第185話 ターニングポイント⑥
「ラグール叔父上の仰る通りだわ。」
「東方領……、なかでも“ラノワマ元宰相”を警戒しておいたがいいでしょうから、迂闊に王城を離れないのが賢明よ。」
こうした“リーシア姉上”の補足もあって、
「分かりました。」
「そのようにします。」
僕は了承する。
軽く〝うむ〟と頷いて、
「では、我らはそろそろ野営地に戻るとしよう。」
「あまり長居し過ぎるわけにはいかんからな。」
そう言いつつも、
「だが。」
「その前に…。」
「陛下は“神法”と“ムラクモ”を扱えるとのこと。」
「……、見せてもらえんか?!」
瞳を輝かせる“ラグール叔父上”だった。
やや離れた所では、叔父上の家臣である三人組も興味津々になっている。
〝どうしたものか??〟と姉上に視線を送ったところ、察してくださったらしく、
「構わないと思うわよ。」
「寧ろ、それが正解だったりするかも。」
このように述べられた。
いささか意味を理解できない僕は〝ん?〟となったものの、
「それでは、外に出ましょうか。」
そう提案した事で、誰もが起立する…。
▽
待機していた“各お世話係”も一緒に、もともと僕が使っていた[鍛錬場]に赴く。
この道中、話しを知った“家令のハウラー・ダント”に“給仕の男女1名ずつ”が付いてきた。
あと、数人の城兵も……。
そうして辿り着いた一角で、
「神法は攻撃系のみ中級まで備えていますけど、割と威力があるので、披露するのは初級にさせてください。」
叔父上に告げた僕は、5Mほど離れた位置に在る[木製人形]へと、“右の掌”を突き出す。
ここから、【神法陣】を構築して、
「アース・バレット。」
25個の【土の弾丸】を放った。
そうした光景に、叔父上たちが〝おぉ~〟と感動する。
この流れで、僕は[アイテムボックス]を開く。
そこから[ムラクモ]を取り出したところ、
「ボクがお持ちします。」
“ハーフエルフのリィバ”が声をかけてきた。
叔父上が、
「確かに。」
「“神剣”に間違いない。」
こう認めるなか、僕は、横にしたムラクモを、リィバの両手に置く。
そして、僕が剣を鞘から抜くなり、〝おおッ!!〟と叔父上達がザワついた。
左右の手で〝ギュッ〟と柄を握り、剣先を斜め上に向けた僕は、【神力】を注ぎ込む。
これによって、剣身が“金色の光り”を帯びだす。
そこから、[閃光貫]を空に撃ったところ、初見のヒトたちが〝ぅお――――ッ!!!!〟と興奮する。
ちなみに、僕は後方に〝ズザザァ―ッ〟と下がった。
閃光貫の反動で…。
剣先を地面に着け、息を〝ふぅー〟と吐いた僕へと、
「ラルーシファ陛下に、心よりの忠誠を、お誓いします。」
叔父上が改めて跪き、家臣の三名が急ぎ倣う。
「え??」
「あー、うん?」
少なからず戸惑う僕の耳元で、
「王姉が予想されたとおり、効果があったようですね。」
「ラグール公達は王に対して完全に敬服したみたいですよ。」
リィバが教えてくれる。
これによって、
(成程、姉上にはそういう狙いがあったのか。)
納得する僕だった……。
▽
叔父上がたに立ってもらったところで、いつもは冷静な“家令のダント”が、
「陛下!」
「我々は、閃光が飛んだあたりの住民などに説明してまいります!!」
「突然のことに驚き、不安に駆られている人もいるでしょうから!」
テンション上がりまくりで伝えてくる。
彼の背後に控える給仕たちも嬉々としながら〝うん!! うん!!〟と首を縦に振った。
僕が少し引き気味になりつつ、
「じゃぁ、よろしく。」
そのように頼むと、
「かしこまりましたーッ♪」
ダントはもとより、給仕達も、喜び勇んで[城門]へと早歩きしだす。
さておき…。
叔父上に促された“家臣の女性魔術士”が【テレポート】の詠唱を始める。
こうした最中、穏やかに微笑みながら、
「皆に良い語り草《ぐさ》ができました。」
「いずれ落ち着いてから、兄上がたの墓参りをさせていただきます。」
「では、これにて失礼をば。」
お辞儀する叔父上だった……。
▽
数時間後の城内にて。
“兵士/魔術師/料理人/給仕”などは、僕が視界に入った途端、〝ビシッ〟と背筋を伸ばしたり、今までよりも深々と頭を下げるようになった。
姉上によれば、
「ラル君がムラクモの“閃光”を発した件が広まったみたいね。」
との話しだ。
それから、何日か経った[王都]では、僕の事を〝初代ラダーム様の生まれ変わり〟とも〝英雄王の再来〟とも呼ぶようになったらしい。
つまり、意図せずして僕の支持率がアップしたのだった―。




