第182話 談論④
お昼寝から起きた“妹のエルーザ”が、入室してきた。
自身の“お世話係5名”や、“マンティコアのラバス”と、一緒に。
取り急ぎ準備された椅子に妹が座り、ラバスは床に伏せる。
そこから評定が再開された。
まずは[新王都]についての意見交換がなされてゆく。
〝どれくらいの規模にするのか〟や〝候補地は何処か〟などだ。
“リーシア姉上”は[現在の都]とあまり変わらない広さを考えておられるらしい。
また、双方の距離はなるべく近いほうが良いそうだ。
このため、範囲が絞りやすくなった。
一方で、[建設大臣]になる予定の男性ドワーフ“フィオ・ディベリ”が、少なからず不安になっている。
そこまで大がかりなものに携わった事がないからだ。
「トラヴォグ公爵達が協力してくださるんでしたよね?」
こう尋ねてきた本人に、
「うん、そうだけれど…。」
「明後日、この王城で行なう合同鍛錬に先生も参加なさるから、確認してみるよ。」
そのように僕が述べたところ、
「ありがとうございます!」
嬉しそうに頭を下げるフィオだった。
ここから、他のことについても話し合っていく……。
▽
暫くして、解散する運びになったところで、扉がノックされる。
ドアを開け、
「失礼します。」
会釈した“20代前半らしき男性城兵”が、
「ラグール公爵閣下がお越しです。」
そう伝えてきた。
「叔父上が??」
「もしかして瞬間移動で来たのかしら?」
「人数は??」
姉上に矢継ぎ早に質問され、
「え?」
「あ、はい。」
「瞬間移動でした。」
「お連れの護衛は、三名です。」
「公爵閣下御一同には玄関でお待ちいただいております。」
若干あたふした感じで兵士が答える。
こうしてもたらされた情報を、
「争うつもりはなさそうね。」
「一戦交える気であれば幾千万を率いて乗り込んできたでしょうから。」
姉上が独り言かのようにして分析なされた。
「では、客間に「ダメよ。」
城兵に指示を出そうとした僕を遮られた姉上が、
「謁見は“玉座の間”にしないと。」
「ラグール叔父上が私たちの味方だとはまだ決まったわけではないのだから。」
「陛下は〝子供だから〟といって舐められないようにしておかないと、ゆくゆく掌で転がされかねないわよ。」
「ま、それは私もだけど…。」
「要は、〝相手の思惑や出方が分からないうちは威厳を保ちましょう〟という事よ。」
そのように注意なさる。
ちょっとだけ〝んー〟と考え込んだ“ハーフエルフのリィバ”が、
「あの御仁であれば、そこまで警戒しなくても大丈夫でしょうけれど、でも、まぁ、リーシア王姉の主張は一理あるかと。」
「ラグール公達は、ラルーシファ王が“神法”や“ムラクモの閃光”を使うところを目の当たりにしてはいませんからね。」
「となると、王のことを心から敬ってはいないでしょう。」
「なので、毅然とした態度で臨み、感服させるのがよろしいかと。」
こう述べた。
「成程、分かった。」
「そのようにしよう。」
受け入れた僕が、
「という訳だから、叔父上たちを“玉座の間”に案内して。」
「場所は御存知だろうけど、丁重に。」
そのように声をかけた事で、
「はッ!!」
「かしこりました!」
佇んでいた兵が足早に去ってゆく。
こうしたなか、
「それじゃぁ、陛下と私にエルーザは、着替えましょう。」
「王族らしい身なりに、ね。」
「10分もあれば整え終わるでしょうから、ルシム大公とルファザ侯爵に、大臣や副大臣になる予定のヒト達は、それに合わせて“玉座の間”に赴いてちょうだい。」
そう告げられる姉上だった―。




