本性]とやらに分類されるのだとか。
ちなみに、果物は[木本性]だそうです。
何はともあれ……。
ラルーシファ様が“帝王”に御即位なされました。
[冠]と[赤いマント]を装着して宣明なさるお姿には感慨深いものがあります―。




