第186話 漸進⑨
二日後の朝。
お城の[1階エントランス]に、いろんなヒト達が【テレポート】して来た。
ルシム大公とアシャーリーにセゾーヌや女性魔術士さん。
竜人ヴァイアと双子兄妹さん。
ハイドワーフは、先生にトラヴォグ公爵。
天空人アンヌと従姉妹さん。
“兎の獣人”は、カトリーヌに母親。
こうした顔ぶれと“僕/リーシア姉上/妹のエルーザ/各お世話係/隻眼のベルーグ/クレイ・エドガー/マンティコアのラバス”が、[鍛錬場]へと向かいだす。
おさらいとして、クレイは“エルーザの教育係”で男性だ。
なんにせよ。
暖かくなりだした春の屋外を歩きつつ、僕は、トラヴォグ公に[新しい王城&都]の建築について尋ねてみる。
「専門分野である“次男のエベルク”と“四女のフィネルン”が乗り気なので、今のところ問題ありません。」
そのように答えたトラヴォグ公へと、
「ぜひ、よろしくお願いします。」
僕が会釈したところで、
「まぁ、追々の事であって、すぐに取り掛かるわけじゃないけれど、私からも頼みますわ。」
こう述べられた姉上が、
「それと…。」
「陛下。」
「この際ですから、国名も変更するのは如何でしょう?」
「気持ちを切り替えるのと、転生者に分かりやすいように。」
「もう“タケハヤ島”では生活しておられないので、こちらに訪れてもらったほうがよろしいでのは??」
そうした提案をなされた。
「あー、〝大公の館ではなく、ダイワ王城に〟ということですよね?」
このように伺った僕に、姉上が〝ええ〟と頷かれる。
「となれば。」
「チキュウビストロ関連店に渡してある“銀製の札”を、新たに作らせる必要がございますな。」
「儂らの所ではなく、ここへ赴くよう、案内する物を。」
“ルシム大公”が確認したところ、
「そうしてちょうだい。」
「代金は支払うから。」
「あとは、例の件だけど……。」
「鍛錬が終わってから聞かせてもらうわ。」
「広間でお茶しながらでも。」
そう告げられた姉上が、
「陛下は、国の名称、早めにしてくださいね。」
「明後日には“調印式”がございますので。」
僕に念を押してこられた。
何の事かと言うと、竜人の[ドゥユール王国]との“正式な同盟”についてだ。
「いや、急な話しなので、正直、難しいんですが…。」
困惑する僕に、
「元日本人に〝ピン!〟ときやすいのが良いでしょうね。」
「後程一緒に考えても構いませんよ。」
「ま、あくまで、決めるのはラルーシファ君ですけどね。」
先生が優しく声をかけてくださる。
こうした心遣いを受け取り、
「非常に助かります。」
頭を下げて感謝する僕だった……。
▽
ラバスには、鞍に鐙と一体化している[鎧]のみ装備してもらっている。
それに跨った僕は“空中戦の稽古”に励む。
ヴァイアとアンヌに相手してもらって。
僕もラバスも初めて経験するため、あまり息が合わない。
ラバスにしてみれば、ただ単に僕を乗せて宙に浮いていればいいわけではなく、攻守ともに動き回らないといけないので。
僕は、途中で何度となく〝落ちやしないか〟とハラハラして怖かったりもしたけれど、なんだかんだで割と楽しかった…。
地上にて。
羨ましがる妹に、
「エル。」
「ラバスはラル君の従魔なのだから、我慢なさい。」
「私のようにね!!」
姉上が〝ぐぬぬぬぬぅ~ッ!〟と耐えてみせてあげられる。
この光景に誰もが思わず笑いそうになった―。




