第180話 談論③
翌日。
PM14:00になろうとしている。
“リーシア姉上”の呼びかけで、評定を行なうため、主だったヒト達が[会議室]に集まった。
“妹のエルーザ”は、[姉上の部屋]で昼寝している。
本人の“お世話係たち”や、“マンティコアのラバス”が、一緒にいてくれているみたいだ。
ちなみに、エルーザは、毎夜、姉上と同じベッドで眠るようになっていた。
ま、それはおいといて。
「新たな大臣を決めていきたいの。」
「ラルーシファ陛下と私で話し合ってはきたのだけど、皆の意見を聞いてから確定したがいいと思って足を運んでもらった次第よ。」
こう姉上がお伝えになられる。
なお、室内には“ルシム大公/ルファザ侯爵/僕の教育係&お世話係/姉上のお世話係/妹の教育係”が揃っていた。
ちなみに、お世話係だけは全員が立っている状態だ。
大公や侯爵を連れて来るために【テレポート】してきた各魔術士は、[客間]でくつろいでもらっている。
そうしたなか、
「まずは、ルシム大公。」
「貴方に“宰相”を任せたいのだけれど、引き受けてもらえるかしら??」
姉上がお尋ねになられた。
「ん?」
「儂ですか??」
「ルファザ殿ではなく?」
首を傾げた大公に、
「それも考えたんだけど、陛下の祖父がその地位に就くと、なかには反発する王侯貴族が出てきかねないので、避けておくのが無難との結論に至ったの。」
こう述べられた姉上が、
「ただし、侯爵には“総務大臣”になってもらうわ。」
「それと、ゆくゆくは、この都を治めてもらいたいの。」
全員に告げられる。
それによって、
「は??」
侯爵が目を丸くした。
「私達の構想では別の場所に遷都する予定なの。」
「そうなると、こちらを統括する人がいなくなるでしょ。」
「だから、陛下の外戚にあたる侯爵に、委ねたいのよ。」
「それについて文句を言う者がいれば、陛下が容赦しないから安心してちょうだい。」
「ね?」
僕に微笑まれる姉上に〝え??〟と困惑しつつ、
「あ、はい。」
「勿論です。」
こう答える。
「ですが、そうなると…。」
厳しめな顔つきになった侯爵を、
「何も〝今すぐに〟という訳ではないのだから、今後すり合わせていきましょう。」
姉上が穏やかに説得なされた。
軽く息を吐いて、
「一旦、持ち帰らせてください。」
そのように願い出た侯爵に、
「ええ、いいわよ。」
姉上が許可なされる。
こうしたところで、
「やはり儂が宰相というのは如何なものでしょうか?」
「生まれも育ちも“タケハヤ島”なので、ダイワ王国にとっては余所者でしかないため、不快感を露わにする人々も少なくないかと。」
大公が率直な意見を口にした。
「まぁ、そういう者もいるでしょうね、当然。」
「けれど、貴方も“イズモ王家”の血筋なんだし、陛下を匿ったりとか、いろいろと貢献してくれたわ。」
「宰相就任についても、何かあったら、陛下が懲らしめてくださるわよ。」
「ね??」
再び姉上の視線を浴びた僕は、
「……、約束します。」
そう応える。
嬉しそうに〝うん〟と頷かれた姉上は、
「それに。」
「〝アシャーリーの料理〟や〝セゾーヌの調味料〟に関する知識と技術が欲しいのよ。」
「国の経済発展を促すためにも。」
「できれば、まとめて移住してもらいたいの。」
「あと、カトリーヌの所にも話しをするつもりでいるわ。」
このように大公に語られた。
「ふむ、成程。」
「それが狙いでしたか。」
〝フッ〟と笑みを浮かべた大公が、
「一度、家族で相談させていただきたい。」
「場合によっては、大公の座を長男に譲る運びになるでしょうから。」
「なので、返事は後日でよろしいですかな?」
そう質問してくる。
これに、
「ええ、構わなくってよ。」
優しく返される姉上だった―。




