第189話 祝賀会②
[第一広間]にて。
アンヌ達に紹介された“ティアラの女性”は、[浮遊島 カルスム王国]のトップだった。
つまり“天空人の女王”だ。
かなりの品位を感じられる。
一方、“兎の獣人 カトリーヌ”によれば、年配の男女は“祖父母”らしい。
[ビッテマ王国]で冒険者ギルドを経営しているのだとか。
ともあれ…。
正午となり、祝宴が開かれる。
これによって、“妹のエルーザ”とカトリーヌが〝ひゃっほぉ~い♪〟とはしゃぎだす。
“マンティコアのラバス”は嬉しそうに尻尾を〝ブンブン〟させていた。
おそらく退屈していたのだろう。
多分きっと、そうに違いない……。
▽
およそ二時間が経ち、解散となる。
こうしたところで、“天空人族の女王”が、
「私どもとも同盟を結んでいただけませんでしょうか?」
「チキュウの料理と調味料について知りたいので!」
「見返りに、浮遊島でのオリハルコンとミスリルの採鉱を許可します。」
そのように頼んできた。
アンヌの祖母にあたる“ルレア大公”などの説明によると、これが可能なのは原則として天空人のみらしい。
例外的に王が認めれば、他種族でも採掘させてもらえるのだそうだ。
〝カルスムにとっては重要な資金源なので、乱獲を避けるために〟とのことだった。
まぁ、こちらの世界の鉱物は、暫くすると自然に復活するんだけど、それが追い付かなくなると困るので、制限を設けているらしい。
“リーシア姉上”に視線を送ってみたところ、無言で頷かれたので、
「アシャーリーとセゾーヌが構わないのであれば、その条件に応じます。」
こう僕は述べる。
「勿論、二人には報酬を支払うわよ。」
姉上が約束してくださると、両名は再び[レシピ]を書いてくれる事になった。
それによって、天空人たちが喜ぶ。
スサノオ帝国側は、[オリハルコン]と[ミスリル]を入手できる運びになったので、大臣らのテンションが上がる。
こうした展開に、先生を除いたハイドワーフ達が羨ましがった。
しかしながら、
「調理器具、もしくは、その設計図と、交換してもらえばいいのではありませんか??」
「あと、ビールなども。」
先生が思いつかれたことで、親族全員が、
「それだぁ――ッ!!」
声を揃えて活気づく。
すると、
「地球の酒造なら我々も情報を得たい!」
「金であればいくらでも積む!!」
「どうだ?!」
“ラドン竜王陛下”が迫りだす。
圧されて腰が引けだす“トラヴォグ公爵”たちに、
「でしたら、神様がたのぶんも、お願いします。」
僕が発注したところ、
「それでは、儂ら身内で相談いたしますので、数日お待ちください。」
そのようにトラヴォグ公がまとめ事で、一段落する……。
話しは変わり。
カトリーヌ家族の移住に関しては、祖父母がOKしてくれたそうだ。
これは余談になるかもしれないけれど、カトリーヌが作成した[ショートケーキの製法]を、主だったヒトたちが買い取っていた。
雑学として、[短いケーキ]という意味ではないらしい。
〝諸説あるけど、スポンジケーキをソース等と組み合わせたケーキやビスケットなどの総称であり、語源としてはお菓子の原料であるショートニングに由来する〟とのことだ。
〝日本では、個別にカットされたものをショートケーキ、号数やサイズが指定される大きなものをホールケーキと呼ぶのが、いつしか一般的になってしまった〟らしい。
そのため、多くの人が勘違いしているのだ。
僕も含めて。
というのを、カトリーヌが教えてくれた―。




