第190話 交錯するもの⑲
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我は、ラバス。
“マンティコア”である。
主が姉妹などと再会してから、慌ただしくなった…。
なんという事であろう。
“ルファザ”とかいう主がたの祖父の所に赴いたところ、我を撫でる者が新たに加わってしまったではないか!
“エルーザ”と共に我に触れておるのは“ルーシー”とかいう小娘だ。
兄の“ファルン”とやらは、おとなしく“リーシア”の話しを聞いておるというのに。
ま、別に構わんがな。
こうした2人は、主などの“従兄妹”らしい。
それがどういうものなのかイマイチよく分からん我ではあったが、あとあと主が説明してくれたことによって理解できた。
主を始め、いろんな者が何かしら教えてくれるので、我の知識は増えておる!!
むっふん!
……、さておき。
我らは、主が生まれ育ったという[ダイワ王国]とやらに渡った。
主の命を狙う無礼者らを成敗したりしつつ目的地へと向かう。
このような日々を過ごすなか、ハイドワーフなどが改良した[甲冑]を着けてもらった我は、主を背に乗せ宙へと浮いてゆく。
ちなみに、[武器]は“トラヴォグ”が作っておるが、[防具]は“長男のトラウボン”が担当しているそうだ。
いずれにしろ…。
[神剣ムラクモ]なる物を抜いた主が、【閃光貫】とやらを発した。
かなりの力を感じる。
神に匹敵するのではないか?
残念ながら“カティーア”とかいう武神には及ばんだろうが。
それよりも、我の背後で姿を変じている“竜王”などに対して本能的に恐怖を覚える。
特に“ラドン”と闘おうものなら、ほんの数秒で倒されてしまうに違いない。
こう我が考えている一方、陸では“エルーザ/ハーフエルフのリィバ/兎の獣人 カトリーヌ”あたりが「竜だ!!」「竜だぁ―ッ!」とはしゃいでおった。
なお、カトリーヌによって[スイーツ]とやらがもたらされている。
我は、あまり好みではない。
とは言え、嫌いでもないため、常に完食していた……。
[城]に辿り着く。
主がたの両親や兄が亡くなったそうだ。
夜。
[ベッド]で主が涙をこぼす。
心配して近寄った我に、「大丈夫だよ…」「うん、大丈夫」と述べる。
まるで自分に言い聞かせるようにして。
……、あるときの朝。
[便所]から戻ろうとしていた我は、遠くで何やら周りを気にしている人間を見かけた。
もしや“内通者”とかいうものではなかろうか??
怪しすぎるソヤツを捕らえた我に、リーシアが褒美として[カラアゲ]を提供するよう指示してくれる。
嬉しい限りだ♪
それから暫くすると、国の名が変更された。
主は“帝王”とかいうものになっている。
正直、[式典]とやらは退屈でしかなかったが、[宴]は愉快なので何度でもやってもらいたい―。
▽
儂は“レオディン・セル―ロ”である。
“ラダン殿下”の謀反には、愕然とさせられてしまった。
(聞き間違いか?)と疑うほどに。
じゃが、儂以外も目を丸くしておったので、事実だと悟った。
ここから、リーシア殿下が手腕を発揮なさる。
ご立派だ。
無論、御父君の意志を受け継がれた“ラルーシファ王陛下”も…。
“ルシム大公殿下”が紹介してくださったのは“初代ラダーム様に仕えた近衛衆の末裔達”だった。
それには“細長眼鏡のマリー殿”が誰よりも瞳を輝かせる。
まぁ、おいといて。
[南方領]で“ルファザ侯爵閣下”と合流した儂らは、北上していく。
夜討ちを仕掛けてきた不届き者などを懲らしめつつ……。
“巨大な竜”は壮観だ!!
リィバ殿が夢中になるのも頷ける。
しかぁーしッ!
儂にとっては[ムラクモ]から放たれる【閃光】のほうが心躍るというもの!!
[ダイワ王国]が地元の者であれば同じ思いじゃろうて!
……、うむ。
竜にも興奮するわな、確かに…。
ラダン殿下が自害なされた。
これによって、[王宮魔術師統括責任]の座を儂に譲った“バルリック・マハーナ”は、城を去ったのである。
旧友の悲しみが伝わってきた儂も胸を痛めた……。
ラルーシファ陛下の生誕を祝う会が催される。
カトリーヌ嬢を中心に調理したという[苺のショートケーキ]とやらが美味い!!
余談になるが、「和菓子が好きなヒトもいるだろうから、いつか作ってみたい」とのことだ。
なんでも、日本が発祥なのだとか。
どういうものなのかは想像しきれんが、また1つ長生きする楽しみができた…。
ラバスの活躍によって“内通者”が拘束される。
ソヤツが持っていた紙には[暗号]が書かれてあったが、ラルーシファ陛下が読み解かれた。
あの【特殊スキル】がこういう事にも役立つのが判明し、儂は大喜びしたのである♬
すぐに自制したが……。
リーシア殿下が[遷都]なさる意向を告げられた。
更には、新たな[大臣]や[爵位]が発表される。
これによって、儂は[魔法大臣]と[伯爵]になった。
責任が重い。
女性ハーフエルフの“ジア・シエント殿”が[魔法副大臣]として補佐してくれる運びになってはおるが、儂に務め上げられるだろうか??
不安である。
じゃが、(ラルーシファ陛下のためにも必ずや良き働きをしてみせる)と誓う儂であった。
そんなこんなで、[スサノオ帝国]は、門出を迎える―。




