第184話 親和①
“リーシア姉上”が、
「父上は、最期まで、私達の事を想ってくださっていたのね。」
嬉しくも寂しそうに呟かれた。
それによって場が沈黙に包まれる。
この空気を変えようと、
「叔父う…、あ、いや。」
「ラグール卿は、〝こちらの味方〟ということで、間違いないか??」
僕が質問してみたところ、
「ええ。」
「我が命を賭して、陛下の盾にも剣にもなりましょうぞ。」
「亡き兄上のためにも。」
そう誓ってくれた。
これを受け、
「じゃぁ、ここからは形式ばらずに語らっていきましょう。」
「親族として。」
そのように宣言した姉上が、
「私たちと、叔父上に……、ルシム大公とルファザ侯爵は、“第一客間”に移りましょう。」
「ラバスも、ね。」
「それ以外のヒト達は“広間”で寛いでいいわ。」
「お茶にしましょう。」
こう提案なさる。
すると、
「お待ちください。」
「我々を客間にお供させていただきとうございます。」
叔父上の配下である“男性兵士”が願い出た。
「あー。」
「ま、警戒して当然よね。」
そう姉上が納得されたタイミングで、
「ボクもいいですか?」
“ハーフエルフのリィバ”が〝ニコニコ〟しながら尋ねてくる。
姉上の視線を感じた僕は、
(リィバは叔父上と旧知の仲らしいから、一緒に居てもらえると心強いかも。)
このように考え、
「どちらの同席も許可する。」
そう決断した。
“叔父上の家臣たち”と“リィバ”が「ありがとうございます」と頭を下げたところ、
「では。」
姉上が玉座の左に位置する[扉]に向かって〝パン パン〟と手を叩かれる。
ドアを開けて姿を見せたのは“黒猫の獣人 ユーン”だ。
「話しは聞こえていたかしら??」
伺われた姉上に、
「はい。」
「すぐに手配します。」
こう答えて、
「一旦、失礼いたします。」
お辞儀したユーンが、扉を閉める。
「それじゃ、ここは解散にしましょ。」
姉上が告げられた事で、誰からともなく雑談が始まった。
そうしたなか、叔父上に近づいたリィバが、
「久しぶりですねぇ。」
「お元気そうで何よりです。」
懐かしげに声をかける。
「あぁ、お前もな。」
「ただ…、少し老けたか?」
眉を段違いにした叔父上に、
「そりゃ、年は取りますよ。」
「不老じゃないんですから。」
「そんな貴方こそ、すっかり中年になりましたね。」
リィバが指摘した。
これに“叔父上の配下達”が〝ムッ〟と不愉快になるも、
「確かにな。」
本人は〝ふははははッ〟と笑う。
「ちなみに、さっきのは悪口とかではありませんよ。」
「父君に似てこられましたし、風格を備えられましたね。」
そのようにリィバが補足したことで、
「ん??」
「そうか?」
首を傾げた叔父上ではあったものの、
「……、ふむ。」
軽く頷いて、
「そうであるか。」
穏やかに目を細めた…。
▽
[第一客間]に幾つかの[ローテーブル&ソファー]が在る。
“僕/姉上/妹”の対面に叔父上が腰掛けていた。
側では“マンティコアのラバス”が床に伏せている。
この近くの[別テーブル]を囲んでいるのは“大公/侯爵/リィバ”だ。
ちょっと離れた所では“叔父上の家臣たちグループ”が座っていた。
そうしたなか、
「うぅ~むッ!」
「ドーナツとやらもコーヒーとやらも実に美味いな!!」
叔父上が感心する。
“配下の人々”は至福に包まれているみたいだ。
「他にも新しい料理や調味料がいろいろあって、国内で販売していく予定ですのよ。」
こうお知らせになられた姉上に、
「ほぉう。」
「楽しみだな!」
叔父上が瞳を光らせる☆
「ところで、ラグール公。」
「これからは、どうなさるおつもりですか??」
ふとした疑問をリィバが投げかけたら、真剣な表情となった叔父上が、
「おそらく自分の居城に逃げ込んだであろうライニルを討つべく、北上する。」
そのように返す。
「僕らも赴くべきですよね?」
「ある程度の軍勢を率いるなりして。」
なんとなく訊ねてみると、
「……、いや。」
「追い詰められた愚弟が、それなりの兵数で、この王城に瞬間移動してくるかもしれん。」
「あのバカに、不在を狙われて、城と都を簡単に渡してやる必要はあるまい。」
「なので、陛下がたは守りを優先するのが一番よかろう。」
こう述べる叔父上だった―。




